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雅音(みやびね) ~ 琴の端材で作ったスマホスピーカーで福山琴を応援!

雅音(みやびね) ~ 琴の端材で作ったスマホスピーカーで福山琴を応援!

知っとこ / 2023.01.29

福山市は全国一の琴の生産地です。

1970年代には、年間約30,000面の琴が生産されていたといわれています。

しかし現在、福山琴の生産量は最盛期の10分の1以下に減ってしまいました。

福山琴を残したい

その思いから、有限会社福山サービスセンターイトウの伊藤匡(いとう ただし)さんは、琴の端材を使ったスマホスピーカー「雅音」の開発に取り組んでいます。 

記載されている内容は、2023年1月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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スマホスピーカー「雅音」の開発

スマートフォン(以下、スマホ)から出る音を増幅して大きくする、いわゆる「スマホスピーカー」には、デザインも素材も価格も、さまざまなものがあります。

そのなかでなぜ今、雅音を開発したのでしょうか。

琴の端材を利用

まずは以下の動画で音を聴いてください。

雅音にスマホを置くと、豊かに音が広がります。

雅音の外観は琴に似せてデザインし、琴と同じく本体には桐の木を、足や角にはカリンの木を用いました。

琴は中が空洞になっていて、弦の振動を増幅させ独特の音色を作り出しています。

雅音も琴と同じように、中で音を響かせる構造にしました。

上から見た雅音。穴の位置を中央からずらしているのは、スマホの角度を変えて異なる響き方を楽しむため。
上から見た雅音。穴の位置を中央からずらしているのは、スマホの角度を変えて異なる響き方を楽しむため。
雅音の内部構造
雅音の内部構造

雅音はとくに和楽器との相性がよく、なかでも琴の音はやわらかい優美な響きとなってすっと心に入ってくるように感じます

使っているのは、琴の端材です。

桐材は時間をかけて乾燥させ、雨露にさらすことで琴づくりに適した状態になります。

しかしそれでも、琴に使うのはそのうちの一部分で、使わなかった部分は捨ててしまうのです。

職人の厳しい選別眼にかなった良質の桐の端材を見て、伊藤さんは考えました。

この端材を使って福山琴を全国の人たち、いや、世界中の人たちに知ってもらう製品を作れないだろうか、と。

最初の企画では、瀬戸内の魅力を体験するミニツアーで、琴製造の見学や、端材を使ったコースターの手作り体験などを考えていたのですが、さまざまな事情から断念。

発想を切り替え、考え抜いてたどり着いたのが端材を使った製品づくり、すなわち、この雅音でした。

伝統工芸士との共同作業

雅音の開発は、伊藤さんと藤井琴製作所藤井善明(ふじい よしあき)さんとの協働プロジェクトです。

藤井さんは、福山邦楽器製造業協同組合の理事長を務めている人で、福山琴の職人のなかでもとくに高度な技術を持つとして伝統工芸士に認定されています。

雅音がこの形になるまで、何度も試作を繰り返しました。

工芸品としても楽しんでもらえるよう、見た目の美しさや、箱から取り出したときのインパクトにもこだわっています。

雅音を箱から出す
雅音を箱から出す

製作予定数は、300体です。

一つひとつ手作りするため、木目や音が同じものはありません。

売上の何割かは琴業界への寄付にあて、すべてにシリアルナンバーをつけ、鑑定書付きで販売する予定です。

雅音シリアルナンバー
裏側にシリアルナンバーの真鍮プレートがつく。(画像提供:伊藤匡さん)

