一般社団法人「海と空キネマ」は、福山市に拠点を置きながら、元シブがき隊の布川敏和(ふかわ としかず)さんや高畑淳子(たかはた あつこ)さん、竹下景子(たけした けいこ)さんといった有名俳優を起用し、全国上映する映画を制作しています。
代表を務めるとめぞうさんは、新たに「こどもホスピス」をテーマにした映画制作に挑戦しています。
映画「神さま待って!お花が咲くから」で、地⽅にいながら有名な俳優を起⽤して制作できた理由や、実話を映画化するに⾄った経緯、次回作のテーマを「こどもホスピス」にした理由や想いなどについて、とめぞうさんに話を聞きました。
記載されている内容は、2026年1月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
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目次
笑いと涙に包まれた実話映画 「神さま待って!お花が咲くから」

2025年(令和7年)11⽉、筆者は「海と空キネマ」が制作した映画「神さま待って!お花が咲くから」を、神⽯⾼原町の地域上映会で観てきました。
主⼈公は福⼭市に⽣まれ育ち、5歳から⼩児がんを患いながらも「ファンタジー」を合⾔葉に周囲を明るく変えていった森上翔華(もりかみ しょうか)ちゃんという実在の少⼥です。
12年という短い⽣涯を⽣き切った難病の少⼥を描きながらも、映画は終始明るく前向きで、会場は笑い声とすすり泣きの両⽅に包まれていました。
とめぞうさんは、ものまねタレントや噺(はなし)家などの経歴を持つエンターテイナー。重くなりがちな内容がこれほど明るく楽しく演出されていたことにも合点がいきました。
神⽯⾼原町による地域上映会のため1⽇だけの上映。詳しいあらすじは「神さま待って!お花が咲くから」公式ホームページで確認してください。
海と空キネマ代表のとめぞうさんにインタビュー

とめぞうさんは現在、福山市に住んでいます。映画制作には不利かもしれませんが、海と山と空が近く、気候が穏やかで人も温かいこの地域が大好きで、法人名も「海と空キネマ」にしたそうです。
映像制作の現場で技術とつながりを得る
まずは「とめぞう」という名前の由来を教えてください
とめぞう(敬称略)
僕は広島県三原市出身で、東京の映画学校を卒業後、林家正蔵師匠(元・林家こぶ平)の公認ものまねタレントや俳優などの活動をしていました。
「とめぞう」の芸名は林家正蔵師匠にあいさつに行った際に、「正蔵の正の字から一本消して『止蔵(とめぞう)』にしたら?」と言われたのがきっかけで、「林家止蔵」→「とめぞう」となったんです。
映画などの映像制作の仕事をするようになったのは、いつからですか?
とめぞう
タレント活動だけでは生活できなかったため、制作現場でアルバイトをさせてもらっているうちに、脚本や演出、制作主任、プロデューサーなどを任されるようになりました。
裏方の仕事を経験したことで映像制作全般を知ることができ、現場でたくさんの俳優と知り合えたことで、出演のお願いもできたんです。
直筆の長い手紙で出演依頼
具体的にはどのような方法で出演を依頼したのでしょう?
とめぞう
一人ひとりに便箋3~4枚の手書きの手紙を書きました。スケジュールが合わずに断られることもありましたが、そういう人もたまたまポカっとスケジュールに空きが出ることがあり、出演してもらうことができました。
映画の内容に共感してもらえたことも大きいですね。


オリジナル主題歌『はなまる』を唄われた手嶌葵(てしま あおい)さんにも手紙で依頼されたんですか?
とめぞう
はい、そうです。じつはこの『はなまる』が今度、シングルCDとして発売されることになりました。2月に公開される浜辺美波(はまべ みなみ)&目黒蓮(めぐろ れん)主演の映画「ほどなく、お別れです」の主題歌「アメージング・グレイス」のカップリング曲に選ばれたんです。翔華ちゃんの『ファンタジー』の力かもしれません。
ラジオのゲストに翔華ちゃんの親友を招いたことが映画化のきっかけ
福山市で小児がんの少女の実話を映画化することになった経緯を教えてください
とめぞう
僕のFMふくやまの番組に、2018年スタースカウト総選挙でグランプリに選ばれた夢空(むく)ちゃん(当時12才)を招いたことが始まりでした。

偶然にも彼女の親友だった翔華ちゃんが「私もラジオに出たい」と言っていたのに、僕は「またの機会に」と流してしまった。その2か月後に彼女が亡くなったと知り、激しく後悔したんです。
すぐに番組に翔華ちゃんのご両親を招き、生前の話を聞きました。翔華ちゃんが難病と闘いながらも、いかに周囲の人々を元気づけていたかを聞いて、生放送中にもかかわらず、涙が止まりませんでした。
この感動を多くの人に伝えたくて、放送終了後すぐにご両親に映画化を申し出たところ、ご家族は「翔華が生きていた証にぜひ」と了承してくださったんです。
そこからご両親との交流が始まったのですね
とめぞう
ご家族は撮影やプロモーションにも協力的で、東京、長野、岡山など、各地でおこなわれる初日舞台挨拶にも一緒に足を運んでくださっています。
この映画を作ったことが、ご家族にとって心の空白を埋める一つになったのであればうれしいなと思っています。
翔華ちゃんのポジティブ思考が困難を乗り越える原動力に
制作にあたっての苦労はありましたか?
とめぞう
撮影初日にスタッフから新型コロナウイルス感染症の陽性者が出て、10日間の予定がほぼキャンセルになったときは落ち込みました。広島で撮影する予定だったので、スケジュールの再調整が絶望的だったんです。
でも布川さんや渡辺さんが「翔華ちゃんなら『なんとかなる』って笑ったんじゃない?」と励ましてくれたんです。

