目次
インタビュー
「せ・とーち」はどのような想いでできたのでしょうか?
「せ・とーち」を運営する合同会社離島倶楽部の共同代表・藤井裕也(ふじい ひろや)さん、共同代表・能登大次(のと ひろつぐ)さん、スタッフの水口なみ(みずぐち なみ)さんに話を聞きました。
離島に拠点を
藤井
もともとここは、別のかたが民宿をしていた建物でした。
元のオーナーは、「高島を元気にしたい」という思いで、漁師をしながら民宿をずっと営んできたんです。
しかし、高齢化により続けるのが難しくなって。
オーナーからの提案があり、建物を引き継ぐ形でできたのが、「せ・とーち」です。
ぼく自身「離島で拠点を持ちたい」とは思っていて、場所を探していたんです。
いくつか候補があったなかで、高島が一番盛り上がりがすごかったし、感じのいいロケーションだなあと思い、ここに決めました。
ぼくは「山村エンタープライズ」という、引きこもっている若者の自立支援などを行なっているNPOの代表をしています。
山村エンタープライズで活動している引きこもりの子たちと一緒に、ときどきここに来ては、床を一緒に貼ったりDIYしたり、1年くらい準備をしました。
ダイニングのテーブルも彼らと作ったものです。
藤井
さまざまな地域を考えたのですが、岡山県美作(みまさか)市で活動している「山村エンタープライズ」との両立を考えると、岡山県がベストだと。
岡山県内でも、いくつかの島を検討しました。
笠岡諸島では、六島(むしま)はクラフトビールを作っていて、真鍋島(まなべしま)はゲストハウスがあり移住者もおり、飛島(ひしま)は廃校を活用して不登校の人のキャンプを開催しています。
白石島(しらいしじま)と北木島(きたぎしま)は、観光地としてある程度有名です。
高島は人口流出も多く、課題も多いのでやる意味があるな、と考えていました。
能登
観光地っぽくないところも、いいところですね。
他のお客さまに会うことは、まずありません。
車が走っていないのも、子供連れにとってはすごくいい環境かなと思います 。
藤井
山村エンタープライズは山奥にあり、農山村山間部での体験活動や企業との連携プログラムを作っています。
山村エンタープライズの活動の一環として、キャンプなどで離島を訪れていて、「離島は、使える資源が山と全然違う」と感じていました。
海・海産物など魅力があるなと思っていたのがひとつの理由です。
また、ぼく自身はずっと離島を訪れていて、2016年くらいからロシア・中国・韓国などとの国境離島を周っていた時期があったんですよ。
全国的に離島の宿は課題になっているんですが、観光を取り巻く環境もかわってきていて課題も山積しています。
多くの離島の現状を見てきて、「なにかしたいな」という思いが前からありました。
将来的には、せ・とーちが離島の課題に一石を投じられる事例になったらと思っています。
先の話ですけどね。
離島の民宿が抱える課題
藤井
多くの島の場合、住民にあまり若者がいません。
民宿業を営んでいるのは高齢者で、なるべくやめたいと考えています。
日帰りできない場所だと、外から人が来るための最低条件になるものが、民宿や宿。
宿がないと、島の人の生活の維持も難しくなってくるんです。
往来がないと、外から島のことを知ってもらうこともできません。
しかし離島で民宿をするには、稼働率の課題があります。
平常時の都会のビジネスホテルは、全国の平均稼働率が約8割なんですけど、離島の民宿では2~3割です。
そもそも旅館業は、全国的に長年低迷しています。
労働生産性が低いため働いただけ給料が上がるわけでもないし、多くの旅館は冬にはあまりお客さまが来ません。
また、市場の変化もあります。
民宿の形も変わってきてるじゃないですか。
ビジネスホテルが台頭してきて宿の価格がぐっと下がってきたところで、昔ながらの民宿は太刀打ちできなくなりました。どうしてもコストが高いんです。
「せ・とーち」の1階の大広間は、もともと宴会場なんですよ。
当時は団体客が来て宴会するスタイルだったからですが、ビジネスモデルとしては古いですよね。
市場の変化に対応しなければなりませんが、離島には若い人が少なく、設備投資も難しく、うまく対応できていない事例も多くあります。
課題の多い離島の宿業と、「せ・とーち」のチャレンジ
藤井
ただ今は、離島で宿を運営する際に「島に定住すること」が必須ではなくなってきました。
スタッフはもちろん雇わなくてはいけませんが、やり方によっては「行ったり来たり」でできるんじゃないかなと。
そういう方法だったら自分にも宿が運営できると思いました。
ぼくらは民宿業やるのは初めてで、できるという確証はありません。
やってみないとわからないから、やってみようと。
「やってナンボ、やってみると身に付いてきて、できてくる」と思っています。
やっぱり厳しいんですけどね。
やりながら、島の特色を考えて試行錯誤しているところです。
だんだんサービスを作っていきたいなと。
藤井
今は新型コロナウイルス感染症の影響を受けていて、予想をはるかに上回る打撃です。
民宿業にはこういうリスクがあるんだなと学べました。
withコロナ/afterコロナの時代にどういう形があり得るか、プランを考えています。
宿を営んでいる人はみんな、探していますけどね。
都会のホテルとの稼働率の違いや市場の変化を踏まえながら、喜ばれるサービスを作っていきたいなと思っています。
藤井
どっちもじゃないでしょうか。能登さんはどうですか?
