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「活版カムパネルラ」スタッフの國近さんにインタビュー
尾道市東土堂町にある活版印刷体験ができる雑貨店の活版カムパネルラで、印刷から接客、ワークショップまでこなしているスタッフの國近 千嘉(くにちか ちひろ)さんにインタビューをしました。
インタビューは2021年3月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
活版カムパネルラの誕生は大家さんとの出会いから
活版カムパネルラが誕生したのはどういう経緯からですか?
國近(敬称略)
活版カムパネルラのオーナー上田は尾道出身です。
上田がデザイナーとして独立しカメレオンワークスを立ち上げた当時、事務所は今とは別の場所に開いていました。
独立後しばらくして、活版カムパネルラの建物の大家さんに「この場所をなにか有効に使ってくれないか」と相談されたそうなんです。
そのあと上田が実際に建物の立地を見たとき、「ここならふらっと散歩をしている人が立ち寄ってくれるかもしれない」と感じたようです。
この場所で事務所プラスお店のスタイルで運営したらどうかと考えて、カメレオンワークスの事務所を今の活版カムパネルラの場所に移転させました。
移転したあと、1階は何のお店にしようかと考えたときに浮かんだのが活版印刷。
上田が独立前のデザイン会社に勤めていたとき、会社に活版印刷機の博物館があったそうなんです。
そこで初めて活版印刷機に触れてみて「こんなすごい技術が日本に残っていたのか」と思ったらしく。
自分でお店を開くとなったときに、そのとき心に残っていた活版印刷を中心としたお店にしたらいいんじゃないかと考えて、いろいろと活版印刷に関するものを集めました。
上田は写植からデザインを始めたので、写植の前の技術にとても興味を持ったようです。
偶然出会った活版印刷
國近さんが活版カムパネルラに関わったのはどういったことから?
國近
私自身は結婚を機会に尾道に来ました。
尾道に来てからしばらくして、散歩の途中にふらっと活版カムパネルラの前を通ると「求人」と出ていたんで、どんなところだろうととりあえず中に入ってみたんです。
結婚後に仕事を探していたこともあって、思わず吸い込まれるように(笑)
すると、可愛いものがいっぱいで雰囲気がとてもいいし、スタッフさんの印象もよかったんです。
その場でワークショップのBコースを体験させてもらうと、とても楽しくて。
「これは求人に応募しないと」と(笑)
そのあと、無事に採用されて今に至ります。
結婚を機に尾道に移住してみて、尾道の印象はどうですか?
國近
尾道は風通しがいい街だなあと感じました。
それと尾道は流動的。
人も情報も行き交っているという印象を受けました。
活版印刷のワークショップ(体験コース)を用意している理由は?
國近
上田はデザイナーとして働いているんですが、独学でデザインの勉強をしてデザイン会社に入り、そのあと独立をしてカメレオンワークスを立ち上げました。
その下地があってのことだと私は考えているのですが、だれもが街の中にある素敵なデザインに触れているはずなのに、だれも触れていると感じないまま素通りしているのがもったいないと思ったそうなんです。
たとえば、ワークショップのBコースであれば、活字をどう配置しようか、字と字の間をどうしようかとか考える必要があって、それが実はデザインの基礎の勉強、作業をしていることになります。
ワークショップでデザインする体験をしてもらうと、街に出たときにいろいろなデザインに気がついてもらえるんじゃないかなと。
「このデザインはこうなっているのか」とか、「ここのデザインは、こうしたほうがいいんじゃないかな」とか、デザインについて考えるきっかけになってもらえばいいなということから、活版印刷を体験できるワークショップを用意しています。
活版印刷にはぬくもりがある
活版印刷の魅力は何ですか?
國近
活版印刷には物量があるということでしょうか。
印刷をすると多くは2次元のものになりますが、それが3次元のものから生み出されているというところに面白さがありますね。
あとは余白ですね。
余白を作るためにいろいろと3次元のものが使われている部分。
仕上げるまでの手の跡があるんだなと、感じられるのも魅力です。
これを見てほしいという商品は?
國近
「活版ポストカード 3色刷り」は見ていただきたいですね。
3色を印刷するためには、色ごとの版が必要なんです。
その版を使って順番に印刷するので、このポストカードは3回印刷しています。
表面の印刷を含めると合計4回このカードは印刷する工程になっていて、結構手間暇がかかっているんです。
同じように見えても、よく見ると微妙に色合いが違っていたりするので、1枚1枚に個性があり完全に同じものがないという部分も見てほしいですね。
活版カムパネルラが目指す場所
どのような人に来店してもらいたいですか?
國近
手を動かすのが好きなかたには立ち寄ってもらいたいですね。
たとえば女性であれば、ネイルを自分でするのが好きな人や髪のアレンジをするのが好きという人も、手を動かすことが好きだと思います。
そういうかただと、活版の体験をするときにも楽しそうにされるんです。
手を動かすことが好きなかただと、ここでの体験やひとときが印象に残るのではないかな、いい思い出になるんじゃないかなと思います。
今後の展開について
國近
今、名刺のご相談が増えているんです。
ここでワークショップを体験されたあと、活版印刷で名刺を作りたいというご依頼が多くなっています。
このように、今後も活版カムパネルラでの体験がきっかけでひとつながりになり、多くのお客様と長くおつき合いをさせていただけるお店になればいいなあと思います。
おわりに
テクノロジーの進化とともに人々の生活は効率的で便利になってきました。
その流れとは逆に見える活版印刷の世界。
しかし、時間はかかるけれど人の手によってゆっくりと作られる印刷物に、心惹かれるのはどうしてでしょう。
日常にあるデザインに目を留めてほしい、街の中にたくさんあるすてきなデザインに気づいてほしい、というオーナー上田さんの想いが詰まっている「活版カムパネルラ」。
そしてその想いを支えているスタッフのみなさん。
活版カムパネルラは、歴史ある2台の印刷機を使うワークショップを通じて、もの作りとデザインの魅力を発見できるレトロでありながら新しい雑貨店でした。
- 撮影:佐々木敏行
活版カムパネルラのデータ
名前 | 活版カムパネルラ |
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所在地 | 広島県尾道市東土堂町11-2 |
電話番号 | 0848-51-4020 |
駐車場 | なし 駐車場はないので、公共交通機関か近隣の駐車場を利用。 尾道駅より徒歩10分。 |
営業時間 | 午前10時から午後6時 |
定休日 | なし 年末年始は休業 |
利用料(税込) | 活版印刷のワークショップ Aコース(15分) 基本料金550円(税込)+カード、ノート代 Bコース(1時間30分) 基本料金2,200円(税込)+カード、ノート代 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 可 ワークショップは予約なしでも空いていれば可能だが、事前予約をしておいたほうが確実。 |
トイレ | |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | 活版カムパネルラ |