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「尾道ブルワリー」の佐々木真人さん・真理さんへインタビュー
地のものを使ったビール造りがしたい。会社員を辞めて尾道へ
尾道に移住されるまではどちらにお住まいでしたか?
真人(敬称略)
千葉県です。私も真理も関東を転々としつつも、ほとんどずっと千葉で育ちましたね。
転勤があったので3年ほど関西に住んでいた時期もありましたが、自宅も千葉で購入しました。
移住先は、ピンポイントで尾道を希望されていたんですか?
真人
それが実は、最初は決めていませんでした。
ビール醸造の前例があまりない地域がよかったので、それに当てはまる候補地を10か所にしぼり、東京・有楽町にある移住相談窓口に通いつつ一地域ずつ回っていました。
真理(敬称略)
尾道も候補には入っていたんです。
でも、とある地域のフェアに参加した帰りに偶然広島県フェアの告知を見つけて。
真人
それを見ていなかったら、先に別の地域の窓口に行っていたかもしれません。
広島県の地域コーディネーターの人がビール造りにものすごく興味を持ってくれて今に至ります。
尾道に限らず、地のものを使ったビールが造りたいというコンセプトは同じだったんですか?
真理
地域活性化に興味があったので、副原料に「地のものを使いたい」というのは最初から考えていましたね。
真人
地のものといっても、果たして移住先の商材がビールに合うのかどうかは未知数でした。
本当にたまたま、尾道だったから今いろいろなビールの構想がありますし、尾道のお店とのコラボレーションも実現できています。
移住されるまでおふたりとも会社員だったそうですが、ジョブチェンジしてビール造りをしようと思ったのはいつ頃ですか?
真理
ビール造りをしようと思ったのは2018年ごろ、夫婦で熊野古道を旅行したのがきっかけでした。
旅先で出会った女性は東京からの移住者で、カフェの運営を通じて熊野野菜を盛り上げようと取り組んでいました。
その女性の話を聞き、何歳になってもやりたいことを始めるには遅くないし、自分たちの手で何かをつくることで地域の活性化にも貢献できたら最高じゃない?と思ったことが今につながっていますね。
ビールにしたのは、単純に私が好きだったからです!
長年勤めてきた会社を辞めることについて、不安はありませんでしたか?
真理
会社勤めで真人がたびたび体調を崩している姿を見てきたので、私はずっと「働き方を変えられたらいいのにな」と思っていました。
それは転職とかではなく、ふたりで喫茶店なりお団子屋さんなり、なんでもいいから自営業的なものができないかとイメージしていましたね。
また、私は旅行会社で旅行のパンフレット制作をしていて、料金や地名など絶対に間違えてはいけないような細かい数字や文字をずっとデスクでにらめっこしていることに、年齢的な限界を感じていた時期でした。
そんな背景も後押しとなって、どこか好きな土地でビール造りがしたいという方向に舵を切れたのだと思います。
退職、移住、新しい自営業……ご家族や周囲の反応はいかがでしたか?
真人
もちろん驚かれましたが、息子をはじめ大勢の人に「がんばれ!」と送り出してもらいました。
実は、私の親族にだけは難色を示されました。
というのも、うちの親族は自営業の苦労を知っているんです。
経営リスクについても現実的にわかっていたので、かなり心配はかけてしまいましたね。
ゼロからのビール造りがスタート!第2の人生が始まる
おふたりはどこでビール造りを学ばれたんですか?
真人
最初に、栃木にある「栃木マイクロブルワリー」の門を叩いて、1か月間修業しに行きました。
ウィークリーマンションに住んで、師匠と私たち夫婦のマンツーマンで毎日のように修業して、ビール造りがなんたるかをがっつりと叩き込まれました。
真理
「栃木マイクロブルワリー」のことは、東京・錦糸町にあるマイクロブルワリー「宮田麦酒(ミヤタビール)」で知りました。
私は「宮田麦酒」のゴールデンエールが大好きで、会社員時代、自分へのご褒美にと華金(はなきん)のたびに通っていて、宮田さんはその栃木マイクロブルワリーでビール造りを習ったのだとある日小耳に挟んで(笑)
それで栃木マイクロブルワリーに師事することになりました。
そこでは、ビール造りのイロハはもちろん、ビール造りを生業(なりわい)にしていくにあたっての心構え、経営の仕方に至るまでを全部教えてもらいました。
私たちが醸造免許を取得するにあたり、教える側としても真摯(しんし)に向き合ってくださり、本当に感謝しています。
コロナ禍での開業に不安はありませんでしたか?
真理
不安がなかったといったら嘘になります。
でも、私たちにとっては「第2の人生が始まるぞ!」ということがビッグイベントで。
年齢的にも足踏みしている暇はなくどんどん前に進むしかなかったので、不安よりも前へ前へという気持ちのほうが強かったですね。
見知らぬ土地で仲間を見つけるのは大変そうですが、施工者やデザイナーにはどうやって出会われたんですか?
真人
偶然です!偶然の出会いが連鎖して、今につながっています。
真理
お店の物件が見つかったのも偶然でしたし、施工会社もデザイナーさんもみんな、お店の物件が決まったらあれよあれよという間に見つかって。
最初は、千葉から尾道に通っていたときによく通っていたお店の店主に物件の大家さんを紹介していただいたんです。
そして大家さんはたまたまクラフトビール屋さんのようなお店が入ったらいいのにと考えていたらしく、施工会社、デザイナーさんへと次々につなげてくださいました。
本当に、気付いたら仲間に囲まれていた。これこそがご縁なんだなぁと感じました。
ビール造りやお店作りで絶対にこだわろうと思ったポイントはありますか?
