岡山県立笠岡商業高等学校の2年生約120名による「SDGsボードゲーム-Get The Point-」が、7月18日(火)の午前10時45分から開催されました。
3時間目と4時間目の「総合的な探究の時間」を使っておこなったボードゲーム。
身近なキーワードとなった持続可能な開発目標=SDGsを理解できるのが「SDGsボードゲーム-Get The Point-」です。
「ボードゲームでSDGsを学ぶ」とは、どのようなものなのでしょうか?
とても気になる笠岡商業「総合的な探究の時間」のようすをレポートします。
記載されている内容は、2023年9月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
SDGsボードゲーム-Get The Point-とは
SDGs(エス・ディ・ジーズ:Sustainable Development Goals)持続可能な開発目標は、MDGs(ミレニアム開発目標)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されました。
2030年までに、世界中で環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を解決し、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
SDGsは、17のゴール・169のターゲットから構成されています。
SDGsという言葉は社会に浸透し身近なものとなってきましたが、なかなか説明しにくいものです。
そのようなSDGsの本質を、ボードゲームで楽しみながら学ぶ取り組みが「SDGsボードゲーム-Get The Point-(ゲット・ザ・ポイント)」。
「SDGsボードゲーム-Get The Point-」は、6種類の資源カードを使ってアイテムを作成し、作成したアイテムごとに設定されているポイント数の合計を競うシンプルなゲームです。
資源カードとアイテム
SDGsボードゲーム-Get The Point-(以下 ゲット・ザ・ポイント)で使う資源カードとアイテムの説明をしましょう。
アイテムを作るために必要な資源カードの種類は6つ。
- 鉄
- レアメタル
- 化石燃料
- 木材
- 動物
- 植物
資源カードを組み合わせてアイテムを作成します。
アイテムは全部で10種類
資源カードを使って作るアイテムは、全部で10種類です。
- 車
- 家
- 家具
- 携帯電話
- バーベキュー
- お寿司
- 本
- サラダ
- シャツ
- 漬物
たとえば、車を作るためには以下の3枚の資源カードを使います。
- 化石燃料
- レアメタル
- 鉄
使った資源カードは、ゴミ箱に移動して使えないようにするため、資源回復ルールなどで復活しない限り再び使用することはできません。
資源回復ルールを意識しながらプレイ
ゲット・ザ・ポイントは、1グループ4人でプレイします。
4人が順番に資源カードを使ってアイテムを作ります。
順番が回ってきた人は、作りたいアイテムに必要な資源カードをすべてボード上からとりゴミ箱に移動します。
そして資源カードを組み合わせて作ったアイテムは自分のものになります。
アイテムを作るために必要な資源カードは、ボード上からゴミ箱に移動するので、一巡すると資源カードが減っている状態に。
減ってばかりだと、すぐに資源は枯渇しアイテムを作れなくなってしまいます。
そこで重要なルールが適用されるのです。
それが「資源回復ルール」。
私たちのまわりにある資源は、再生できるものと再生できないものがあります。
6種類の資源カードも、再生できる資源カードと再生できない資源カードの2グループ。
資源回復ルールにしたがって、一周するごとに再生可能な資源カードは回復(再び使用可能になりボード上に戻す)を繰り返します。
ここがゲット・ザ・ポイントのおもしろいところ&考えるポイントなのです。
再生可能な資源カードは一周するごとに回復するので何回も使えますが、再生可能な資源カードから構成されるアイテムのポイントは高くはありません。
再生できない資源カードを使ったアイテムはポイントが高いのですが、使えるカード数に限りがあるので使うタイミングを考えないといけないのです。
10周が終了した時点でゲーム終了。
ゲット・ザ・ポイントは、作ったアイテムのポイント数の合計で勝負するシンプルなゲームです。
実際に体験してわかったのですが、想像以上に楽しい!
