島の人にお話を聞きました 圓福寺の住職・前田 智勉さん
圓福寺の住職・前田 智勉さんにお話を聞きました。
前田さんは真鍋島で生まれ育ったのですか
前田(敬称略)
いいえ。私は香川県三豊市出身です。三豊市にある「十輪院(じゅうりんいん)」の跡継ぎなのです。
こちらの圓福寺はおじが住職を務めていました。
跡継ぎがいないということで、私が十輪院と圓福寺、両方の住職となりました。
真鍋島に暮らすようになって今年で16年目。1か月に2回ほどの頻度で三豊市に通っています。
今は船で笠岡市本土に行き、そこから車で瀬戸大橋を渡って三豊市へ、というルートですが、以前は海上タクシーを使っていました。
海上タクシーを使うと、真鍋島から三豊市本土まで約15分。近いですよね。
私が子どものころは、香川県の多度津港から真鍋島へのフェリー航路もあったので、もっと気軽に行き来できました。
夏休みなど、よく家族で遊びに来ていましたよ。
昔は道の舗装もなく、防波堤もなく、今よりももっと情緒あふれる景観でした。カメラを持ったかたが多く訪れていたのを覚えています。
また、山には木が全然生えていなくて、電照菊の畑がたくさんあったんですよ。
少子高齢化と人口減が進んだことも影響し、島の景観はだいぶ変わりました。
前田さんが感じる真鍋島の良さはどんなところでしょう
前田
帰ってくるとほっとするところですね。車の音もなく、とても静かです。
離島の寺の住職は、全国におつとめがあるのです。島を離れ、笠岡市街地や福山、東京や大阪など、都会で暮らす檀家さんも多くいらっしゃいますから。
都会から帰ってくると、特に心がやすらぎますね。
今はコロナ禍で観光客のかたがだいぶ少なくなっていますが、都会とは違う時間の流れが、島を旅する心地よさだと思います。
また、真鍋島のことを「五里五里」といいますが、本州と四国のほぼ中間地点ということで、それぞれの文化が混ざり合っているところも魅力でしょう。
圓福寺には、丸亀のお殿様から奉納されたと伝わる、江戸時代に描かれた涅槃(ねはん)図があり、1年に一度だけ公開しています。
また、島といえば夏というイメージがあるかもしれませんが、冬は牡蠣やワタリガニなど魚介類が美味しい季節です。
港の近くにある「漁火(りょうか)」は魚料理が楽しめる人気店。予約して旬の海の幸を堪能してほしいです。
島の人にお話を聞きました 笠岡市地域おこし協力隊・武井さん夫婦
真鍋島に移住して1年が経過した笠岡市地域おこし協力隊・武井 優薫(たけい ひろのぶ)さん・知桜里(しおり)さんに、真鍋島での暮らしや協力隊活動についてお話を聞きました。
おふたりが真鍋島に移住された経緯を教えてください
武井 優薫(敬称略)
もともと2年間、JICA(独立行政法人国際協力機構)が派遣する青年海外協力隊として2020年1月まで、2人とも海外で活動していました。
私はパナマの先住民が暮らす村で、歴史や文化を観光に応用するという取り組みを行なっていました。
スペイン語で話を聞いて、書きとめて、観光客のかたに案内するといった活動です。
武井 知桜里(敬称略)
私はネパールで2年間、「シンガ タトパニ」という温泉地で観光促進に取り組んでいました。
外国人に温泉について知ってもらうためのリーフレットを作るなどの活動です。
武井 優薫
青年海外協力隊でのそれぞれの活動と遠距離恋愛を経て、日本に帰国後、結婚してどういった生活を送ろうかとふたりで考えました。
都会のオフィスで働くという選択肢もあるでしょうが、自分にとって、パナマで暮らす人たちが生活と仕事を分け隔てることなく楽しんでいることが印象的だったんです。
たとえば、畑を耕しに行く途中に近所のかたに話しかけられて立ち話をしたり、観光客のかたに昔の暮らしについて話したり観光案内をしたり。
帰国後、そんな風に地域のなかで自分たちの暮らしをつくるような挑戦ができないかと考えるようになったんです。
暮らす場所については、全国の漁村を4~5か所ほど検討しました。
そのなかで断トツで惹かれたのが、真鍋島だったんです。
雰囲気のいい細い路地や昔ながらの建物が残り、今でも歩くたびにわくわくしています。
地域おこし協力隊制度を活用し、2人そろって2020年6月に笠岡市地域おこし協力隊に着任しました。
ちなみに婚姻届を市役所に提出したのも、協力隊に着任した2020年6月1日です。
そうなんですね! 真鍋島での暮らしや協力隊活動はいかがですか?
武井 知桜里
船酔いが少し困りごとかもしれません。でも、思っていたより不便なことはないと感じています。
週に1回、お肉などを買いに定期船で笠岡市本土へ渡っています。野菜は島で暮らすかたにいただくことが多く、ありがたいですね。
また、Amazonなどインターネットの通信販売も利用できるので快適に暮らせています。
武井 優薫
ふたりとも、海外の異文化のなかで暮らした2年間の経験が生きていると感じます。
協力隊の活動では、僕は地域の歴史や文化を題材にした観光開発や、真鍋島観光協会と連携して観光客へのガイドなども行なっています。
また、島民のかたと歴史文化研究会を2週間に1回開催し、真鍋島の歴史について調べているところです。
この間、ある島民(故人)の親族から、そのかたが描かれた「絵画集」をお借りしました。昔の真鍋島のようすが描かれた貴重な史料です。
史料を読み解くとともに、今後展覧会なども企画して、多くのかたの目に触れる機会を作れたらと思っています。
武井 知桜里
私はネパール在住時代に全米ヨガアライアンス(ヨガインストラクター認定資格)を取得し、今は地域でヨガクラスを開講しています。
真鍋島では、毎週平日に開催するクラスと、月1回週末に開催するクラス。
北木島でも月に2回、定期開講しています。
呼吸法や瞑想を中心にプログラムしており、好評です。
穏やかな瀬戸内海を眺めながらのヨガもまた、最高なんですよ。
ふたりで観光とヨガを掛け合わせた取り組みも企画中です。
おわりに
カニを見かけたり、小さなほこらにサンゴが祀られているのを見つけたり。
真鍋島の路地には「私、島に来てる!」と実感できるポイントがたくさんありました。
武井さんから教えてもらった、一見すると歩道とわからない岩坪集落の細い階段にびっくり!
私は歩く勇気はなかったですが、島のかたは軽々と歩いているそうです。
真鍋島にはまだまだ、真鍋城跡や島の南側の海岸などの見どころもあります。
私は次は「INN THE CAMP」に宿泊し、猫たちにあいさつしながらのんびりと散歩をして過ごしたいです。