令和5年2月12日、高校生たちが企画した初めての「福山生徒会サミット」が開かれました。
福山市内だけではなく、広島県内からも集まったたくさんの高校生たち。
どんなイベントにしたいのか、何度も話し合いを重ねてようやくこの日を迎えました。
一般公開された第1部と第2部はもちろん、関係者だけでおこなわれた第3部までのようすをレポートします。
記載されている内容は、2023年3月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
福山生徒会サミットとは?
町の中に高校生の居場所を作るプロジェクト「STUily(スタイリィ)」は、「自習をする場所がほしい」という高校生たちと、地域で頑張る人を応援する一般社団法人ふくやま社中とで動かしています。
どんな居場所にしたいのかを考えるなかで、高校生たちは学校の枠を飛び越えて、さまざまな意見を交わしてきました。
そうしているうちに、彼らはこのように考えるようになったのです。
- 学校ごとの取り組みや課題を共有してお互いの活動を学び合いたい
- 高校生同士の交流を増やしていきたい
- 福山の町の人や企業とのつながりを深めていきたい
この想いから企画されたのが「福山生徒会サミット」でした。
13の高校から生徒会役員が集まって意見を出し合い、さまざまな準備を進めました。
司会をする人、発表をする人、当日の動画配信をサポートする人、交流会の企画を練る人。
自分たちの高校生活をより充実させるために、それぞれの力を集めました。
大人たちも彼らを支えます。
協賛してくれた企業のかたたち、技術協力をしてくれた人たち、そして当日発表を聞きに集まってくれた学校の先生たちや保護者たちなど。
多くの人の想いをのせて「第1回福山生徒会サミット」が開催されました。
生徒会サミット当日のようす
生徒会サミットは3部構成になっていました。
- 第1部 各学校の取り組みや課題を発表する
- 第2部 高校生とゲストが語り合う
- 第3部 高校生同士の交流をはかる
これらのプログラムを通して、高校生たちが伝えたいことを知ってもらい、地域の人々と一緒に新しい未来につなげたい、との想いが詰められています。
第1部 各校プレゼンテーション 自分たちが充実した高校生活を送るために実現させたいこと
第1部では、4つの高校の生徒会がこれから実現させたいことを発表しました。
福山市教育委員会教育長の三好雅章(みよし まさあき)さんと、一般社団法人ふくやま社中代表理事の小林史明(こばやし ふみあき)さんがコメンテーターとして参加しています。
盈進(えいしん)高等学校
福山市千田町に移転して50年になる学校法人盈進学園では、 千田町の人々と一緒にゴミ拾いをしたり、「盈進感謝祭(他校の「文化祭」に相当)」を毎年開催したりして、地域の中で関係を築いています。
盈進高等学校生徒会の提案は、学校をコミュニティの拠点にしていくこと。
学校の図書館を地域の大人に開放したり、子どもたちのために本の読み聞かせをおこなったりしながら、未来につながる地域貢献をしたい、と発表しました。
開放のスケジュールや、千田町の人だけに限定しておこなうのかなどについては、今後さらに検討していきたいとのことです。
銀河学院高等学校
「L↑PEX(ライペックス)プロジェクト」は銀河学院高等学校生徒会がゼロから企画した職業体験イベントで、職業や学問について「知る・体験する」ことが目的です。
とくに高校1〜2年生が将来の進路選択を考えるうえで、広く職業や学問を詳しく知る機会が欲しいという高校生らしい想いからこの企画が生まれました。
企画を進めるうえで高校生だけでは難しい面については、専門の企業や大学の先生の協力を得ているのだとか。
第1回目は3月18日に銀河学院の生徒を対象に開催し、専門学校の関係者などから、職業についての具体的な発見をするイベントとする予定です。
しかし、今後はぜひ高校間で連携を取り合い、大きなイベントにしていきたいとのこと。
従来の生徒会活動から大きく発展した素晴らしい提案に、二人のコメンテーターも大いに興味を示し、研修やインターンなどの体験をさせてくれる企業の協力を求めて締めくくりました。
明王台高等学校
新型コロナウイルス感染症拡大対策のため、明王台高等学校ではこの3年間、生徒会活動の変化を余儀なくさせられてきました。
