どこからかふわっと金木犀が香り、木々が少しずつ色づき始める秋の日。
尾道中心街から1駅分離れた東尾道エリアで2022年の秋、とあるイベントが開催されました。
その名も「おのみちEAST BEER FESTA 2022 -あづみの森収穫祭-」。
中国・四国地方のブルワリーが集結し、フードや音楽とともに地域を盛り上げた2日間。
クラフトビール好きはもちろん、子どもから大人まで笑顔であふれたビールイベントのようすをレポートします。
記載されている内容は、2022年11月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
「おのみちEAST BEER FESTA 2022」とは
「おのみちEAST BEER FESTA 2022」は、尾道のブルワリー・ビアバーを中心に、中国・四国地方で愛される6店舗のブルワリーが「尾道東公園」に大集結したビールイベントです。
おのみちEAST BEER FESTA実行委員会によると、2日間の来場者数はおよそ4,000人。
尾道を中心とした備後地方にある人気飲食店10店舗も出店し、生演奏や阿波おどり、ダンスの発表などの催し物がイベントを大いに盛り上げました。
先駆けとなる尾道のビールイベント「おのみちBEERフェスタ」が産声を上げたのは、さかのぼること2014年。
商店街にあるビールバー「Beer Bar a clue」が旗振り役となり、毎年秋になると開催されてきました。
そして時は流れ、その後尾道には2つの醸造所(2020年「尾道あづみ麦酒醸造所」、2021年「尾道ブルワリー」)が誕生します。
尾道のビール業界がこれからますます熱くなる!と期待が高まるかたわら、2020年からは新型コロナウイルス感染症の流行が同じタイミングで猛威をふるい、地域イベントや祭りは中止を余儀なくされてきました。
そして、イベント開催制限などの緩和がやっと発表された2022年。
「今年こそは地域の人と関わり合えるあたたかいイベントを」という趣旨のもと「Beer Bar a clue」「尾道あづみ麦酒醸造所」「尾道ブルワリー」の3社が団結。
「尾道あづみ麦酒醸造所」の母体である「社会福祉法人あづみの森」を主催として、「障がい者サポートセンターあおぎり」の施設がある東尾道での開催が決まりました。
- 尾道あづみ麦酒醸造所(広島・尾道)
- 尾道ブルワリー(広島・尾道)
- 松江ビアへるん(島根・松江)
- 大山Gビール(鳥取・西伯)
- 梅錦ビール(愛媛・四国中央)
- Beer Bar a clue(広島・尾道)
これまで開催されてきた尾道のビアフェスタの常連ブルワリーに加え、新たに尾道のブルワリー2社が初参加するという布陣になりました。
- ARISARISA(15日のみ)
- 中華小皿 うーろん
- 大胡商店(16日のみ)
- COWCOWステーキ
- カラーズマート
- Tea Room リオ
- 天咲
- FLOW CHANNEL QQQ
- HOK STAND
- お菓子工房あづみ(Coco by 久遠)
フードは尾道・東尾道の店舗が中心で、備後地方の店舗が駆け付けました。
イベント初出店の新規店舗が多かったのも、当イベントの特徴です。
尾道のクラフトビール界を牽引する3店舗
おのみちEAST BEER FESTA 2022には、どんなブルワリーが参加したのでしょうか。
まずは尾道を代表する3店舗を紹介します。
尾道あづみ麦酒醸造所
「尾道あづみ麦酒醸造所」(以下あづみ麦酒)は「障がい者サポートセンターあおぎり」に併設されたブルワリーで、施設利用者の就労支援の一環としてビール造りに取り組んでいます。
尾道産の副原料にこだわると同時に、自分たちでホップ栽培に着手するなどできることの幅をどんどん増やし、1本1本ていねいにビールを醸(かも)しています。
尾道ブルワリー
2021年、尾道本通り商店街にオープンしたクラフトビール醸造所「尾道ブルワリー」。
尾道で栽培される四季折々さまざまな食材を使ったビール造りが特徴で、ビールが苦手な人でもおいしいと感じるような、ついついおかわりしたくなるような喉越しと飲みやすさが人気です。
Beer Bar a clue
尾道本通り商店街に元気を振りまいているビールバー「Beer Bar a clue」。
