まだまだ寒さの残る令和4年3月25日(金)に、岡山県笠岡市の笠岡山 威徳寺(りゅうこうざん いとくじ)でキャンドルヨガというイベントが開催されました。
ホットヨガ、パワーヨガ、マタニティヨガなど、近年さまざまな種類のヨガが世界中で実践されています。
そのなかでもあまり聞き慣れないキャンドルヨガ。
灯りをテーマとしたヨガとのことですが、その実態やいかに!?
花冷えの夜、お寺の神聖な空間で催されたヨガイベントをレポートします。
記載されている内容は、2022年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
炎の揺らぎに癒されるキャンドルヨガ
威徳寺では、今回が初めての取り組みとなるキャンドルヨガ。
新型コロナウイルス感染症拡大対策を万全に、14名が参加しました。
会場は笠岡市の笠岡山 威徳寺
キャンドルヨガの会場となった笠岡山 威徳寺(りゅうこうざん いとくじ)は、岡山県笠岡市笠岡の正寿場町(しょうじばちょう)地区に鎮座する、由緒正しい寺院です。
たいへん歴史深いお寺で、創建は平安時代後期と伝えられています。
最初は天台宗として開基し、その後臨済宗、そして曹洞宗に転宗しました。
ご本尊は南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)、すなわち仏祖のお釈迦様です。
境内にはモクレン、ハナショウブ、キンモクセイ、スイセンなど四季折々の花木が植えられています。
近隣の井戸公園の見事な桜とともに、地域のかたがたから風流なお寺として親しまれている威徳寺。
今回のキャンドルヨガは、昭和53年に完成した荘厳な本堂で行なわれました。
凜とした空気感のなかで聞く威徳寺二十二世・片田 宗玄(かただ そうげん)住職の法話は、ヨガ哲学の深奥へと私たちの理解を導いてくれるような、味わいのある雰囲気をはらんでいます。
ネパール帰りのヨガインストラクター
当日ヨガの指導にあたったのは、筆者の妻でもある武井 知桜里(たけい しおり)です。
令和2年6月に地域おこし協力隊として笠岡市に移住し、笠岡諸島の真鍋島を中心に活動しています。
彼女とヨガとの出会いは、今から約3年前にさかのぼります。
独立行政法人 国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊(現在の名称はJICA海外協力隊)としてネパールで活動していた当時、現地で全米ヨガアライアンス認定のRYT200ヨガインストラクター資格を取得しました。
以前から趣味でヨガに親しんでいたそうですが、本場ネパールでの経験を経て本格的にヨガの道を歩み始めます。
日本帰国後に、チェアヨガ指導者養成講座アドバンスコースやアーユルヴェーディックヨガ講師養成講座などを修了。
現在は真鍋島と、同じく笠岡諸島の北木島で、地域住民向けのヨガクラスを定期的に開講しています。
彼女が実践するヨガは、ハタヨガと呼ばれるもっともベーシックなタイプのものです。
骨盤矯正やダイエットなど、さまざまな目的で行なわれているヨガ。
本来は仏教でいうところの悟りの境地へと至る道として、身体を鍛えることが本意だそうです。
ポーズをとることで筋肉をつけ、永い年月をかけて長時間の瞑想に耐えうる頑強な身体をつくりあげる。
その第一歩として、身心ともにリラックスした状態にあることが重要とのこと。
ゆったりとした動作を心がける今回のヨガは、神聖なお寺の雰囲気にピッタリです。
お寺とヨガの出会い
お寺とヨガ。実はこの両者には深いつながりがあります。
もともとは古代インドのバラモン思想に端を発し、多くの側面で似通った考え方をする仏教とヨガ哲学は、いわば兄弟のような関係なのです。
妻の知桜里もヨガを実践するなかで仏教の教えに触れることが多く、常々「お寺でヨガをやりたい!」と思っていたとのこと。
そんな折、私たち夫婦が企画した知るトリップという文化財探訪とヨガとを掛け合わせたイベントで、威徳寺のご住職夫妻と知り合う機会を得ました。
イベント当日に初めて本堂でヨガをやらせていただき、意気投合。
「お寺という幻想的な空間で、趣向を凝らしたヨガをできたら」との想いから、今回のイベントの開催を計画しました。
本格的なヨガにチャレンジ!
