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多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」~ 2024年8月、福山で中高生たちは何を感じる?

多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」~ 2024年8月、福山で中高生たちは何を感じる?

知っとこ / 2024.04.15

一人ひとり、人と違うのは当たり前です。その違いはマイナスではありません。みんなの得意不得意を持ち寄れば、素晴らしいものを創造できます。それを中高生たちに体験してもらうために用いるツールが、芸術です」
公益財団法人国際文化フォーラムの長江春子(ながえ はるこ)さんは、「パフォーマンス合宿」についてそう話します。

2022年に広島県安芸高田市で、2023年に呉市で、中高生のための多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」が実施され、大きな成果をあげました。

2024年8月には福山市で開催の予定です。4月15日から参加者を募集する「パフォーマンス合宿」について、詳しく紹介します。

記載されている内容は、2024年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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パフォーマンス合宿とは?

「パフォーマンス合宿」とは?

多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」は、「多文化×芸術」をコンセプトに、日本で暮らしている多言語・多文化につながりや関心をもつ中高生等が、ありのままの自分を表現したり多様な人と関わったりする喜びを体感し、自信を深めていけるように、演劇やダンスを取り入れたさまざまな表現活動を通じて交流するプログラムです。3泊4日程度の合宿生活を送りながら、自分の個性を再確認して受け入れ、他者の個性を発見して認め、みんなで協力して創り上げたパフォーマンス作品を最終日に発表します。

国際文化フォーラム パフォーマンス合宿公式ホームページより

グローバル社会を生きる子どもたちに必要なものは、人と対話し、共感したりときに違和感も体験したりしながら、力を合わせて新しい何かを創造する力です。公益財団法人国際文化フォーラム(以下、TJF)は、日本と海外の子どもたちがお互いの言葉や文化を学び、交流するためのさまざまな場を作ってきました。

2018年からTJFが始めたプログラムが、「芸術」を通して、多様なことばと文化につながりや興味・関心を持つ中高生たちが協力・協働・共創するパフォーマンス合宿(以下、PCAMP)」です。

2018年3月に東京で初めて実施したPCAMPには、日本、アメリカ、韓国、台湾など12か国につながりを持つ日本在住の中高生30名が参加。演劇とダンスを通して交流しました。

2018年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2018年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

翌2019年、東京で2回目のPCAMPを実施します。このときも、日本人だけではなく海外につながりを持つ中高生が全国各地から集まりました。

2019年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2019年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

2020年は新型コロナウイルス感染症の流行により、対面でのPCAMPは中止となりました。替わりに実施したのが、オンラインでのPCAMPです。

日本在住の中高生だけではなく、海外に暮らす中高生たちも参加して、身体表現、造形表現、音やリズムをテーマにしたワークショップをおこない、作品を作り上げました。

2020年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2020年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

2020年から2023年は合計5回のオンラインPCAMPで、国内外の中高生たちが交流したのです。

2021年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2021年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

広島でPCAMPを開催

2022年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2022年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

2022年8月にPCAMPが開催された場所は、広島県安芸高田市でした。なぜ、東京ではなく広島県で開催されることになったのでしょうか。そのきっかけとなったのは、安芸高田市の高校生Mくんでした。
2019年のPCAMPに参加したMくんのパフォーマンスを見た安芸高田市国際交流協会の人々は、PCAMPの素晴らしさに感動し、TJFを訪れました。

それは、PCAMPを開催するTJFでも東京以外の地域にも拠点を作れないか、と模索していたときでした。日本に慣れていない海外ルーツの中高生たちが、各地から東京まで来てプログラムに参加するのは簡単ではないからです。

2022年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2022年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

安芸高田市には参加者たちがみんなで泊まれる施設も、ワークショップや発表会をおこなうための施設もあります。
地域の人々が地域の若者たちに向ける熱い思いとTJFの思いとが合致し、安芸高田市でのPCAMP開催が決まりました。

しかし、新型コロナウイルス感染症のために中断を余儀なくされます。
2022年、感染症対策をしながらようやく再開した対面でのPCAMPには、安芸高田市だけでなく、東広島や瀬戸内の島も含め28名の中高生が集まりました。彼らのバックグラウンドは、日本、中国、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ブラジルなどさまざまです。

2022年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2022年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

初日は全身を使ったゲームでアイスブレイク。
2日めはチームごとにダンスを作り、与えられたテーマをどう表現するかを考えていきました。夜には神楽鑑賞や温泉のお楽しみも。
3日めにはリハーサルをおこない、作品をブラッシュアップします。

そして迎えた4日めの発表会。そこには、仲間たちと助け合って自分たちの思いを表現する参加者たちの姿がありました。

2022年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2022年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

2023年には呉市でPCAMPを開催し、広島県内での運営のノウハウや、サポートする人材などの蓄積ができてきました。TJFはこれを「広島モデル」と呼んでいます。

2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

PCAMP2023ダイジェスト動画

広島県で3回めとなる2024年の開催地は、福山市です。

チラシ表
2024ひろしまPCAMP参加者募集
  • 募集期間:2024年4月15日(月)~2024年7月7日(日)
  • 実施期間:2024年8月19日(月)~22日(木)
  • 会場  :ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
  • 宿泊  :福山市内の施設
  • 募集対象:広島県および近隣地域の中高生など
  • 募集人数:30名
  • 参加費 :5,000円(食事・宿泊費込)
  • 参加申し込み:申し込みフォームより

他の地域でも「広島モデル」に関心が高まっています。2024年にはついに2か所めとなる富山県富山市での開催が決まりました。

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PCAMPを通して起きた変化

最終日におこなわれる発表会を観覧する保護者や先生、一般市民のなかには、涙を流す人が大勢います。作り込まれたのではなく、ありのままの自分たちを表現する中高生たちの姿が、人の心を打つのです。