ビールのノウハウやうんちくうんぬんを語り合うのもいいけれど、「誰もがもっと自由にビールを楽しんでほしい」というのがマスターである林稔(はやし みのる)さんの想いです。
鳥取・島根・愛媛から駆け付けた人気クラフトビール3店舗
やまなみ街道やしまなみ海道を越えて尾道に集結してくれた、鳥取・島根・愛媛の人気ブルワリー3店舗を紹介します。
大山Gビール
地元農家と協働しながら、鳥取・大山の個性を大切に造られている「大山Gビール」。
大山で湧き出た天然の伏流水がビールのうまみを支えます。
松江ビアへるん
やまなみ街道の向こうから参加の島根ビール・「松江ビアへるん」は、真心と想いの詰まった各種ビールを醸し、島根の食や文化を発信し続けています。
梅錦ビール
しまなみ海道の向こう、愛媛県から参加の「梅錦ビール」は、中四国地方の地ビールの先駆け的存在。
仕込み水へのこだわりなど、酒蔵ならではの強みを活かしたビール造りが特徴です。
充実!備後地方の人気フード店が出店し、ビールがすすむメニューを提供
フード・ドリンクは2日合わせて全10店舗が出店しました。
東尾道に店舗を構える「COWCOWステーキ」では、牛串ステーキ(600円)やからあげ(400円)を販売。
鉄板でステーキの焼かれる音や良い香りに惹かれ、多くの人が足を止めていましたよ。
筆者は「中華小皿 うーろん」で麻婆春雨春巻(1本200円)、うーろん特製メンマ・チャーシュー盛り合わせ(500円)、鶏チャーシュー・メンマ盛り合わせ(500円、16日限定)をゲットし、舌鼓。
とくにおいしかったのは春巻です!
外の衣はさっくさく、餡(あん)には春雨やたけのこなど盛りだくさんの具材が詰まっていて味に深みがあり、しっかりとシビ辛。
ビールと相性抜群の、忘れられないメニューでした。
ノンアルコールドリンクも充実し、子どもから大人まで乾杯!
ビールのイベントといえど、ビール好きだけでなくレモネード、レモンスカッシュ、ジンジャーエールほか、各種ソフトドリンクも充実。
小さい子どもからハンドルキーパー、アルコールが苦手な人でも、互いに気兼ねすることなく乾杯を楽しむことができました。
向島や瀬戸田など尾道産のレモンを使用した、クラフトレモネード専門店「HOK STAND」。
ビアフェスタは両日とも気温25度以上の秋晴れに恵まれたこともあり、すっきりと甘酸っぱいレモネードには人気が集まりました。
「HOK STAND」マスターの櫻武千彰(さくらぶ ちあき、写真左)さんは、当イベントの告知物全般に関してデザインを総合的に担当。
青空とビールが映えるポスター・チラシで来場客や出店者の期待感をめいっぱい高めてくれました。
地元大学のゼミ生によるミニゲームコーナーで、子どもも飽きずに楽しめる仕組み作り
会場には、尾道市立大学の小川ゼミ生による的あてゲームコーナーも。
的あてゲームコーナーのそばには飲食エリアのテントが設置され、親子や友達家族同士で飲み食いを楽しめる、賑やかなエリアになりました。
イベントの楽しみ方は十人十色
感染拡大防止の観点から、規模は縮小せざるを得なかった「おのみちEAST BEER FESTA 2022」。
それでも各日、阿波おどりやピアノ演奏、サッカーのリフティング講座などさまざまな催し物が開催されました。
ここでは、一部ですが筆者がイベントを見て回ってきたようすを紹介します。
広島市の「ビール伝道師」がビアフェスタ参加という大ニュース
ビアフェスタまであと数日に迫ったある日、「ビールスタンド重富」のマスター・重富寛(しげとみ ゆたか)さんがビアフェスタに駆けつけるという大ニュースが飛び込みました。
「ビールスタンド重富」といえば、60年前のビールサーバー・スイングカランを扱う広島市の名店です。
「注ぎ」によってビールの味を引き立てることで「ビールってこんなにおいしかったのか…!」と気付かせてくれるビール伝道師の参加決定に、ビアフェスタの公式Instagramの投稿にはたくさんのいいねが集まりました。
重富さんは16日(日)のみ、あづみ麦酒と尾道ブルワリーのブースで見事な注ぎを披露。
ビールファンを魅了しました。
クラフトビールの飲み比べを楽しむ人も
香り、味、酸味、炭酸の強弱、副原料の存在感などクラフトビールにはさまざまな楽しみ方がありますが、飲み比べも楽しみのひとつ。
一般的にビールは、色が濃くなるほど味や苦味が強くなるといわれているそうです。