個人戦とチーム戦
ゲット・ザ・ポイントは、グループ内の個人でポイント数を競う個人戦と、チームの合計ポイント数で複数チームと競うチーム戦の2種類体験できます。
個人戦は自分のアイテムポイントの合計をいかに高くするかを考えながらアイテムを作ります。
グループ4人との駆け引きが重要です。
チーム戦は資源回復カードをうまく使いながら、グループのメンバーと話し合いアイテムを作っていく共同作業。
チームの合計ポイント数を高くするためには、どの順番でどのアイテムを作るのかを相談しながら進めなければなりません。
資源カードの使い方を考え、誰がどのアイテムを作るのかが鍵。
個人戦ではなくチーム戦でSDGsの本質が見えてきます。
個人戦は「奪い合い競争する世界」、チーム戦は「持続させるために協力する世界」を舞台にゲームを繰り広げるのです。
公式サイトに書かれてあるこの言葉の意味を理解するためには、実際にゲームを体験するしかありません。
筆者も実際にゲームを体験してみて、この世界観が見えてきました。
ファシリテーターは意識改革研究所の栗濱さん
岡山県立笠岡商業高等学校の2年生約120名でおこなうゲット・ザ・ポイントのファシリテーター(進行役)は、意識改革研究所 代表 栗濱宏行(くりはま ひろゆき)さんです。
栗濱さんは、ゲット・ザ・ポイントの認定ファシリテーターとして、学校や団体向けにボードゲームを使った「SDGsの本質を体感できる+心に突き刺さって意識改革につながる」ワークショップを開いています。
笠岡商業2年生SDGsボードゲーム-Get The Point-スタート
岡山県立笠岡商業高等学校で、令和5年7月18日に開催されたゲット・ザ・ポイントのようすをレポートします。
自己紹介タイム
ボードゲームを始める前に、各チームのメンバー同士の自己紹介。
リラックスタイムですね。
以下の項目を1人1分で話します。
- ニックネーム
- 居住地
- 今の気持ち
- 今日期待すること など
約120名なので、クラスが違えば話したことがない場合もあるでしょう。
けっこう盛り上がっていましたよ、自己紹介タイム。
ゲット・ザ・ポイントの準備
自己紹介が終わったら、ゲット・ザ・ポイントを始める準備です。
当日は、事前にゲット・ザ・ポイントについて学習した2年生の生徒数人が、ボードゲームの準備などサポートしていました。
各テーブルに用意されたゲット・ザ・ポイントの一式が入ったボックスから資源カードを取り出し、ボード上の指定場所に配置します。
さて、どのようなルールでゲット・ザ・ポイントを進めるのでしょうか。
ゲット・ザ・ポイントのルールを確認
ゲット・ザ・ポイントは「資源を使ってひとつずつアイテムを作っていくゲーム」です。
考えないといけないのは、アイテムの材料がどの資源なのかということ。
「どの資源カードを使うのか」が、このゲームのポイントだからです。
1周ごとに発動される資源回復ルールは、資源回復可能なカードだけに適用されます。
回復できる資源カードは、「木材」「動物」「植物」の3種類。
持続可能な資源です。
1周の最後に、上記3枚の資源カードの数をかぞえます。
残っている枚数の倍の数の資源カードが復活!
ただし復活できる資源カードの上限は8枚です。
ゲームを開始する前にルールの最終確認をします。
個人戦なので、4人のなかで作ったアイテムの合計ポイントが一番多い人が勝ちです!
個人戦スタート!
ルールを確認したところで、個人戦のスタートです。
自分のポイントのことだけを考えてアイテムを作っていけばOK。
初めてゲット・ザ・ポイントをする生徒がほとんどなので、ルールを確認しながら進めます。
アイテムを作るためのボード上に置かれている資源カードを選びます。
アイテムを作るために使った資源カードはゴミ箱に移動して使用済みに。
4人がアイテム作りを順番に繰り返し、10周目がすめば終了です。
このチームの残っている資源カードは「植物」3枚だけですね!
10周を終えた時点でのアイテムポイントを確認し、個人ごとの合計数をシートに書きます。
4人のメンバーのアイテムポイント数をすべて足した合計数を計算したあと、黒板に記入。
個人戦といいながらもチームのポイント合計数を書いた意味は、チーム戦を終えたあとにわかります。
チーム戦スタート!
次はチーム戦です。
個人戦とは違うルールが出てきましたよ。
「10周続けられなかった」
「11周目ができない」
この状態になったら失格となります。
10周を終え、11周目もスタートできる状態にしなければならないので、メンバー全員で考えながらアイテムを作らないと。
突然やってくるクライシスとサステイナブル
順調にアイテムを作っていると突然「クライシス」が起こります。
クライシス(crisis)とは、「危機、難局、重大な局面」のこと。
自然の状況などが変わることで、資源の増減が起こります。
現実世界で考えると、自然災害、異常気象などで植物の生産量が少なくなるなどです。
ゲーム上でも危機が起こります。それも予告なしに!