2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

2023年のPCAMPに参加した中高生たちは、何を感じたのでしょうか。

参加者の感想
  • 自分を変えなきゃいけないと思っていたけど、この合宿に参加してみて、自分はこのままで良いんだって気づきました。
  • 人と関わるのが苦手だったけど、みんなと協力してパフォーマンスを作り上げていくなかで、自信がつきました
  • 今まで知らなかった文化や価値観に触れられて、自分の視野が広がりました
  • 進路はひとつしかないと思っていました。しかし、参加してみて、いろいろな可能性がありそう、いろいろなことができそうだと気が付きました。
  • チームでの話し合いがうまくいかなかったおかげで、人間は根本的におもしろいものだとわかりました。人間に関わる仕事ができるように進路を決めたいと思います。

PCAMPが終わった後も、中高生たちはSNSでつながって一緒にどこかへ出かけたり、ミニ同窓会を開いたりしています。学校を越え、地域に仲間ができました。
また、前回のPCAMPの参加者が次の回ではサポーターとして加わって、参加者たちのコミュニケーションを助けます。

運営をサポートする地域のかたたちとのつながりも生まれました。中高生たちが地域のボランティア活動に参加したり、呉市の国際交流フェスタに加わったりと、地域とともに進み始めています。

ファシリテーターたちの役割

PCAMPをサポートする大人たちもいます。
メインファシリテーターは、この3人です。

  • 舞台俳優:森永明日夏(もりなが あすか)さん(広島出身・ニューヨーク在住)
  • 演出家・俳優:柏木俊彦(かしわぎ としひこ)さん
  • 振付家・ダンサー:田畑真希(たばた まき)さん

広島で活躍する俳優もサブファシリテーターとして参加しています。

  • 坂田光平(さかた こうへい)さん
  • 江島慶俊(えじま けいしゅん)さん

中高生たちは、プログラムに従って内面を見つめ相手を理解していき、自分たちが表現したいことを言葉や形にします。

2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

決まったセリフやダンスがあるわけではなく自分たちで作っていくため、セリフや動きが変わることもよくあります。
中高生たちが困ったときにアドバイスを出し、伴走するのがファシリテーターたちの役割です。

「PCAMPでは『指導』という言葉を使わないようにしています。演技指導とかダンス指導とか、こうしなさいとかこうすればもっと見栄えが良くなるとかは言いません。決定権を持っているのは参加者たちです。ですから、演技やダンスを教わりたいと思って参加するのであれば、PCAMPは期待外れかもしれません」

と、公益財団法人国際文化フォーラム PCAMP総括担当の長江さんは言いました。

2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

「私たちが理想としているのは、混ざり合うことです。日本生まれ日本育ちで海外にルーツがある子もいれば、日本に来て間もない子もいますし、さまざまな生きづらさを抱えている日本人もいます。人は多様です。このグラデーションのなかで新しい価値観や新しい気づき、自分への理解と他者への理解、違いを越えて創造するプロセスを味わってもらうのが、PCAMPです」

2024年のPCAMPには、2023年に福山へUターンした俳優の小林晃子(こばやし あきこ)さんも、スタッフとして参加します。小林さんは福山での経験や人脈を生かし、福山のPCAMPをさまざまな角度からサポート中です。

演劇パフォーマンス団体「リーディング・ファクトリー」代表 小林晃子さん(写真提供:小林晃子さん)
演劇パフォーマンス団体「リーディング・ファクトリー」代表 小林晃子さん(写真提供:小林晃子さん)

福山で演劇をやるからには、自分がやるだけではなく福山の演劇人口を増やしたいし、これからの世代につなげていきたいと思っています。
PCAMPのお話は、聞けば聞くほど興味が湧きました。これまで自分が知らなかった国際的な取り組みです。ファシリテーターたちからも学びたいですね」
と小林さん。

「福山ではまだ演劇に親しむ人が少なく、イベントの情報を知らない人も多い」と語る小林さんは、PCAMPという非常におもしろいものが福山で開催されることを、まずは知ってほしいそうです。

「海外ルーツの子どもたちは、情報をキャッチするのが難しいこともあります。よろしかったら、普段関わっているNPOの人や学校の先生は『福山でおもしろいことをやるよ』と、彼らの背中を押してください。発表会に立ち寄っていただくのも大歓迎です」
長江さんはそう締めくくりました。

チラシ裏面

発表会の見学申込みはこちらからできます。

▼小林晃子さんが出演した舞台の記事はこちら

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福山でのPCAMPに期待

2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)
2023年のPCAMPのようす(写真提供:国際文化フォーラム)

多文化共生社会の実現に向け、中高生たちが多様な文化や価値観を共有し、自己肯定感を向上させることを目的としたPCAMP。
2年間の広島県内での実施経験をふまえ、2024年のPCAMPはさらに充実したものとなるでしょう。

参加する人、2024年8月22日の発表会を見に来てくれる人を、ただいま募集中です。
中高生たちはPCAMPで何を見つけ、何を創り出すのでしょうか。考えるだけでワクワクしてきます。

ひろしまPCAMP2024のデータ

名前ひろしまPCAMP2024
期日実施期間 2024年8月19日(月)~22日(木)
22日はパフォーマンス発表会 
開場 午前10時30分
開演 午前11時
場所福山芸術文化ホール リーデンローズ(福山市松浜町2-1-10)
参加費用(税込)PCAMP参加費 5,000円(食事・宿泊費込)
ホームページ多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」
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山口 ちゆき

山口 ちゆき

Webライター。夫と息子2人の4人家族。毎日どんなごはんを食べようかと考えている食いしんぼうです。お菓子作りと読書が好き。

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