能登
どっちもですね。
藤井
社会的な意味合いも、経験してみたいという興味も、どっちもあります。
能登
自由に使えるところは、喜ばれているんじゃないかなと思います。
たとえば幼稚園児連れのお客さまは、子供たちが建物の中でドタバタして、押入れからジャンプしたりして遊んだりしている間、親はロビーで雑談したりキッチンでごはんを作ったりしていました。
子供用のキッチンでままごとをしてもらってもいいですし。
子供用包丁もあるので、保護者のかたが見ててくださるんだったら、「子どもに一品作ってもらう」ようなこともできるようにしています。
また、畳の部屋なので、子供たちはゴロゴロしていましたね。
高島の自然やアクティビティ
水口
ツツジは有名ですね。コバノミツバツツジが自生しています。
藤井
季節が良ければ柑橘類がたわわに実っていて、楽園感があるなと感じます。
能登
1時間くらいで島を一周できるトレッキングロードはおすすめです。
高台まで行くので、緩やかに登り、結構長い階段があります。でもそこがすごくいいんですよ!
長く急な階段を登って行って頂点に着くと、鳥居が立っていて。
鳥居をくぐると、神武天皇が占いをしたといわれる視界が開けたところに出て、とても眺めがいいんです。
また、夜は星を眺められます。
高台で周りに家が全然ないので、本当に暗くなるんですよ。
一棟貸しなのでペンションの照明も自由に消せます。
庭から見ると空が広くて、いいですよ。
島で開放的な滞在を
日常から離れて、波の音と潮風を感じながら過ごす時間。
筆者は島旅が好きで、ほんのちょっとだけ島で暮らしていたこともあります。
島旅を楽しむ人と島で暮らす人の生活を支えてくれているのは、宿の存在。
ソーシャルな意識を持って、自ら身体を動かし道を開いていく離島倶楽部のかたがたは、穏やかさと情熱を併せ持っていました。
瀬戸内海の多島美とのんびりした雰囲気は、本当に素敵です。
瀬戸内の島の良さを満喫しながら、開放的な島旅を「せ・とーち」で過ごしませんか?
せ・とーちのデータ
名前 | せ・とーち |
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所在地 | 岡山県笠岡市高島5151 |
電話番号 | 080-6716-8782 |
チェックイン | 午後3時~ ※午後2時45分、もしくは午後6時15分高島着の定期船 ※アーリーチェックイン(午前11時46分高島着の定期船利用):+10,000円(税別) |
チェックアウト | ~午前10時30分 ※レイトチェックアウト(午後3時10分高島発の定期船利用):+10,000円(税別) |
支払い方法 |
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施設情報 | 全6室+ダイニング、大広間、キッチンなど 館内禁煙 各階に共同トイレ(洋式2・和式1・男性用4) 食事提供なし 食材セットの提供あり(要事前予約)、BBQスペース・キッチン利用可能 畳のある部屋 |
お風呂 | 共同バスルーム 2〜3人用の内風呂 x 1室・5〜6人用の岩風呂 x 2室 岩風呂は有料、要事前予約 |
Wi-Fi | あり |
駐車場 | なし 車での来島不可 笠岡港周辺・神島外浦港周辺に無料駐車場あり |
ホームページ | 瀬戸内海の貸切ペンション「せ・とーち」 |