FUKI IWANARI ~ 福山城の瓦修復を手掛けた会社が造った瓦のギャラリー

FUKI IWANARI

日本建築の特徴のひとつが、美しい瓦屋根です。中国から伝来した瓦は、お寺の屋根を中心に飛鳥時代から使われ始めました。瓦の耐久性は非常に高く、1,000年以上前に造られた瓦が今もお寺を風雨から守っているそうです。

そのような瓦の話をたっぷりと聞けるギャラリーが、福山市御幸町にあります。

このギャラリーを造ったのは、藤井製瓦(ふじいせいかわら)工業株式会社(以下、「藤井製瓦」と記載)。福山城の「令和の大普請」や寺社の屋根修復なども手掛けている、歴史と信頼のある会社です。

ギャラリーのこと、そして瓦のことを聞きに、代表取締役社長の藤井孝浩(ふじい たかひろ)さんと館長の藤井智江(ふじい ともえ)さんを訪ねました。

記載されている内容は、2026年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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FUKI IWANARIとは

FUKI IWANARI館長の藤井智江さん
FUKI IWANARI館長の藤井智江さん

2025年3月10日にオープンした「FUKI IWANARI(フキイワナリ)」は、シェアキッチンを併設した瓦のギャラリーです。築90年の古民家をリノベーションした趣のある建物と、館長の藤井智江さんのやわらかな雰囲気が相まって、居心地の良さを感じます。

名前の「FUKI」は「瓦を葺く(ふく)」、「IWANARI」は地名の岩成からつけられました。

瓦のギャラリー

古瓦のアクセントウォール

ギャラリーに入ると、壁にびっしりと積み上げられた瓦に目を奪われます。100年以上前に造られた瓦をおよそ2,000枚使った、アクセントウォールです。

「3つの窯元で焼かれた瓦を使っています」

智江さんの説明を聞いてよく見ると、1列ごとに瓦の形が違うことがわかります。

瓦の縁にある刻印にも注目
瓦の縁にある刻印にも注目

「今の瓦は管理された工場内で造るのでほぼ同じ形にでき、並べるだけでぴったりと重なります。けれども昔の瓦は手作業で造られていたため、完全に同じ形にはなっていません。どの瓦とどの瓦が重なるかを見極めて並べるのが、瓦葺き職人の技術です」(智江さん)

高く重ねられた古瓦は、職人の技術力の証なのですね。
びっしり積み上げられてはいますが、天井付近は壁が見える状態です。

アクセントウォールと天井

「壁も見ていただけるよう、天井まで積み上げることはしませんでした。土壁の奥に見えているのは『小舞壁(こまいかべ)』という、竹と木でできた土壁用の下地です」(智江さん)

このギャラリーは、瓦だけでなく、古い建物に込められた技術とぬくもりを伝えるためのものでもあるのです。

下駄箱でも小舞壁を見せている
下駄箱でも小舞壁を見せている

「古い瓦もストックしています。古民家の屋根はもちろんですが、このように内装のアクセントにも使ってもらえます」(孝浩さん)

昭和初期まで瓦の固定には土を用いていたこと、今は釘で固定していることも教えてもらいました。

藤井製瓦がつくった「いぶし瓦」。年月とともに変わっていく風合いを楽しむ瓦だ
藤井製瓦がつくった「いぶし瓦」。年月とともに変わっていく風合いを楽しむ瓦だ
現代の瓦には、釘を打ち込むための穴が開けられている。うわぐすりをかけて焼く瓦を「釉薬瓦」と呼ぶ
現代の瓦には、釘を打ち込むための穴が開けられている。うわぐすりをかけて焼く瓦を「釉薬瓦」と呼ぶ

庭や中庭には、しゃちほこや鬼瓦が置いてあります。

職人の手でていねいに彫刻され、焼き上げられたしゃちほこ
職人の手でていねいに彫刻され、焼き上げられたしゃちほこ
職人の手でていねいに彫刻され、焼き上げられたしゃちほこ
「鬼師」と呼ばれる職人が手作業で造る鬼瓦(画像提供:FUKI IWANARI)
「鬼師」と呼ばれる職人が手作業で造る鬼瓦(画像提供:FUKI IWANARI)

ギャラリー内のトイレには、「瓦タイル」が使われていました。

床や壁のタイルも洗面台も、いぶし瓦と同じ製法で造られている
床や壁のタイルも洗面台も、いぶし瓦と同じ製法で造られている

茶室には、瓦の廃材を利用した砂利や小さな鬼瓦、コースターなど、瓦関係のさまざまな雑貨が並びます。

瓦の雑貨
瓦の雑貨
アーティストmakoさんが古瓦に描いた絵も販売中
アーティストmakoさんが古瓦に描いた絵も販売中

シェアキッチン

キッチンの壁にも瓦タイルが使われている(画像提供:FUKI IWANARI)
キッチンの壁にも瓦タイルが使われている(画像提供:FUKI IWANARI)