それぞれの高校では活動をホームページで不定期に更新するものの、とくに生徒会活動についての情報発信は少ないのが現状です。
そこで提案されたのが「生徒会連合」の結成でした。
他校と課題を共有することにより、行事の企画運営のヒントを得たり、高校生の総意として市に提案したりしたいとのこと。
SNSなどを用いて各校の生徒会執行部とかかわりを持ち、生徒会連合としての発信をめざしたい、と目を輝かせての発表に大きな拍手が送られました。
生徒会連合が実現すれば、高校生の意見を聞きたい行政や企業関係者などとのタイアップなど、さまざまな可能性が広がりそうですね。
英数学館高等学校
福山市の人口46万人のうち、外国人が1万人を占めているそうです。
英語で授業をおこなっている英数学館高等学校には、外国籍の教師や生徒もいます。
日本語が少し苦手という友達が身近にいる英数学館高等学校の生徒たちは、研修で広島市を訪れたときに、町なかや飲食店などに英語表記があふれていることに気づきました。
福山市でももっと看板に英語を増やして、誰もが住みやすい町にできないだろうか。
そう考えた彼らは、まず学校内から変えていこうと、日本語しか書かれていなかった学食のメニューに英語訳を添えました。
外国籍の教師たちに感想を聞くと、大変好評だったそうです。
- 日本語は難しいので、以前は何を買っているかわからなかった。
- ベジタリアンやヴィーガン、アレルギーを持つ人などにとって、英訳はとても重要。
- 市内の他の場所にもこの取り組みが広がると助かる。
これから一緒に町の中の英語を増やしていきませんか、と会場へ向かって呼びかけました。
第2部 パネルディスカッション 平和やSDGsについて高校生が考える「今、自分たちができること」
第2部では、G7広島サミットについて広島サミット県民会議事務局の森岡庸介(もりおか ようすけ)課長からの説明に続き、高校生と大人たちによるパネルディスカッションがおこなわれました。
G7広島サミットについて
2023年5月に広島でおこなわれるG7サミットでは、世界7か国とEUの議長や委員長が参加して、国際問題について話し合います。
サミットを迎えるために、官民一体となって結成しているのが「広島サミット県民会議」です。
各国首脳や来訪者には「広島に来て良かった」、広島の市民や県民には「広島で開催して良かった」、と思ってもらえるような取り組みを進めています。
若者たちがかかわる具体的な取り組みには、次のものなどがあります。
- 中高生対象にサミットフォーラムを開催
- 2月26日(日)俳優の綾瀬はるかさんや被爆者の田中稔子(たなか としこ)さんらが参加
- サミット塾の実施
- サミット終了後に、外務省の職員が中学校や高等学校などに行って講座を開く
- 福山市内でも大門高校や広島大学附属福山中・高校で実施予定
- ・G7広島サミットジュニア会議の開催
パネルディスカッション
続いて、平和やSDGsについてのパネルディスカッションに進みます。
▼第1部のプレゼンテーションに大きな感銘を受けたと語る、独立行政法人国際協力機構(JICA)中国センター市民参加協力課の新川美佐絵(しんかわ みさえ)さん。
▼教育や家族間の問題に関心があるという、広島大学附属福山高等学校の内海愛子(うつみ あいこ)さん。
▼教育や地域貢献に興味がある、福山葦陽(いよう)高等学校の金盛舜也(かなもり しゅんや)さん。
進行役は、一般社団法人ふくやま社中理事の高田海道(たかた かいどう)さん。
この4人がミクロとマクロの視点から、率直な意見を交わしました。
最初の話題は、内海さんと金盛さんとが興味を持っている「教育」の問題について。
「開発途上国では子どもが働いて家族を支えている。このような環境で学校を建て教育させることは正しいのか?」という金盛さんの疑問に、新川さんは次のように答えました。
- 途上国への援助として学校を建てがちだが、時間をかけて先生も養成する必要がある。
- 子どもが重要な労働力となっている地域に学校を建てても問題は解決しない。
- しかし、教育を受けた人と受けなかった人とを比べると、教育を受けたお母さんのほうが情報収集能力が高く、子どもを元気に育てられるというデータがある。教育の成果は、次の世代の人間を育てられるというところにある。
