岡山県立笠岡商業高等学校には、ユニークな活動をしている「笠SHOP(カサショップ)」というグループがあります。
独自の活動をおこなっている笠SHOPは、部活動や生徒会活動などではなく、なんと有志の生徒と先生で構成されているそうです。
その笠SHOPの探究班が、Moon Japan(ムーン ジャパン)の社会起業体験ワークショップを受講すると連絡があったので、笠岡商業高校に出向きました。
2年生8人と3年生4人が受けた、社会起業ワークショップの模様をお伝えします。
記載されている内容は、2023年6月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
笠岡商業高校 笠SHOPとは
笠岡商業高等学校内の有志で構成されている笠SHOPは、商品開発班と観光班、そして探究班に分かれて地域貢献活動をおこなっています。
大まかな活動内容は以下のとおりです。
- 商品開発班…地元地域の企業とコラボレーションしての商品開発や各イベントでの出店販売など
- 観光班…笠岡諸島の観光ツアーや地元地域企業の産業観光ツアーなど
- 探究班…地域の課題を解決するためのイノベーションコンテストやビジネスアイデアコンテストに出場、笠岡商業高校の紹介動画作成など
令和5年5月18日(木)に、Moon Japanの社会起業体験ワークショップを受講したのは、探究班です。
探究班は令和3年11月27日(土)に、「生きた化石と人類の共栄~人類を救う!カブトガニ牧場~」で、岡山イノベーションコンテスト高校生の部大賞(高校生1位)を受賞している本格派。
令和3年以降もコンテストに毎年出場するため、日々課題研究をおこなってきました。
視野をさらに広げるため、社会起業体験ワークショップを受講することにしたそうです。
Moon Japanの社会起業体験ワークショップとは
社会起業体験ワークショップをおこなう合同会社 Moon Japanについて紹介しましょう。
Moon Japanは、「高校生起業家が全国の中学高校を訪問し、体験プログラムを通して社会起業を全国に広める」ことを目的とし立ちあがったプロジェクト団体です。
発足時にはメンバーの多くは高校生でしたが、2023年6月現在、各学校を訪問するのは高校生・大学生起業家たちとなりました。
笠岡商業高校でおこなわれた社会起業体験ワークショップは、以下の構成です。
- 自己紹介と起業を通しての体験談
- 社会起業とは何か?なぜ社会起業が今の世の中に必要なのか?を解説
- 社会起業のプロセスをワークショップで体験
- ワークショップを経て湧き出てきたアイデアを発表し、再度社会問題解決を目指すビジネススタイルの認知の呼びかけ
最初は、Moon Japanメンバーの自己紹介と体験談です。
Moon Japan CEO 藤田岳さんの体験談
藤田岳(ふじた がく)さんは、現役の大学1年生でありMoon JapanのCEO(最高経営責任者)です。
これまでの活動を説明したあと、現在Moon Japanが取り組んでいることについて生徒のみなさんに話しました。
自身が受けたアジアンヘイトをきっかけに設立したNOMAH(NoMore Asian Hate)の話は、生徒のみなさんにとって考えさせられると同時に行動する力を与えたのではないでしょうか。
Moon Japan COO 今井智紀さんの体験談
今井智紀(いまい ともき)さんは、京都の高校に通いながら株式会社Ligula(リグラ)の代表取締役社長とMoon JapanのCOO(最高執行責任者)を兼任しています。
元笠岡市地域おこし協力隊インターンで、任期終了後も笠岡市とのつながりを大切にしています。
Ligulaの活動などを生徒のみなさんに伝えました。
高校生であり社会起業家の今井さんの話は、同年代でもここまでやっているんだと刺激的だったはず。
なぜ社会起業が今の世の中に必要なのか
次に従来の起業と社会起業についての違いを理解することからの説明です。
何を最優先し、何に利益を使うのかについて比較しながらわかりやすく笠SHOP 探究班メンバーに紹介しました。
そして「なぜ高校生が社会起業をするのか」、その社会的な意義について学びます。
「人生経験が浅いことは常識にとらわれないことでもあるので、斬新なアイデアが生まれやすい点」と、「高校生大学生である世代が解決しなければならない当事者になるので、自分のこととして考えられる点」は共感できました。
「常に問題意識を持つこと。その問題を解決するための方法を考えるときに、いろいろなやり方があることを知ってほしい」と藤田さんは話します。
藤田さんと今井さんの話を真剣に聞く探究班メンバー。
社会起業の基本的な部分をおさえ、いよいよワークショップを始めます。
社会起業のプロセスをワークショップで体験