福山琴の歴史と現状

福山は全国一の琴の生産地で、全国シェアの7割を占めています

福山琴の歴史が始まるのは、水野勝成(みずの かつなり)が福山に築城した頃。

歴代藩主の奨励により、福山のまちでは音楽が親しまれていました。

江戸後期から明治期にかけて活躍した琴の名手が、葛原勾当(くずはら こうとう)です。

京都で学んだ勾当が、備後地域を中心に琴を教え広めていったため、福山では琴を愛する人が増え、琴の製造も盛んになりました。

葛原勾当の孫にあたる童謡詩人の葛原しげるとともに活動したのが、琴の演奏家であり作曲家でもある宮城道雄(みやぎ みちお)。

新春には必ずどこかで耳にする雅やかな琴の名曲「春の海」は、瀬戸内海をイメージして宮城が昭和4年に作曲したものです。

昭和40年代に製造された琴は年間約30,000面。福山市内には500人ほどの琴職人がいたといわれています。

楽器としての素晴らしさはもちろん、装飾や仕上げの美しさも認められた福山琴は、昭和60年に楽器として唯一、経済産業大臣指定の「伝統工芸品」の指定を受けました。

そんな福山琴が、危機を迎えつつあります。

琴を弾く人が減ったのです。

琴を嫁入り道具とする人も、今では珍しくなりました。

生産数は最盛期の10分の1以下になったといわれています。

そのうえ、琴職人の多くは60代以上で後継者がいない現状です。

この先、福山琴を残すために、まずは多くの人に福山琴を知ってもらいたい、そして応援してもらいたいと、伊藤さんは考えました。

NFTを付けて販売予定

福山琴を応援するため、雅音にはNFTを付与しての販売も検討中です。

雅音全体像

NFTとは?

NFT(Non-Fungible Token)とは、「代替できないデジタルデータ」の意味です。

従来、デジタルデータのコピーや改ざんは、簡単にできました。

それを大きく変えた技術が「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーンは、仮想通貨のひとつであるビットコインの基幹技術として開発されました。

ブロックチェーン技術と、アートや音楽などのデジタルデータを組み合わせたものがNFTです。

唯一無二のオリジナル作品として価値がつけられるようになり、2021年からは急速にNFTアートの取引が活発になります。

もっとも高額なNFTアートとして知られるのは、Beeple(ビープル)の「Everydays – The First 5000 Days」で、その額はなんと79億円!

NFTは、資産としても注目されるようになってきているのです。

数年後には多くの人が気軽にNFTを利用するようになる可能性があります。

機能的価値ではなく情緒的価値

スマホを立てたところ

「雅音を普通にただ売っても、10体売れるかどうか、というところでしょう。

お得だから買うとか、機能が優れているから買うとか、そういったものではないと思うんですよ」

と、伊藤さん。

「琴も雅音も、日常生活に必要なものではありません。

だからこそ、琴業界を応援したいとか、ちょっとかっこいいものにお金を使いたいとか、社会貢献につなげたいとか、そんな情緒的な価値を商品にしました。

今回、雅音を販売する際にシリアルナンバー入りのNFTアートを希望者には無償で提供します。

雅音単体の価値としてではなく、琴業界への応援や寄付を含めて、30,000円くらいでの販売を予定しています。

雅音を買ってくれた人に、おまけとしてNFTを渡すようにしようと考えているんですよ」

なぜ、NFTを付与して販売するのでしょうか。

NFTの特徴

NFTには「ウォレット」というお財布があります。

このお財布の中身はオープンになっていて「この人がどんなNFTを所有しているか?」を誰でも見ることが可能です。

投機性の高いNFTが注目されているように感じますが、それだけではなくプロジェクトや個人などを支援するNFTも存在します。

雅音プロジェクトが発行するNFTは支援系のNFT。

雅音のNFTを所持する人は、『福山琴を応援する人の証』にもなるのです。

「雅音には、さまざまなストーリーがあります。

100パーセント琴の端材でできている点、廃棄されるはずだった材料を利用した持続可能性、伝統工芸士が手掛けた工芸品的な価値

琴職人が激減している今、日本の文化である琴を守りたい、琴業界を応援したい、そんな気持ちに共感してもらえたらいいなと思っています」

実際の販売は2023年3月ころからになりそうです。

雅音の販売について

2023年1月現在、国内のクラウドファンディングとECサイトで販売予定です。

販売時期や販売方法など、詳しくは伊藤さんのFacebookを見てください。

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福山琴と日本の文化を守りたい

伊藤さんと雅音

筆者自身は他県の出身ですが、小学校で琴を弾く機会がありました。

そのとき一生懸命に稽古した「さくらさくら」を、まだ指が覚えています。

文化を守ることは、そんな小さな思い出も一緒に守ることなのかもしれません。

まずは福山琴に目を向けてほしい

このスマホスピーカーには、大きな思いが込められています。

有限会社福山サービスセンターイトウのデータ

福山サービスセンターitoh
団体名有限会社福山サービスセンターイトウ
業種旅行サービス手配業
代表者名伊藤匡
設立年1982年
住所広島県福山市三吉町南1-11-30
電話番号084-923-2022
営業時間受付時間 平日午前9時30分~午後6時
休業日土、日、祝日
ホームページ有限会社福山サービスセンターイトウ
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山口 ちゆき

山口 ちゆき

Webライター。夫と息子2人の4人家族。毎日どんなごはんを食べようかと考えている食いしんぼうです。お菓子作りと読書が好き。

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