ギャラリーの奥にあるシェアキッチンを運営するのは、株式会社umika(ウミカ)です。福山市伏見町と尾道市西土堂に続く、シェアキッチンLittle Setouchi(リトル セトウチ)の3号店として、2025年7月にオープンしました。

古民家の落ち着いた佇まいに心が和む(画像提供:FUKI IWANARI)
古民家の落ち着いた佇まいに心が和む(画像提供:FUKI IWANARI)

現在、以下のお店が営業しています。

  • 日・月:nerine(軽食+カフェ)
  • 木  :Hira field(おむすびランチ)
  • 金  :こめのこ(ランチ+カフェ)
  • 土  :Calore(パン)
リトル セトウチ(Little Setouchi)福山伏見 〜 “はじめる”を試せる場所。曜日ごとに店が替わるシェアキッチン

ミーティングルーム・レンタルスペース

入口近くには、ミーティングルームがあります。

ミーティングルーム(画像提供:FUKI IWANARI)
ミーティングルーム(画像提供:FUKI IWANARI)

広々とした空間は、商談やワークショップなどの場として使われています。

瓦粘土でコースターをつくるワークショップ(画像提供:FUKI IWANARI)
瓦粘土でコースターをつくるワークショップ(画像提供:FUKI IWANARI)

2階はレンタルスペースです。

ヨガ教室やマルシェイベントなどが開かれる2階のレンタルスペース
ヨガ教室やマルシェイベントなどが開かれる2階のレンタルスペース
懐かしさを感じる廊下
懐かしさを感じる廊下
2階から見える屋根の瓦は、およそ90年前に藤井製瓦で造られたもの
2階から見える屋根の瓦は、およそ90年前に藤井製瓦で造られたもの

FUKI IWANARI誕生のエピソード

1周年記念イベントのようす。前列左が藤井製瓦社長の藤井孝浩さん(画像提供:FUKI IWANARI)
1周年記念イベントのようす。前列左が藤井製瓦社長の藤井孝浩さん(画像提供:FUKI IWANARI)

「会社の隣にあったこの家を、たまたま売ってもらえたことがきっかけでした」
と、代表取締役社長の藤井孝浩さんが説明しました。

ちょうど事務所が手狭だと感じていたこともあり、この場所を、お客さんとの商談、瓦の文化を知ってもらうギャラリー、そしてシェアキッチンの3つの役割を担う拠点として使うことにしたそうです。

「『ああ、屋根替えたいなあ!』って思ったことありますか?ないですよね。
屋根の工事は、瓦がずれたとか雨漏りがするとか、トラブルが起きてから始まることがほとんどです。だからショールームを造っても、わざわざ見に来る人はいません。

それなら、ここに瓦の会社があることを普段から認知してもらって、何かトラブルがあったときに思い出してもらえるようにしようと思いました。そのために人が集まる仕組みをつくるなら、最近流行しているシェアキッチンがいいのではないか、と考えたんです」(孝浩さん)

福山商工会議所の青年部でアイデアを話したところ、「おもしろそうですね」と声をかけてくれたのが、株式会社WEFTの桒田康弘(くわだ やすひろ)さんでした。その後、孝浩さんと桒田さんがプロジェクトを進めるなかで、桒田さんと一緒に事務所を借りていた株式会社umikaに、シェアキッチンの運営を相談することになったのです。

「ラッキーなことに『ぜひ使わせてください』と言ってもらったので、お任せしました」(孝浩さん)

実際、シェアキッチンには幅広い年代の人が訪れていて、多くの人にFUKI IWANARIの存在を知ってもらえたそうです。
2026年3月21日に開催した1周年記念イベントには、会社のお客さんや出店者の関係者など、300人近くが訪れました。

1周年記念イベントでは、耐火レンガの窯で米粉ピザを焼いた(画像提供:FUKI IWANARI)
1周年記念イベントでは、耐火レンガの窯で米粉ピザを焼いた(画像提供:FUKI IWANARI)
古い瓦に描かれたイラストに色を塗るワークショップ(画像提供:FUKI IWANARI)
古い瓦に描かれたイラストに色を塗るワークショップ(画像提供:FUKI IWANARI)
大勢の人がイベントを楽しんだ(画像提供:FUKI IWANARI)
大勢の人がイベントを楽しんだ(画像提供:FUKI IWANARI)

「食事のついでに『ちょっと屋根のことで相談があるんだけど』と言って、パンフレットを持って帰る人もいます。逆に、会社に問い合わせをして来られた人をここに案内し、サンプルや施工事例などを見ていただいたうえで契約に至るケースも増えています。

まだオープンして1年ですが、思い描いた通りFUKI IWANARIをきっかけにして、会社のことを知っていただけていると感じています」(孝浩さん)

瓦製造から始まった会社

藤井製瓦工業本社外観

藤井製瓦の創業は1897年(明治30年)です。当時は「いぶし瓦(渋い銀色をした瓦)」を製造する会社でした。

「釉薬(ゆうやく・うわぐすり)を使わず、焼くときに炭素を一緒に入れていぶすのが、いぶし瓦です。昔は松葉を一緒に入れていましたが、今は窯の中に二酸化炭素を吹き込んでつくります。その結果、表面に銀色の膜ができるんです。
瓦をつくるには、練って空気を抜いた粘土を型に通し、カットしてから、プレス型に入れて形を整え、乾燥して1,000~1,200度で焼き上げます」(孝浩さん)

