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ロウエンの代表・渡壁 英史さんへインタビュー
幅広い衣料品サービスを展開し、そっくりさんマスクも話題のロウエン。
代表の渡壁英史(わたかべ ひでふみ)さんに、開業の経緯や店のこだわり、そっくりさんマスクができた経緯などを聞きました。
始まりはアウトレットの衣料品店
開業の経緯を知りたい。
渡壁(敬称略)
もともとは「ロケット(Rocket)」というアウトレットの衣料品店を運営していました。
ロケットの開業は1997年(平成9年)です。
私はもともとファッションに興味があったわけでもなく、アパレル業界を目指していたわけでもありません。
社会人になって数社を転職し、たまたまアパレル関係の会社に入社しました。
といっても、部署は管理部門です。
ただ、そのときにアパレル業界はロスがすごく多くてもったいないと感じたんです。
ロスになる商品として安く提供できれば、商売になるんじゃないかと思いついたのがキッカケで、起業しました。
ただアパレル業界にいたときは管理部門だったので、縫製技術などは持ち合わせていません。
縫製技術は、店を運営しながら覚えていきました。
最初は16坪ほどの店を一人で切り盛りしていたんですが、裾(すそ)直しも自分一人でやらなきゃいけません。
慣れていないから裾直しに時間がとられ、そのスキをねらわれて万引きが多発したんですよ。
だから必死で早くできるように技術を覚え、作業スピードを上げていき、万引きのスキを与えないようにしました(笑)。
衣料品店から衣料品サービス店へ
ロウエンを始めた経緯は?
渡壁
ロケットは最初こそ手探りで運営していましたが、その後は順調に売上を伸ばしていきました。
しかし2000年代後半あたりから、インターネット通販が拡大してきます。
しかも、デフレの進行が続いていますよね。
世の中の求めているものが変わってきたと感じるようになりました。
インターネットで注文し、早くて翌日、遅くても数日で家に届きます。
わざわざ店に行って、選んで、買って帰るのは手間です。
正直、店に来てもらってモノを買ってもらうのは、これから先はドンドン厳しくなるんじゃないかと危機感を抱きました。
お客様がたくさん訪れている店は、どこも「ストーリー」があるような店ばかり。
だから、生き残るには、商品を並べているだけの店じゃダメだと思ったんですよ。
そして考えた末、2019年(平成31年)3月にロケットの営業をやめることにしたんです。
いろいろ思いを巡らせているうち、ロケットの事業のなかから「衣料品サービス」の部分だけを取りだした事業をやろうと思いました。
一人ひとりのニーズに応え、細やかなサービスを提供するのは、個人店だからこそできること。
企業などの大きな組織では、採算が合わずとてもできませんから。
正直、服の手直しやリメイクするより、買ったほうが安上がりなこともあります。
でも「この服じゃないといけないから、直してほしい」という考え・価値観のかたもいるんです。
そのようなかたに向けてのお店をしようと思いました。
また、在庫を抱えなくていいのもメリットですね。
個人店の強みを最大限に生かした店をしようと思ったんです。
伏見町に出店したのは、なぜ?
渡壁
ちょうど出店を考えていたころ、伏見町がリノベーションスクールを開催するなど、盛り上がりつつありました。
関わっている人の多くが熱意があって、地域のために惜しみなく力を貸すような気概があったんです。
私は、とても刺激を受けました。
だから出店するなら伏見町周辺だなと感じていたとき、ちょうど今の物件の話がありまして。
そうして2019年(令和元年)7月に、ロウエンをオープンしました。
伏見町が盛り上がりだしてからは、当店が2店舗めの開業だったと思います。
店名の由来を教えてほしい。
渡壁
「ロウエン」という店名は、旧「ロケット」の名残です。
昔、ロケットというものがあまり知られていなかった時代、ある本でロケットに「狼煙(のろし)」の漢字を当てたそうです。
そこから、狼煙を音読みにしてロウエンとなりました。
なお「ロケット」の店名は、店の経営を「ロケットのように垂直上昇させる」という意味があります。
「右肩上がり」という言葉がありますが、実際には起業した人の大半が3年以内に辞めるという現状もあるんです。
だから「右肩上がりの気持ちでは生き残れない。垂直上昇くらいの気持ちでないとダメだ」と感じたんですよ。
それに、店名は老若男女の誰もがわかる言葉でないといけないという思いもありました。
ロケットは、みんながわかる言葉ですよね。
衣料品サービスについて
衣料品に関するさまざまなサービスを提供しているが、どんな依頼が多い?
渡壁
店や会社・団体などで、みんなが着用するユニフォーム製作の依頼が多いですね。
ほかには、お店の暖簾(のれん)や旗などの注文もありますよ。
お客様は地元周辺が多いです。
しかしなかにはインターネットを介して、北は北海道、南は沖縄の石垣島まで、全国から注文があります。
私はYouTubeで動画配信をしているので、それを見たかたからの注文があるようです。
衣類だけでなく、暖簾や旗、袋など布製品・繊維製品だったら広く対応しています。
それと、最近多い注文があります。
Instagramをやっているデザイナーなどのかたが、当店で個人用に服をつくって写真を挙げ、それを見たフォロワーから同じものが欲しいという依頼がそのデザイナーに来るというもの。
まさに「プチ・ブランド」ともいえる、新しい動きだなと思います。
変わった依頼などはあったりした?