探究班メンバーは、ビジネスアイデアコンテストへ出場するためのプランを練っているところだったので、Moon Japanの社会起業体験ワークショップを実践する時間は貴重です。
ワークショップの最初は、リーンキャンバスを記入するところからスタートです。
リーンキャンバスが記入できたら、それをもとにメンタリングを開始します。
メンター(相談者)として、株式会社kakeruX(カケルクロス) 代表取締役社長の寺田伊織(てらだ いおり)さんと笠岡市地域おこし協力隊インターン(取材時点)の松原佑樹(まつばら ゆうき)さんが参加しました。
リーンキャンバスの記入
リーンキャンバスは、以下の9項目を埋めていきます。
- 課題…解決する必要のある課題は何か
- 顧客セグメント…どのような顧客をターゲットとするか
- 独自の価値提案…課題に対してどのような独自の価値を提案できるか
- 解決策…課題をどのような策で解決するか(ある程度具体的に記載)
- チャネル…どのような経路で価値提案をおこなうか
- 収益の流れ…どのようなタイミング・価格で収益を獲得するか
- コスト構造…コストはどのくらいかかるのか
- 主要指標…成長度を測る指標は何か
- 圧倒的な優位性…競合に対して自分たちが持つ圧倒的な優位性は何か
リーンキャンバスは、起業のアイデアを短時間でわかりやすく可視化・検証できるのが特徴です。
ブラッシュアップが効率的にできることと、メンバー間の認識の共有が簡単な点で、スタートアップのビジネスモデルを検討するときによく使われます。
今回は探究班のみなさんが持っているビジネスアイデアを、リーンキャンバスに書きながら可視化する作業から始めました。
リーンキャンバスの項目を埋める時間は10分間!
ハードですねえ。10分で完成できるのでしょうか?
リーンキャンバスの項目を、みんなで意見を出し合い考えます。
話し合いは真剣モード。
リーンキャンバスの項目がどんどん埋まっていきます。
ワークショップでは、2年生2グループ、3年生1グループとしました。
どのグループも活発に意見を出しながら、みんなでリーンキャンバスの完成を目指します。
それにしても10分間は短い。鬼のワークショップです(笑)。
リーンキャンバスをもとにメンタリング
項目を埋める10分間が終了し、次はメンターに課題と解決策を提案します。
「メンターに思いをぶつけてください!」と言われた生徒たちは、何を解決したいのかをメンターに伝えます。
解決策で行き詰まれば、メンターに意見を求め、リーンキャンバスをブラッシュアップしていました。
話し合った内容をまとめていくと1から9の項目が完成します。
時間が短いにもかかわらず、すべての項目を埋め、発表段階まで到達したグループが出ました!
リーンキャンバスに記入したことをグループ別で発表
リーンキャンバスの項目を埋めながらのメンタリングが終了したあとは、各グループの発表です。
時間内でまとめたことを発表し、現時点での問題点を明確にします。
まとめた部分を発表することはとても重要。
途中でも、発表することで客観的に自分たちのリーンキャンバスを見つめることができるのです。
項目のすべてを発表できたグループも途中のグループも、真剣に互いの内容に聞き入りました。
次のビジネスアイデアコンテストに向けて
笠岡商業高校の笠SHOP 探究班が受講したMoon Japanの社会起業体験ワークショップは、ビジネスモデルを日々考えているメンバーにとって、とても貴重な時間になったことでしょう。
講演が始まるまでは、みんなでワイワイいいながら準備する今時の高校生でしたが、いざ講演とワークショップが始まると表情は一転します。
「生徒たちには、いろいろな体験をしてもらい刺激を受けてほしいんです」と担当の東義信(あずま よしのぶ)先生は話していました。
社会起業体験ワークショップを全国回りながら高校生に受講してもらうMoon Japanの活動は、「地方だからできない」と考えられていた経験の垣根を取り払う意味のある活動です。
笠岡商業高校でおこなわれた社会起業体験ワークショップは、笠SHOP 探究班のみなさんの本気度がビシバシと伝わってくる1時間。
探究班のみなさんが挑戦するコンテストは、「岡山県高等学校生徒商業研究発表大会」「岡山イノベーションコンテスト」「高校生ビジネスプラン・グランプリ」「全国高校生ビジネスアイデアコンテスト」などがあるそうです。
さまざまなことを吸収し、次のビジネスアイデアコンテストにチャレンジしてほしいと思います。
Moon Japan 社会起業体験ワークショップのデータ
名前 | Moon Japan 社会起業体験ワークショップ |
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期日 | 令和5年5月18日(土) |
場所 | 笠岡市笠岡3203 |
参加費用(税込) | |
ホームページ | Moon Japan |