味やスタイルの異なるラインナップを提供していた各ブルワリー。
同じ醸造家のビールを飲み比べたいという人や、ブルワリーをはしごして買い求める人の姿も見られました。
ギター×歌のアコースティック生ライブで心地よいチルタイム
公園内には一部イベントステージが設けられ、多くの人がビールやドリンク片手にステージを楽しんでいるようすも印象的でした。
アコースティックデュオのIan&CocoはBeer Bar a clueの常連客で、店頭やイベントなどでたびたび音楽を披露している2人組。
おのみちEAST BEER FESTA 2022では秋空のもと、のび渡る美声とやさしく響くアコースティックギターによる生演奏で、来場客に心地よいチルタイムを届けていました。
ビール・フードとも完売が相次ぐ
イベント両日とも晴天だったおのみちEAST BEER FESTA 2022。
天気が味方したこともあってか想定以上の客足に恵まれ、クラフトビールもフードも売り切れが続出しました。
それだけ期待度の高かったイベントだったことがうかがえますが、「販売数や客足の見通しは今後の課題ですね」と、実行委員でBeer Bar a clueのマスター・林さんは振り返ります。
イベントをかげから支えたボランティアスタッフ
当日のイベント運営では、有志のボランティアスタッフが大活躍。
地元尾道のビール好きはもちろん、これまでのおのみちビアフェスタにも参加していたボランティアスタッフなどが集まりました。
なかには大阪など遠方からの参加者も!
各エリアにスタッフが配置され、検温チェックやインフォメーション対応、ブルワリー補助、ゴミ拾いなどを実施。
縁の下の力持ちとして、イベントを強く支えていたのです。
ブースの売り切れ情報や来場客からの質問、落とし物の情報などは、随時「LINE」のグループチャットで共有されたことにより、リアルタイムにスピーディな対応を実現していました。
“東尾道での開催”に込められた想い
「尾道中心街ではなくあえて東尾道での開催だったこともあり、当初はどれくらい集客できるのかが未知数でした」と話すのは、あづみ麦酒の醸造長・田上誠(たがみ まこと)さん。
「障がい者サポートセンターあおぎり」が東尾道に移転した2020年は、コロナ禍の始まりとともに一歩先の状況すら見えないような時期でした。
あづみ麦酒の醸造は、作業工程が比較的多いビール造りが就業支援の新たな光になることを目指してスタートしましたが、地元の人々と交流するイベントの開催や機会になかなか恵まれない期間が続いたといいます。
「しかし今回のイベントでは延べ4,000人という多くのかたがたにお越しいただき、ようやく施設と地域の交流が実現しました。今回限りではなく毎年楽しみにしていただけるよう、地域のかたがたとの交流は今後も継続していきたいと思っています」
おのみちEAST BEER FESTA 2022の開催にあたり、準備や企画に奔走した田上さん。イベントへの思い入れも一入(ひとしお)だったと思います。
おわりに
地域催事やお祭りの開催中止が余儀なくされ、街が静けさと寂しさに包まれてしまった近年。
外出や旅行の自粛、これまで当たり前だった趣味や娯楽をめいっぱい楽しむことができない閉塞感を、いつも心の片隅に感じていた気がします。
そんな時勢も相まって、このビアフェスタの開催は地元の人たちにとっても待望のイベントだったのではないかと強く感じました。
ビアフェスタから帰宅して撮った写真を見返してみると、そこに写っていたのは笑い声が聞こえてきそうなほどのたくさんの笑顔。
「乾杯!」とかかげる黄金色のビールが青々とした秋空を彩り、たくさんの笑顔が醸造された地域イベントとなりました。
次の年もその次の年も、この笑顔の連鎖が続きますように。
おのみちEAST BEER FESTA 2022のデータ
名前 | おのみちEAST BEER FESTA 2022 |
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期日 | 2022年10月15日(土)~10月16日(日) 午前11時〜午後6時 |
場所 | 尾道東公園(尾道市高須町4825) |
参加費用(税込) | |
ホームページ | おのみちEAST BEER FESTA 2022【公式】 |