近年、福山駅周辺のいたる所で起きている変化に、多くのかたが気づいているかと思います。
その変化によって、駅周辺市街の歩き方、動線が変わったというかたもいるはずです。
令和4年3月18日の午後4時30分より、第3回福山駅前広場デザインシンポジウムが開催。
福山駅前広場の再整備に新たな方向性が示されたシンポジウムに参加して、公民連携の地域リノベーションの話題を共有することが多方面で必要だと思いました。
この記事では、第3回福山駅前広場デザインシンポジウムの内容を伝えます。
記載されている内容は、2022年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
福山駅前広場デザインシンポジウムとは?
▼会場は、福山市霞町にあるまなびの館ローズコムの中会議室。
公園や広場、通り、歩道に面した建物の低層階を一体の空間と考え、居心地がよく、自然に歩きたくなるような、人を中心にデザインされた空間はウォーカブルといえます。
ウォーカブルとは、「歩く(walk)」と「できる(able)」を組み合わせた造語で、歩きやすい・歩きたくなるという意味です。
都市の顔として変遷を重ねてきた福山駅前広場もまた、ウォーカブルな空間に変わることが求められ、それが実現すれば、市民一人ひとりが一層の愛着や誇りを持てる福山市の広場になるでしょう。
福山駅周辺を人や企業を惹き付ける魅力のあるエリアに変えるためには、経済の好循環を生み出すハブ機能を備えたウォーカブルな空間が必要となります。
そして駅前広場はその核となるための、交通結節機能と都市の広場機能の融合が求められます。
そうした現代、さらに未来にふさわしい駅前広場の実現に向けて、デザインシンポジウムでは、有識者のレクチャーや市民から募った意見や質問をもとに、ファシリテーター(進行役)とパネリストが議論を繰り広げる場なのです。
▼開催日の3月18日は雨でしたが、ウェブ中継では100名以上のかたが参加しました。
各機能の配置計画案とイメージイラストの公開
第3回福山駅前広場デザインシンポジウムでは、テーマを「未来の福山駅前広場を大公開!」とうたうように、福山駅前広場の各機能の配置計画案とイメージイラストが披露されました。
しかし、これらはあくまでも素案であって、最終決定案ではありません。
さらに広く意見を聞き取るためのもので、今後あらゆる意見を反映しながら修正を加え、令和4年度末には基本方針が策定される予定です。
▼今後の予定
年度 | 内容 |
---|---|
令和4年度(2022年度) | 基本方針の策定 |
令和5年度(2023年度) | 基本計画の策定 |
令和6年度(2024年度) | 都市計画の変更(必要に応じて) |
令和7年度以降(2025年度以降) | 調査、設計、施工 |
素案は、交通結節機能や都市の広場機能、つまり駅前広場に必要とされる機能の配置計画をイメージ共有するために作成されたもの。
配置計画案やイメージイラストを叩き台にすれば、私たちが想い描く広場の姿が、実際の状況とかけ離れたものにならないというわけです。
過去の意見にみる駅前広場に求められるもの
これまで、さまざまな駅前広場に関する議論を通じて、多くの意見が集まっています。
その一例を以下に挙げました。
- いろいろなことに使えるマルチな広場空間とする
- 駅の南北を一体的につなげる など
- 東西の歩行者動線の分断を解消する
- 福山駅との結節を増やし交通結節機能を分散する
- 駅前大通りの車線を減らし、駅前広場南側の交差点をコンパクトにする など
- 座ってのんびり過ごせるスペースが欲しい
- 大きな駐車場やわかりやすい道路計画が必要 など
▼今回のシンポジウムの資料映像から、福山駅前の開放空間での、飲食や買い物を望む声の多さは歴然としています。
駅前広場の素案作成で重視された考え方
駅前広場の素案作成は、以下のような考え方に基づいています。
- 環境空間は、さまざまな使い方ができるようになるべく広く確保する
- 環境空間は、次の効果を見込んで東西に分散配置する
- 交通空間の規模は、現状の交通施設を同程度確保する
- 交通結節機能は、駅前広場の内外に分散する
- 誰もが利用しやすい平面式の駅前広場が望ましい
- 福山城の外堀遺構ほか、歴史資源は慎重に保存・活用を検討する
▼当初の想定にない目的での利活用や時代の要請に対し、フレキシブルな対応を可能とする広さを確保しておく必要があるようです。
各機能の配置計画案とイメージイラストがこれ!