夜のとばりが下り、刻一刻と闇が深みを増すなか、本堂の床に所狭しと置かれたキャンドルの灯りはそれと反比例してより鮮やかに、幻想的に輝きを放ちます。
参加者のみなさんは、無理なく畳にあぐらをかいて、準備万端。
背筋を伸ばし両掌を左右の太腿に上向きに置いた基本姿勢から、いよいよヨガのスタートです!
まずは目を閉じ、意識してゆっくりと呼吸をします。
あたり一面を静寂が包みました。
次いで「ネコとウシのポーズ」、「下向きイヌのポーズ」、「トカゲのポーズ」などで徐々に動きをつけていきます。
股関節と太腿周りに心地よいストレッチを感じながら行なうのは、「三日月のポーズ」です。
だんだんと身体がポカポカしてきました。
呼吸を整え身体のほてりを落ち着かせるため、ポーズの合間合間で仰向け大の字に寝転びます。
「屍(しかばね)のポーズ」で小休止です。
そのまま「橋のポーズ」、「仰向け合蹠(がっせき)のポーズ」、「ガス抜きのポーズ」、「針穴のポーズ」など、寝転んだ状態でのポーズが続きます。
気持ちよくてつい眠気が…。
最後はゆっくりと身体をおこし、ふたたび基本の姿勢と呼吸に戻ります。
ヨガをやる前と比べて、深くリラックスできているのを感じました。
さて、心地よく身体を動かした後は、キャンドルヨガのキャンドルヨガたるゆえん、ろうそく瞑想に挑戦!
まずは目線の高さにろうそくが位置するよう座り、柔らかな灯りをボーッと見つめます。
続いて静かに目を瞑ると…。
ろうそくの灯りの残像が見えてきました。
再度目を開けて、ろうそくの灯りを見つめます。
この一連の流れを自分のペースで繰り返すのが、ろうそく瞑想です。
ろうそく瞑想は、ひとつのことに集中し雑念を取り払うための練習として行なうものであるとのこと。
モヤモヤとした思いにとらわれてしまわないよう、ろうそくの灯りを見つめて心をリセットさせたいですね。
サンスクリット語では「トラタック」と呼ばれるろうそく瞑想。
「凝視する」という意味だそうです。
仏教と「灯り」、そしてヨガと「灯り」
よく似た兄弟のような関係の仏教とヨガ。
今回のキャンドルヨガのテーマである灯りについて、両者の立場ではどのように認識されているのでしょうか?
仏教において灯りとは、主にお供え物としてのろうそくを指します。
ろうそくは、いにしえよりさまざまな儀式で使用され、その炎が邪気を祓うとされてきました。
たとえば人が亡くなった際の通夜では、夜を徹してろうそくを灯し続け、ご遺体を魔物や物の怪から守ります。
また、お盆の時期の迎え火・送り火や、死後人間が仏様になるためのあの世への旅路を照らす灯りなどとしても使われるろうそく。
目印ですね。
一方ヨガにおいては、灯りとはすなわち火そのものにほかなりません。
原始バラモン教の思想を色濃く受け継ぐヨガ哲学では、森羅万象は水、風、火、地、空の五つの要素から成り立っていると考えられています。
もちろん、人間自身も例外ではありません。
宇宙を形づくるエッセンスとして、火はもっとも重要なもののうちのひとつです。
仏教の灯りとヨガの灯り。
灯りについてのさまざまな考えをヨガに取り入れ、より深く自分自身を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
お寺という心安まる非日常空間で開催された今回のイベント、キャンドルヨガ。
灯りをメインテーマに据え、ご住職の説法あり、本場ネパール仕込みの実践あり、茶話会ありと、盛りだくさんの内容でした。
予定終了時刻の午後7時を20分ほどオーバーしましたが、参加者のみなさんはとても満足したようす。
「初めてだけど楽しめた!」「時間を忘れてリラックスできた!」「また参加したい!」と、好評の声があがっていました。
主催の威徳寺やインストラクターの妻も、ぜひ継続していきたいとのこと。
今後のさらなる展開に期待大です!
キャンドルヨガのデータ
名前 | キャンドルヨガ |
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期日 | |
場所 | 岡山県笠岡市笠岡5418 |
参加費用(税込) |