渡壁
めずらしいものでは「まとい」がありました。
「まとい」というのは、昔の「火消し」が使っていた、先に飾りのついた長い棒です。
今はほとんど使われていないのですが、地元の消防団で使っているところがあり、修繕の依頼がありました。
まといについている「バレン」というたくさんのヒダの部分が劣化していたのを直しましたね。
あとは、鯉のぼりの修繕依頼もありました。
まといや鯉のぼりのような変わったものなどは、正直過去に扱ったことがないので、修正方法などはわからないこともあります。
でも調べたり、いろいろな手段を試してみたりして、なんとか修正できるようにがんばりますよ。
それに、縫製以外の意外な方法がいい場合もあったりするんです。
コロナ禍で「そっくりさんマスク」販売へ
「そっくりさんマスク」が話題となったが、製作した経緯を知りたい。
渡壁
2020年(令和2年)から新型コロナウイルス感染症が流行し、飲食店などの営業やスポーツ大会、イベントなどが自粛になりました。
その影響を受けて、店の受注も減少したんです。
代わりに、マスクの製作依頼が増えました。
ちょうどそのころ、世の中のマスクが不足していた時期だったからです。
コロナ禍で、ふだんからマスクを着用するのが定着しましたよね。
だったら次は、マスクに個性やファッション性・話題性が求められると考えました。
そこで思いついたのが「そっくりさんマスク」です。
ユニークなマスクを着用することで、自然と笑いがこぼれ、大変なコロナ禍の時期を明るく乗り越えようという思いで製作を決めました。
笑いは免疫力や抵抗力を高めるという話もありますので、コロナの時代にピッタリではないでしょうか。
自分の顔をマスクに印刷して着けるという発想は、何がキッカケで生まれた?
渡壁
意外かもしれませんが、そっくりさんマスク誕生のキッカケは、2020年4月におこなわれた福山市議会議員選挙です。
候補者のみなさんが、全員マスクを着けて街頭演説をしていました。
マスクで顔の大部分が隠れているから、誰なのか見分けがつかないですよね。
それを見て、私は「選挙ポスターで顔写真を思い切りアピールしているのだから、自分の顔をマスクに印刷でもしておいてくれ」と思ったんです。
それでインスピレーションを感じ、顔を印刷したマスクを思いつきました。
試しに自分の顔を印刷したマスクをつくり、SNSで投稿してみたところ、大ウケしたんです。
翌日、さっそく知人2名から「私にもつくってほしい」という依頼がありました。
一人は、わざわざ広島市内から新幹線で依頼に来たほど。
まだそっくりさんマスク製作のサービスは提供していなかったのですが、これは需要があるのではないかと思い、発売することに決めたんです。
その後も知人などからの依頼が続き、合計30人分くらいつくりましたかね。
そうすると、よりよいもの、よりリアリティのあるものをつくるにはどうすればいいかとか、ノウハウが蓄積されてきました。
こうして、2020年5月にそっくりさんマスクの発売にこぎつけたんです。
最初はクラウドファンディングで発売したと聞いた。
渡壁
最初にクラウドファンディングを利用したのは、話題にならないといけないと思ったからです。
でも、思ったより反応がなくて不安でした。
クラウドファンディングの期間の終了が近くなったころ、ある全国放送のテレビ番組から紹介させてほしいという依頼があったんです。
これをキッカケにして、全国から一気に多数の注文が入りました。
その後もたびたびテレビ番組や新聞、雑紙などのマスメディアで取り上げていただきまして、順調に売上を伸ばしていったんです。
冬には派生商品の「そっくりネックゲーター」も発売しました。
そっくりネックゲーターは前側と後ろ側で、2つの顔を印刷しているのが特徴です。
個人個人に合ったサービスを提供し、満足してもらう
今後の展望があれば教えてほしい。
渡壁
お客様一人ひとりが喜んでもらえるようなサービスを提供していきたいですね。
ロウエンは、企業ではできない個人店ならではのサービスを目指して始めた店。
やっぱり個人個人に合ったサービスを提供し、お客様に満足していただけるのが何よりもうれしいですよ。
今はコロナ禍でさまざまな制約があります。
早くいろいろなことができるようになって、楽しく過ごせるようになってほしいですね。
そうなったときに、ロウエンのサービスでお客様に喜んでもらえるようなお手伝いをしていきたいです。
個人の思いに対応する衣料品サービス店 ロウエン
ユニークな「そっくりさんマスク」がインパクトあるロウエン。
さらにロウエンは「破れてしまった愛着のある服などを直したい」「オリジナルのプリントシャツが欲しい」といった、個人の思いに対応してくれる店です。
思いの詰まった服や繊維製品が破れたり壊れてしまったら、ロウエンへ相談してみてはいかがでしょうか。
洋裁印刷店 ロウエン(ROEN)のデータ
名前 | 洋裁印刷店 ロウエン(ROEN) |
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住所 | 広島県福山市伏見町3-4 |
電話番号 | 084-999-3233 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 午前11時〜午後8時 |
定休日 | 不定休 |
支払い方法 |
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ホームページ | ロウエン - ROEN |