「異常気象で植物に大ダメージ!植物の残りの枚数の半分+1枚をゴミ箱へ移さなければならない」などの指示通りにしなければなりません。
クライシスが起こると、資源カードの残り枚数に影響する事態になるので、プチパニックになるチームも。
クライシスをなんとかやり過ごしながら進めていると、今度は「サステイナブル」が起こりました!
サステイナブル(sustainable)とは、「持続可能であるさま、維持継続できること」をさします。
クライシスとは反対の条件がゲームに加わります。
たとえば、「植物をエネルギーに利用できるようになった!植物1枚を化石燃料1枚の代わりに使うことができる」など。
ラッキーが舞い込んでくるのです。
サステイナブルの意味が、これで具体的に理解できるようになることでしょう。
クライシスとサステイナブル以外にも、ゲーム中に突然いろいろな事態が起こるので気が抜けません。
ゲームも終盤、資源カードの残りを見ながら高ポイントのアイテムを作るために意見を出し合います。
10周を終えゲーム終了です。
個人戦のときと同じように個人ごとのアイテムポイントをシートに記入し、チームの合計ポイント数を計算します。
チーム戦の合計ポイントを黒板に各チームが記入しました。
個人戦のチーム合計ポイント数とチーム戦の合計ポイント数に違いはあったのでしょうか。
・・・どのチームも同じ傾向で数に違いがあるのです!
この数の違いがゲット・ザ・ポイントの重要な部分。
結果発表
チーム戦をおこなったあとは結果発表です。
アイテムポイント数の合計が一番多かったチームの発表!
優勝チームから一言もらいます。
最後に認定ファシリテーター栗濱さんから「SDGsボードゲーム-Get The Point-(ゲット・ザ・ポイント)」のねらいとSDGsについての話がありました。
個人戦とチーム戦との違いや合計ポイント数の違いなど、ゲット・ザ・ポイントを通じて自然に学んだことについて解説をしてもらいました。
「個人戦といいながらもチームのポイント合計数を書いた意味は、チーム戦を終えたあとにわかります」の回答を知りたいかたは、実際にボードゲームを体験すると「なるほどなぁ」と思うことでしょう。
でも気になりますよね。少しだけ解説しましょう。
- 個人戦=「奪い合い競争する世界」=自分のアイテムポイント数を中心に考える
- チーム戦=「持続させるために協力する世界」=チーム全体のアイテムポイント数を考える
資源カードを使いはたすことなくゲームを続け、チームのトータルポイントをどうしたら上げることができるかを考えながら進めていくチーム戦のほうが個人戦よりもポイント数が高くなるのです。
奪い合い競争する世界よりも持続させるために協力する世界のほうがサステイナブルであることが、このボードゲームを体験することで実感できます。
実際にゲット・ザ・ポイントを体験して「なるほどなぁ」を感じ取ってください。
栗濱さんの話のあとアンケートを書き、ゲット・ザ・ポイントを使った総合的な探究の時間が終了しました。
ボードゲームでSDGsを学ぶことは教育現場にこそ必要
岡山県立笠岡商業高等学校の2年生約120名の「SDGsボードゲーム-Get The Point-」は圧巻でした。
最初はどうすればよいのだろうと戸惑いのなかスタートした生徒たちも、ゲームが進んでいくと真剣に話し合いながらアイテムを作っていました。
「SDGsのボードゲーム?」と思うかもしれませんが、実際ゲームを体験してみると「おもしろい!」と思うことでしょう。
筆者もそうでした。
ゲームを進めていくうちに資源カードの意味がわかり、チーム戦を終えたあとにサステイナブル、そしてSDGsにどう取り組めばよいのかイメージできるようになるのです。
ゲット・ザ・ポイントは小学生から大人、全世代が楽しく遊べるように作られています。
今回の総合的な探究の時間のように、楽しくSDGsを学ぶことは今後必要になるだろうと強く感じました。
意識改革研究所(栗濱宏行) kurihama0410@gmail.com