藤井製瓦製造の瓦。「藤井 岩成」の文字が入っている
藤井製瓦製造の瓦。「藤井 岩成」の文字が入っている

かつては、その地域で使う瓦はその地域でつくっていました。福山にも十数軒の窯元があったそうです。

しかし現在、日本の瓦の多くは、三大産地である愛知県三河地方(三州瓦)、島根県石見地方(石州瓦)、兵庫県淡路島(淡路瓦)でつくられています。

藤井製瓦も1986年(昭和61年)に瓦製造を終了し、以降は瓦屋根の施工を中心に事業を展開してきました。一般住宅の瓦工事のほか、寺社や文化財の修復も手掛けています。

「2022年に完了した福山城の令和の大普請では、天守閣や伏見櫓など6つに分けられた工事を、それぞれ別の会社が受注したんです。そのそれぞれの会社から弊社が屋根担当として仕事を受け、6つすべての屋根の工事に携わりました」(孝浩さん)

その工事で印象に残っていることをたずねました。

「びっくりしたのは、天守閣のしゃちほこですね。足場を組んで点検に上がって見たら、しゃちほこが『置いてあるだけ』だったんです。針金で留めてはありましたが、触るとグラグラ揺れました。通常は、屋根から出した心棒に中が空洞のしゃちほこを突き刺して固定するんですが、それがなかった。

30年くらい前の台風被害の工事からずっとその状態だったと考えると、よく落ちなかったものだと驚きました。
そのままにするわけにはいかないので、元請けの会社に頼んでステンレスの支柱を造ってもらい、そこにしゃちほこを差し込んで留めてきました。これなら落ちないはずです」(孝浩さん)

福山が地震の少ない地域で良かったと、筆者は胸をなでおろしました。
福山城や寺社、古民家の修復工事ではできるだけ古瓦を残します。取材の日は、雨。屋外の作業ができない社員たちは、お寺の修復に使う古瓦を1枚1枚磨きながら、状態を確認していました。

寺社修復のため回収した瓦の汚れを落とす。この瓦は100年くらい前のものだそう
寺社修復のため回収した瓦の汚れを落とす。この瓦は100年くらい前のものだそう
使われていた場所に戻せるよう、古瓦には数字が振られている
使われていた場所に戻せるよう、古瓦には数字が振られている
修復を待つ鬼瓦
修復を待つ鬼瓦

バキュームカーは、古瓦の工事のときに大量に出る土埃を吸い取るためのものです。このような工事に対応できる会社はかなり珍しくなっているのだと、智江さんが説明してくれました。

会社名の入ったバキュームカーは、土葺きの屋根に対応できる証
会社名の入ったバキュームカーは、土葺きの屋根に対応できる証

砂利に似た、小さく砕いた瓦が並べてありました。

「産業廃棄物となってしまう瓦をリサイクルした資材で、『びんごテコラ』といいます。砂利と同じように地面に敷いて使いますが、粘土を焼いてつくった瓦は砂利よりも吸水性が高いので、水たまりができにくいのが特徴ですね。雑草対策や防犯にも役立ちますし、花壇や鉢のマルチングにもいいですよ」(智江さん)

びんごテコラはSからLLまで4種類のサイズがある
びんごテコラはSからLLまで4種類のサイズがある
Mサイズは園芸用に人気
Mサイズは園芸用に人気
びんごテコラを使った多肉植物の寄せ植え
びんごテコラを使った多肉植物の寄せ植え

藤井製瓦は、使わなくなった瓦も大切にする会社なのだとわかりました。

大学と地元企業による古民家修理 ~ 空き家問題の解消へ向けた取り組み

瓦のギャラリーに行ってみよう

石畳に埋め込まれた瓦を探すのも楽しい。これは「FUKI IWANARI」の「F」
石畳に埋め込まれた瓦を探すのも楽しい。これは「FUKI IWANARI」の「F」

FUKI IWANARIを訪れて、今までよりも瓦を身近に感じることができました。

次はシェアキッチンのお店にも、訪れてみたいと思います。

ギャラリーの見学は予約不要です。おいしいものを食べるついでに、瓦の深い魅力を感じられるギャラリーへ、足を運んでみませんか。

FUKI IWANARI

FUKI IWANARIのデータ

FUKI IWANARI
名前FUKI IWANARI
所在地福山市御幸町下岩成1170
電話番号084‐955‐0108
駐車場あり
開館時間午前10時~午後5時
休館日土、日、祝日
入館料(税込)無料
シェアキッチンでの食事や雑貨の購入は別途
支払い方法
  • 現金
  • PayPay
  • ギャラリー内での雑貨の販売は平日のみ
    シェアキッチンでの支払いについては各店に確認のこと
予約について
タバコ
トイレ
子育て
バリアフリー
ホームページfuki_iwanari

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