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NPO法人どりぃむスイッチ、理事長・中村友紀さんとアフターケア事業所カモミール 所長・粟木原薫さんにインタビュー

どりぃむスイッチ理事長の中村友紀さんと、アフターケア事業所カモミール所長 粟木原薫(あわきはら かおる)さんに、話を聞きました。
社会体験活動プログラムでの出会いが大きな転機に

中村さんにお聞きします。若者支援をしようと思われたきっかけを教えてください。
中村(敬称略)
わが子の不登校がきっかけです。学校に行かなくなってからは家にひきこもるようになりました。ずっと家にいることが心配でしたし、「この状況がいつまで続くのだろう」と不安でたまりませんでした。社会とつながりをもつために、子どもが参加できそうな活動はないかと必死で情報を探しました。
あるとき、私の父が、社会体験活動プログラムの情報を見つけてきてくれたんです。社会体験活動プログラムとは福山市がおこなっている青少年育成自立支援事業で、社会へ参加するための一歩につながるようにボランティア活動や職場体験などをおこないます。そのプログラムへ参加することにしたんです。子どもはしぶしぶでしたけど、唯一、首を縦に振った活動だったんですね。
会場に入ってみると、わが子と同じような境遇の若者たちが大勢集まっていました。福山にはこんなにも社会参加の機会を求めている若者が大勢いるのか、何か私にできることはないだろうかと、そのとき思ったんですよ。
以前プログラムをつくる仕事をしていた私は、パソコンについて知識がありました。社会体験活動プログラムの館長さんに
「パソコンの技術を教えることだったらできるかもしれない。ひきこもっている若者がパソコンの技術を身に付けられたら、何か次につながるかも。そんなことができるような居場所があったらいいな」と相談してみたんです。
すると、「いいね!やってみたらどうかな」とあたたかい言葉で私の背中を押してくれました。ありがたいことに資金面でも協力していただき「居場所」を開けたんです。

2012年、社会体験プログラムに参加してから約半年後の出来事でした。わずかな期間で想いを実現できたことに、本当に感謝しています。
粟木原さんとの出会い

粟木原さんは居場所を立ち上げた当初から、中村さんと一緒に活動をされていたのですか。
粟木原(敬称略)
いえ。僕は当時、中村さんが立ち上げた居場所へ訪れていたんです。つまり、当事者として利用していました。
そうだったのですね。
粟木原
それから後に、居場所を利用する立場からスタッフとして関わるようになりました。
中村
私から粟木原さんに声を掛けたんですよ。粟木原さんが居場所を訪れたときには、いろいろ話をして過ごしました。話をしていくうちに「居場所のスタッフとして良いのでは」と、なんとなくそう思うようになったんです。
粟木原
2015年にどりぃむスイッチを離れましたが、頭の片隅では居場所のことを考えていたような気がします。若者が居場所を主体的につくるにはどうすれば良いか、人生を歩んでいくには何が大切かとかですね。結局、2021年には「また一緒にやりましょう」と手を携えることになりましたけど(笑)。
では、粟木原さんのカモミール所長就任は2021年以降でしょうか。
中村
そうですね。それまでは、私がカモミールとふくやまサポステの所長兼総括コーディネーターをしていました。2022年、エクリュを立ち上げたときに、粟木原さんにはカモミールの所長に就任していただきました。
仲間に支えられてきたからこそ
10年以上若者へ支援活動を続けられて、今、どのようなことを思われますか。
中村
2016年に現在ふくやまサポステの総括をしている小川さん、さらに2021年にどりぃむスイッチ事務局の久住(くすみ)さんが加わり、中心となって一緒に考え動いてくれるメンバーが増えていきました。仲間が増えたことで実現できたことが多くあります。

積極的に動いてくださったおかげで助成金を取得でき、プロジェクトを立ち上げて活動範囲をぐんと広げられました。2021年は、新たな風が吹きどりぃむスイッチが展開していく、そのような時期だったかなと振り返ります。仲間がいなければ、できなかったことはきっと多くあったでしょう。
その人らしさが見えるとき
若者支援をするなかで、うれしかったエピソードはありますか。
中村
そうですね。若者たちと関わるなかで、一番好きな瞬間があるんです。
「聞いて!この前、こんなことがあったよ」
目を輝かせてイキイキとした表情で話してくれる、その人らしさが見えるときです。

最初会った時は不安そうだった表情が、何度も話すうちに好きなことや価値観などを話してくれて、表情が明るくなってくるんです。新しい何かを始めることもあります。若者たちが変化していくようすをそばで見られることが、何より好きなんですよね。とにかくそれがうれしくて、やっています(笑)。
若者支援に関心のある大人を増やしたい
今後の展望を教えてください。
粟木原
実は、今後どのように支援活動を展開していくのが良いのか考え中です。今までどりぃむスイッチは、社会参加に困難を抱えるという表現の若者たちへ支援をおこなってきました。しかし、「社会参加に困難とは何を指すのだろう」との疑問が以前からスタッフのなかであったんです。
僕は若者支援をするなかで、将来社会的に困難に陥る可能性のある若者も数多くいるのではないかと感じています。そのためには、大人と関わる機会をもっとつくり、困った状況に陥る前から社会との接点を持っておく必要があるのではないのか。そう考えています。

今までカモミールは、社会的養護とか家庭環境にさまざまな事情のある若者たちのための居場所でした。けれども、そのような状況に限らないもっと多くの若者に来てほしいと思っています。
中村
そうですね。困る人が少なくなる地域社会をつくらなくてはダメだと思うんです。そのためには、地域の大人が若者と関わる場をもっと増やす必要があると考えています。気軽にふらっと立ち寄れるような居場所やコミュニティが、地域の学区単位であればいいなと思っています。
困ることの少ない未来にするために

「これで大丈夫だと思うことはないでしょう」
インタビューの最後に、そのような言葉が飛び出しました。それは長年若者支援に取り組んできた、中村さんが感じる切実な思いなのだと感じました。支援の手はまだまだ足りていない。だからこそ、世の中に支援を必要とする若者がいる事実をより多くの人に知ってもらわなければいけないんだと。
「この先、特別な支援がなくても自然に地域のなかで支え合える社会になったらいいのにな」
若者たちの未来をみつめながら話す中村さんでした。
悩みを相談できる若者は、困った状況に陥っているとわたしたち大人が気づけるかもしれません。しかし、つながっていなければ困っていることすら気づいてあげられない。話を聞きながら、若者と関わりをもちつながることの大切さをひしひしと感じました。支援がなくても地域全体で支え合える世の中になるようにと、筆者も願っています。
NPO法人どりぃむスイッチのデータ

団体名 | NPO法人どりぃむスイッチ |
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業種 | 若者支援コミュニティ事業 / 若者就労支援事業 / 若者人材育成事業 / コミュニティビジネス事業 / 社会的養護自立支援事業 / アウトリーチ事業 / 自立援助ホーム事業 |
代表者名 | 中村 友紀 |
設立年 | 2013年9月 |
住所 | 広島県福山市霞町1丁目8番15号 霞町ビル2階 |
電話番号 | 084-959-2348 |
営業時間 | 午前10時~午後5時 |
休業日 | 土、日、祝日 |
ホームページ | どりぃむスイッチ |