島の人にお話を聞きました フリースクール育海 堂野 博之さん、日置 幸さん
飛島に来た経緯を教えてください
堂野(敬称略)
通信制高等学校のカリキュラムのひとつとして、フィールドワークができるような場所を探していました。
廃校となった小学校があると耳にして、フィールドワークの拠点として活用できないかと見学にきたことが飛島との出会いです。
その後、夏と冬の年2回、子どもたちと飛島に足を運び、除草作業などの奉仕活動を行ないます。
島の活動を続けるなかで、島民との仲も深まり、島で行なわれる運動会や祭りなどの行事にも参加するようになりました。
日置(敬称略)
フィールドワークに関わったことが、飛島との出会いです。
飛島での活動を続けるなかで、島の人たちに名前を覚えてもらえるようになり、島の人と過ごす時間が楽しくなりました。
気がつけば、私も子どもたちと一緒に飛島に通うようになっていたんです。
飛島は年配のかたが多く、人も減っていて、田舎を代表するような状況になっています。
しかし島という環境のためか、田舎とされている他の地域よりも島民たちのつながりは強く、また優しいように感じます。
難しい理由はなく島での人との関わりがうれしかったというのが、飛島を好きになった理由で、そして今でも飛島に通っている理由です。
フリースクールを作ろうと思った経緯は?
堂野
自分の学校を作りたいという強いこだわりがあったわけではありません。
島での活動を続けていると、意欲的に参加する子どもが現れはじめ、月1回子どもたちと一緒に飛島に足を運ぶようになりました。
フリースクール育海の土台となった活動です。
島民との関わりや、海で魚を獲るなどの自然との触れ合いにより、子どもたちは自ら行動を起こすようになりました。
子どもたちの変化を見ていると、飛島の環境によって子どもの中にある本来の力が芽生えたように感じたのです。
呼び寄せられるようにして飛島と巡り合い、活動を続けていたら、子どもたちの主体性が育つ学びの環境ができていました。
気がついたときには、飛島にフリースクールを作ることを考えたという感覚です。
飛島の恵みを生かしたカリキュラムは?
日置
育海には事前に用意したカリキュラムはありません。
私たちが教育カリキュラムを提供することで、子どもを導くのではなく、子どもが自ら成長できる場所を目指しています。
島民との関わりや、自然との触れ合いのような飛島の環境を整えることが、私たちの役目。
飛島で過ごす子たちを見てきて、飛島のありのままの環境が、子どもたちを成長させると実感しました。
環境を整えるだけで、子どもたちは草木のように自らの力で育っていくと思います。
おわりに
筆者の個人的な感想ですが、飛島は笠岡諸島の他の島にはない落ち着いた雰囲気があると感じました。
飛島を歩いていると、音が少ないことに気づかされます。
聞こえてくるのは、波が打ち寄せる音と風で木々が揺れる音。
嶋神社への石段を登りながら、浜辺で海を眺めながら、普段の生活では意識しない自然の音に耳を傾けていました。
日常生活でゆとりをなくし、息が詰まりそうなときは、便利さや効率をどこかに忘れて、心と体を休めるために飛島を訪れるのもいいかもしれません。
椿の花言葉を調べてみると、控えめな素晴らしさ、気取らない優美さでした。
落ち着いた雰囲気が漂う飛島に、ぴったりの言葉。
飾らないありのままの島の姿が、子どもたちの疲れを癒し、成長を促すのだと感じました。