目次
『し・ま・の・室内楽』の皆さんへインタビュー
豊嶋博満さん、豊嶋和史さんをはじめ、「し・ま・の・室内楽」の奏者である東秋幸(ひがし あきゆき)さん、上条真理(かみじょう まり)さん、川村陽香(かわむら はるか)さんに、話を聞きました。

(画像提供:『し・ま・の・音楽祭』実行委員会)
『し・ま・の・音楽祭』を始めた経緯
『し・ま・の・音楽祭』を始めた経緯を教えてください
豊嶋博満(敬称略)
私自身は大阪で生まれ育ち、大学からは東京に住んでいるので音楽を聴く環境には恵まれています。
しかし、伯方島に移住した学生時代の友人から、「島では日常的に生の音楽に触れる機会がないのが残念」と聞き、「それなら自分たちで創ってしまおう」と決意しました。
2013年に初めて伯方島で試験的な演奏会を開催したのが始まりです。
初回の演奏会の感想を教えてください
豊嶋博満
無料で実施したところ、雨にもかかわらず、館内のイスをすべて使っても立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。
「次回も開催してほしい」という要望も多く、その期待に応えるために実行委員会を立ち上げました。

有料公演が開催できる島に変化
2回目の公演も盛況だったのでしょうか?
豊嶋博満
2回目は本公演を500円の有料公演にしたところ、来場者は半分以下に減ってしまいました。
それでも「島で生の音楽を聴ける環境を整える」という本来の目的を達成するためには、お金を払ってでも聴きたいという観客を増やすことも大切だと思い、その後はできるだけ有料で演奏会を行うようにしています。少しずつですがお客様の数は増えてきています。
お金を払ってでも聴きたいと思う人が増えているのですね?
豊嶋博満
はい。そのような手応えを感じています。
嬉しいことにアンケートに「あまりに安すぎる」という意見を多数いただきましたので、昨年は2,000円(前売券、税込)に値上げしてみましたが、意外にも観客数は増加し、目標に徐々に近づきつつあるのかなと思います
これでも都市部の演奏会よりは安いのですが、継続していくことで、どれくらいの人が聴きに来てくれるようになるのか検証したいと思っています。
音楽祭を継続するなかで困ったことは何ですか?
豊嶋博満
いろいろありますが、演奏会を有料化したいと思ったときに、最初はチケットを取り扱ってくれる場所がないことに困惑しました。
島で演奏できるような広い場所は公共のホールや交流館になりますが、こうした場所は演奏はさせてくれてもチケット販売などは引き受けてくれません。
そこで何日もかけてレンタカーで各島を巡り、チケットを置いてくれる店やチラシを配ってくれる人を探しました。
何軒も断られるなかで、引き受けてくださった皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。
せめてものお礼の気持ちで、ささやかながらSNSなどでPRしています。

今後、島で公演をしたいと思う人たちには、この音楽祭の販売網などをまねしてもらってかまわないので、演劇やさまざまなコンサートが増えることを期待しています。
赤字でも活動を継続できる理由
採算は取れるようになったのでしょうか?
豊嶋博満
残念ながら赤字です。クラウドファンディングで資金を募るなど、黒字化の方法を模索中です。
活動を継続できる理由は何ですか?
豊嶋博満
やはり、目的が目先の利益ではなく、「島々で生の音楽が聴ける環境を作る」という試みだからでしょう。
10回目の今年、どれくらいの観客が来てくれるのか、活動の成果を検証する時期に来ています。
豊嶋和史(敬称略)
私は室内楽というものをより多くの人に知ってほしいという思いで続けています。特に弦楽四重奏はほかではあまり聴けないものなので、ぜひ、この音楽祭で多くの人に聴いてほしいですね。
川村(敬称略)
この音楽祭はクラシック音楽に特化しているので、観客からどのような反応があるのか楽しみにしています。
でも、最後はいつも「やって良かった」と思うんですよね。
上条(敬称略)
演奏家は一人で活動することが多いのですが、この音楽祭では2週間、同じメンバーで一緒に過ごせるのが楽しくて続けています。また、島のおいしいものを食べたり、地元の人と話したりできるのも楽しみです。
東(敬称略)
島の人たちがとても真剣に聴いてくれることがモチベーションになっています。
また、自然豊かな瀬戸内の島々で演奏できること自体が楽しみです。

「創る音楽祭」を地域文化の活性化に役立てたい
今後の展望を教えてください
豊嶋博満
10年以上かけて、しまなみ海道だけでなく、その周りの島々でも公演できるようになりました。
瀬戸内の島々が音楽祭をきっかけに、さらに活気づいてくれることを願っています。
具体的には、島から出なくてもさまざまな文化に触れられ、都会から若い人が移住したくなるような環境を整えることが重要だと考えています。
音楽がその一助となると良いですね。
広島から島根にかけてやまなみ街道もありますが、そうした方面への展開もありそうですか?
豊嶋博満
じつは、ほかの地域からの声にも応えていけるように、「創る音楽祭」という団体を立ち上げました。
これまで培ってきた音楽祭の運営ノウハウを、必要としている人々に提供することで、瀬戸内の島々から始まった「創る音楽祭」の輪が、さらに広がっていくことを期待しています。
おわりに
『し・ま・の・音楽祭』は、単に音楽を聴くだけのイベントではありません。プロと地域住民が一体となって、島に「聴く」「奏でる」「学ぶ」「つながる」という豊かな機会を生み出しています。
10年以上かけて育くまれてきたこの活動が、今後さらに「創る音楽祭」として輪を広げていけるように、私自身もできる形で参加したいと思いました。
瀬戸内の文化を豊かにしてくれる『し・ま・の・音楽祭』に、ぜひ足を運んでみませんか。

瀬戸内『し・ま・の・音楽祭』2025のデータ

名前 | 瀬戸内『し・ま・の・音楽祭』2025 |
---|---|
期日 | ※時刻は開演時間 『し・ま・の・オーケストラ』2025演奏会 9月14日(日) 午後5時~ 吉海学習交流館 大ホール 『し・ま・の・室内楽』弦楽四重奏 【伯方島公演】 9月11日(木) 午後2時~ 伯方農村環境改善センター 【今治公演】 9月20日(土) 午後7時~ 今治市中央公民館 【生口島公演】 9月21日(日) 午後2時~ ベル・カントホール 【向島公演】 9月22日(月) 午後7時~ むかいしま文化ホール 【因島公演】 9月23日(火) 午後2時~ 因島図書館(芸予文化情報センター) 『し・ま・の・室内楽』ピアノ三重奏 【大崎下島公演】 9月17日(水) 午後2時~ 安芸灘交流館 【朝倉公演】 9月20日(土) 午後2時~ 朝倉ふるさと美術古墳館 特別公演についてはパンフレットをご覧ください。 |
場所 | 広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田535-1 |
参加費用(税込) | 前売券2,000円(学生500円) 当日券2,500円(学生700円) ※『し・ま・の・室内楽』特別公演は無料(9月15日の大島を除く) チケットはこちらのサイトから購入できます。 https://setouchi-fest.com/tickets/ 店舗で購入する場合のお支払いは現金です。 |
ホームページ | 瀬戸内『し・ま・の・音楽祭』 |