また、内海さんの「もっとさまざまな背景を持つ人とかかわれる場があるとよいのでは」との言葉に対し、新川さんと高田さんはこのように話しました。
- アレルギーや自分が守っている食生活のために、たとえばお好み焼きに豚肉が入っていることがわかるようにしていくことは大切。
- 福山市にも海外の人が1万人もいると、今日の発表にあった。今後海外の人と一緒に教育を受ける機会が増えていく。理解が必要なのでは。
続いて、G7広島サミットに関連して、 話が進んでいきます。
- 友達とはグローバルな話題を口にしにくい。「意識高い系」と見られたくない。
- 現在世界には196か国がある。そのうちの7か国が世界共通の問題や世界経済について語る会議がG7広島サミット。7〜8割は途上国であり、途上国を抜きにしたグローバルはあり得ない。サミットは対立が分断にならないようにする機会。
- 友達同士でこのような議論をして、自分の考えをまとめてみてほしい。大学入試の小論文や面接でも役立つのでは。
高校生からの「JICAの事業のなかで『格差』という観点で印象的なものは?」と「今から自分たちにできることは?」の問いには、このような返事がありました。
- 支援することで格差を広げることもある。途上国では援助しやすい分野・地域がある。
- 日本の食糧自給率は4割を切り、途上国からも食糧が入っている。スマートフォンに使われるレアメタルは内戦の続くコンゴで採られていて、レアメタルを売ったお金で武器を買う。自分と世界のつながりを考えることも重要なアクション。
- 社会的課題を解決するには、まずはいろいろな仲間と出会ってパートナーシップを作ること。強烈な原体験を元に進路を考えていってほしい。
これからのグローバル社会を牽引していくことになる高校生たちにとって、仲間を作り、世界とのつながりを考え始める、素晴らしいきっかけになったのではないでしょうか。
閉会挨拶
ふくやま社中代表理事の小林さんが挨拶に立ち、運営の学生たちを労い、参加してくれた高校生、応援してくれた社会人・学校の先生・保護者、協賛企業への感謝を伝えました。
また、次の二つに向けてこれから各校の提案を実現していこうと呼びかけています。
- 来年度(2023年度)、第2回生徒会サミットの開催
- 生徒会連合会の2023年5月までの立ち上げ
STUilyと、3月に実施予定の机を作るワークショップの紹介も。
「高校生でも、今から自分たちの環境を変えられる。ぜひ、いろいろなことにチャレンジを!」というメッセージは、まさにこの日の生徒会サミットのコンセプトそのものであるように感じました。
ここまでのようすは、YouTubeでも見られます。
第3部 高校生同士の交流タイム
第3部は生徒たちの交流会でした。
まずはグループに分かれて自己紹介。
続いて、文化祭での出し物を何にしたか、そのときに工夫したところは?と話し合いました。
違う学校の話から、見えてくることがたくさんあったようです。
次は、箱から取り出したお菓子に書かれたテーマで一人ずつ話をしてもらうフリートークタイム。
テーマにはこのようなものがありました。
- 学校の嫌いなところ
- 行きたい修学旅行先
- 文化祭の楽しかった出し物
- おすすめの映画
- 生徒会サミットの感想 など
多くの高校生が参加して、じゃんけんが大盛り上がり!
進行役の高校生たちの雰囲気の良さも印象的でした。
この日に向けてたくさんの準備を重ねてきたことが伝わります。
また、積極的にSNSの連絡先を交換しているのは、まさに学校を越えてどんどんつながる高校生たちの動きが形になっていく姿そのものでした。
仲間とつながる未来へつながる
さまざまな高校から生徒たちが集まり、開催された第1回福山生徒会サミット。
高校生ならではの視点からの提案に感心させられ、仲間たちとつながり、未来のために今できることを真剣に考えている彼らに、頼もしさを感じました。
このなかから、グローバルな視点で福山だけではなく世界を引っ張っていく人たちがきっと出てくるのでしょう。
生徒会サミットを終えた彼らは、ここで出た案をどう実現させていくか、生徒会サミットを継続していくためにはどのように仕組みを作っていくのかなどを、具体的に話し合い始めています。
この町の未来は、これから面白くなっていきそうですね。