その後も数々のトラブルがありましたが、「翔華ちゃんならきっと笑顔で立ち向かったはず」と、彼女のポジティブさに支えられて乗り越えることができました。
僕を含め多くの人をポジティブ思考に変えてくれた翔華ちゃんの素晴らしい生き様を、ぜひ多くの人に知ってほしいです。

自主上映会を募集中
現在、この映画はどこで観られるのでしょうか?
とめぞう
この映画は2024年に公開され、今は上映していないんです。ただ、より多くのかたに見ていただきたいので、「海と空キネマ」公式ホームページでは自主上映会の申し込みを募集しています。小さな会場なら5万円くらいから対応可能ですので、学校の道徳教育や子ども会の上映会など、ぜひ、お気軽にご相談ください。
自主上映会についての問い合わせはこちらから

日本に2か所しかない「こどもホスピス」を増やしたい
次回作のテーマとして「こどもホスピス」を選ばれた経緯を教えてください
とめぞう
前作のプロモーション中、小児がんで娘さんを亡くされた男性が「娘をこどもホスピスに行かせたかったけれど、横浜と大阪の2か所しかなく、娘には大阪まで移動する体力がなかった。もし広島に施設があれば、娘は病院の天井だけを見て過ごす人生ではなかったかもしれない」と話されました。その切実な想いに触れ、次回作のテーマに据えることを決めました。
こどもホスピスとはどのような施設なのでしょう?
とめぞう
「ホスピス」という言葉には終末期を過ごす場所のようなイメージもありますが、語源は「ホスピタリティ(温かく手を差し伸べる場所)」。余命宣告された子どもが残り少ない時間を治療だけでなく、家族と笑顔で過ごせるように全力でサポートする明るい場所なんです。
映画化で施設が増えるのでしょうか?
とめぞう
施設が増えない理由の一つに、年間約1億円の運営費のほとんどが寄付で賄われているという現状があります。小児がんは希少疾患のため国の予算などが付きにくいんです。
映画を通じて認知度を高めることで寄付の分母が増え、全国に施設が増えることを願っています。
2024年のクラウドファンディングに続き、今後も協賛や出資を募りながら制作を進めていくつもりです。
次回作では、どのような物語を通してメッセージを伝えたいですか?
とめぞう
次回作は、こどもホスピスを舞台に、ボランティアとして関わる高校生の成長物語を描く予定です。一人の若者が活動を通じて、命の大切さ、家族の絆、そして笑顔の重要性を学んでいく姿を描きたい。そこを通して、こどもホスピスの可能性や、生き方の多様性を皆さんに伝えていければと思っています。
「幸福の王子」が活動の原点
映像制作だけでなく介護事業の運営など、幅広く活動されていますが、その根底にはどのような思いがあるのでしょうか?
とめぞう
好きな言葉は「滅私奉公(めっしほうこう)」なんです。前作では制作資金のほとんどを自宅の土地・建物を担保にお金を借りて工面し、現在も返済中です。
幼い頃に読んだ『幸福の王子』の絵本が、僕の活動のすべての原点になっています。自分の身を削ってでも人々のために尽くす王子の姿を見て、「人間はこうやって生きていかなきゃいけない」と強く心に刻まれました。
あの日『幸福の王子』で感じた気持ちを、今度は僕が作る映画を通じて、子どもたちに届けていきたい。それが僕の今の使命だと思っています。

取材を終えて:一本の映画がつなぐ「温かな手」の循環
インタビューを通じて感じたのは、とめぞうさんの「人を想う力」の強さです。
一つの後悔をきっかけに、手書きの手紙で名優たちの心を動かし、私費を投じて実話を映画へと昇華させたとめぞうさんは、「こどもホスピス」という新たな希望の光を全国へ届けようとしています。
重いテーマを扱いながらも、彼の作る作品が明るさに満ちているのは、彼自身が翔華ちゃんから受け取った「ファンタジー(前向きな心)」を信じているからではないでしょうか。
福山から全国へ。とめぞうさんの挑戦は、多くの人の「温かな手」を必要としています。 こどもホスピスの現状や、そこに込められた願いに触れ、もし共感の灯(ひ)がともったなら、これほど心強いことはありません。
一人ひとりの静かな関心が、いつか全国に「手を差し伸べる場所」を増やす道しるべとなることを願っています。
一般社団法人 海と空キネマのデータ

| 団体名 | 一般社団法人 海と空キネマ |
|---|---|
| 業種 | 映画・演劇・音楽・イベントなどの企画・立案・制作・プロデュース |
| 代表者名 | とめぞう(本名・山下道隆) |
| 設立年 | 2020年 |
| 住所 | 広島県福山市津之郷町津之郷412-45 |
| 電話番号 | 090-4899-1207 |
| ホームページ | 海と空キネマ |





