福山駅前広場の各機能の配置計画案は、次の効果を期待して作成されました。
東西に長いJR福山駅の特性を生かしつつ、駅の南北の広場を一体的に検討することで、相乗的に交通結節機能を発揮させる
駅の南北を貫く交流軸の創出により、一体的に歴史や自然あふれる備後圏域の玄関口にふさわしいウォーカブルな空間に転換する
イメージイラストは、それぞれ次の効果を期待して作成されました。
イメージイラスト(A)では、まちの拠点性や魅力が向上し、さまざまな活動が可能となります。
イメージイラスト(B)では、新幹線とタクシーの乗り継ぎ利便性や、駅周辺のエリアをつなぐ機能の向上をはかることで、周辺の商業施設との連携が強化され、交差点内の複雑な交通の解消も期待されます。
素案作成でみえてきた駅前広場の課題
素案を作成することによって、今後検討を要すべき事項も明確になりました。
以下が検討事項です。
- 北口広場との南北の役割分担
- 広場空間の管理・運営方法
- 西送迎場と国道2号の間のアクセス性改善
- 三之丸町内のアクセス性の改善
- 伏見町への車両のアクセス方法
- 遺構の保存・活用の方法
- 地下送迎場へのアクセス方法
- バスやタクシーの走行ルートや旋回場所・待機場所
駅前広場の素案が市民に投げかける未来像
福山市では、この度公開した素案に、市民が個々のライフスタイルを重ねるなかで生まれた要望や疑問など、駅前広場に対する意見を引き続き募集しています。
駅前広場だけではなく、駅前と駅周辺をつなぎ、駅周辺域を一体とするような広い視点で、公共施設・民間施設を分け隔てなく時代の変化を見据えながら、考えることが肝心だそうです。
従来の交通インフラ機能だけに縛られない、福山城郭、その城下町といった、いわば初代城主・水野勝成の革新的な視点が求められているのかもしれません。
今回のパネルディスカッションでは、さまざまな意見が寄せられ、現況に対する実感的な考えや、未来の広場に福山の風土・行事を反映させたような提案もありました。
ウォーカブルの気運を盛り上げる歩道が完成
2022年2月、福山駅周辺がウォーカブルに変わる波及効果を呼びそうな空間が「アイネスふくやま」前にオープンしたばかり。
公募により選ばれた machoru(まちょーる)という名称を冠した、国産総ヒノキ製ウッドデッキが設置された歩道エリアです。
備後弁で、待っているを意味するネーミングにならえば、待ち合わせ場所に最適ですが、多目的な利用も可能。
周辺一帯を象徴するピラミッド状の階段は、頂上まで登ると福山城が望める憩いスペース。
キッチンカーが駐車可能の飲食ゾーン、パフォーマンス・ステージとなるスペースもあり、駅前のにぎわい創出の起点となりそうな「街寄る」効果に関心が向けられています。
▼ローズコム前の Enlee(エンリー)も、福山駅~中央公園周辺の活性化を促す新拠点。
第3回福山駅前広場デザインシンポジウム:まとめ
長らく停滞感をぬぐえなかった福山駅周辺が、2017年辺りから、静かに動き始めたことは、多くの人にとって驚きだったはずです。
その勢いを借りて、行政が駅前広場を短期間に変えてしまうのは実は容易で、時間をかけて行なう意見交換のプロセスこそが重要だと、福山市立大学都市経営学部教授の渡邉一成さんは強調します。
実際に、第3回福山駅前広場デザインシンポジウムは、持続可能な福山駅前広場を実現するために、福山駅周辺と人々の関わりがもたらした公共的な気づきが少しずつ蓄積されていくような会議でした。
これからも、多くの市民の参加が望まれます。
おわりに
福山市は、令和4年2月21日(月)に映画「THE BATMAN-ザ・バットマン-」の舞台ゴッサム・シティと友好都市提携を結びました。
両市の共通点はコウモリ。
福山城がある場所は、蝙蝠山(こうもりやま)と呼ばれていました。
蝙蝠の「蝠」の字は「福」に似ていて福に通じるという考えから、水野勝成が「福山」と命名したという説が有力です。
福山市の市章も福山の「山」とコウモリを組み合わせたデザインになっています。
築城400年を迎える城のまち福山市。
400年を節目として、さらに変わろうとしている福山駅周辺を散策してみるのはいかがでしょうか。
第3回福山駅前広場デザインシンポジウムのデータ
名前 | 第3回福山駅前広場デザインシンポジウム |
---|---|
期日 | 2022年3月18日 |
場所 | 福山市霞町1-10-1 |
参加費用(税込) | |
ホームページ | 福山市│第3回福山駅前広場デザインシンポジウムを開催しました |
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