真人
ビールもおつまみも尾道ゆかりのものを使おうというこだわりは一番にありつつ、自分たちが楽しもうっていう思いも大切にして日々やっています。
真理
「尾道」という名を借りてやらせてもらっているので、私たちのビールで尾道に恩返しがしたいというのは常に考えています。
自分たちのブルワリーをオープンさせてうれしかったことは?
真人
毎回たくさんの人と接して話をして、「おいしい」とお客様に喜んでもらえるのがうれしいですね。
真理
そうですね。なにせ自分たちでつくったものを売るのが人生で初めてだったので、肯定的な感想をもらえると受け入れられているような気がしてやっぱりうれしいですよね。
逆にお店をオープンして大変だったことはありますか?
真人
ビール造りに関しては、まだまだ苦労が絶えません。
修業のときよりもはるかに時間がかかるし、清掃も大変です。
真理
清掃はビール造りには欠かせない工程で、大変なのはわかっていたけれどやっぱり大変!
ビールってアルコール度数がそんなに高くないので、こまめに清掃しないと雑菌が繁殖しやすいんです。
真人
あと、夫婦でよく意見がぶつかるよね。
真理
確かに夫婦でずっと一緒に働くのが初めてだったので、大変さを噛み締めていますね(笑)
今後はどういったビールを造られていく予定ですか?
真人
2021年7月中旬に尾道市岩子島(いわしじま)のトマトを使ったトマトヴァイツェンの販売を開始します。
これは今回に限った話ではないんですが、こういったコラボレーションでは生産者さんと一緒にビール造りをするので気が引き締まりますね。
夢にトマトが出てくるくらいトマトのことを考えていました。
真理
自分たちで造るぶんには失敗してもいいんですけど、協力してくださった人の顔もありますので下手なものは造りたくない、造れないですよね。
そういえば、今回のトマトヴァイツェンを造るにあたって、夫婦間で味をどうするかの攻防戦がありました(笑)
発酵していざ出来上がったものがスッキリとした味わいで、私はいいなと思ったんですが、真人は「トマト感がない」と言い出して。
真人
何日か話し合いを重ねて、折衷案としてトマト果汁を少ーしだけ足すことにしました。
真理
今後考えている副原料候補は、デラウェア、いちじく、分葱(わけぎ)などです。
尾道ブルワリーの入り口にあるレモネード屋さん「ホックスタンド (HOK STAND)」とのコラボレーションも鋭意研究中で、もう少ししたらうちのビールをレモネードで割ったラドラーも出来上がる予定です。
楽しみにしていてくださいね。
人と地域のつながりが生まれるような場所を目指して
尾道に移住してきて心境に変化はありましたか?
真人
会社員時代よりも、毎日が刺激的で楽しいです。
真理
そうですね。会社員のときって会社の人とは喋るんだけど、内容は仕事のことだったり、会社のなかで完結する狭いコミュニティでの話しかしなかったので、視野が狭かったなと思います。
移住してからの生活では、人とのつながりが地域規模でものすごく広がった感じがするんです。
前向きで朗らかな人たちと接することが多いから、毎日すごく刺激がありますね。
真人
とはいえ、一方で会社員時代と比べて気楽ではなくなりました。
自分がちゃんとしないと、という意味では会社を潰さないこと、生き方に至るまでをより深く考えるようになりましたね。
今後「尾道ブルワリー」をどんな場所にしていきたいですか?
真理
コロナ禍でなかなか難しいとは思いますが、来ていただいた観光客の「尾道の思い出のひとつ」になれたらいいなと思います。
もちろん地元の人にも来てほしくて、「おらがビール!」と思ってもらえるような存在になりたいです。
今お店をやっていてうれしいのが、地元の人と観光客の間で自然と話が盛り上がってつながりが生まれていくこと。
これからも人と人が自然とつながれるような、そういう場所であり続けたいです。
これからどんなビールを作っていきたいですか?
真人
尾道にはまだまだすばらしい商材があるので、それらを活かした、おいしくて飲みやすいビールを造っていきたいです。
真理
私は、地元の人があっと驚くようなビールが造りたいです。
他県から移住して来た私たちの目線を活かすことで、副原料やネーミング、ビジュアルにもこだわって、地元の人が自慢したくなるようなビールを造れたらいいなと思っています。
おわりに
尾道ゆかりのものにこだわったクラフトビールが飲める「尾道ブルワリー」。
定番「しまなみゴールデンエール」にはみかん、一番人気の「尾道エール」はレモン、「因島ホワイトエール」は八朔(はっさく)……何を飲んでも尾道らしさを感じることができるクラフトビール醸造所でした。
佐々木さんご夫妻が人と人との縁に導かれてここまできたように、これからも「尾道ブルワリー」では人のつながりが脈々と築かれていくのだと感じます。
観光の思い出に、自分へのご褒美に、大切な人への贈り物に。
“尾道”が詰まったクラフトビールを、ぜひ選んでみてはいかがでしょうか。
尾道ブルワリーのデータ
名前 | 尾道ブルワリー |
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住所 | 広島県尾道市久保1-2-24 |
電話番号 | 0848-38-2710 |
駐車場 | なし 店前に有料パーキング有り |
営業時間 | 午後1時〜午後7時 |
定休日 | 月、火、水、木 定休日が祝日だった場合は営業 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 不可 予約は原則不可 団体の場合等は事前に店舗へ相談してください |
座席 | ・基本的にスタンディングでカウンターに4席あり ・収容人数はカウンター約7名、小スペース約7名 |
タバコ | 完全禁煙 |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | 尾道ブルワリー |