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ミライゴト ~ ユニークな手法で若者のミライを広げるキャリア支援

ミライゴト ~ ユニークな手法で若者のミライを広げるキャリア支援

知っとこ / 2025.06.20

ミライゴトの理事3人にインタビュー

ミライゴトの理事である角田さん、隅田さん、塩飽さんに、ミライゴトができた経緯などを聞きました。

ミライゴトができた経緯

ミライゴトができた経緯を教えてください。

角田さん
角田さん

角田(敬称略)

STUilyがやりたいこととSta-shがやりたいことは似ているようで少し違うので、団体として分けることにして、ミライゴトをつくりました。

Sta-shを始めて7年目になり、卒業生が340人くらいいます。
福山の若者は進学で福山の外へ出て、就職も福山市外の会社を選ぶことが多いです。
しかし「東京で一度就職はしたけどやっぱり福山に帰りたい」「大学は東京に行ったけど就職は福山にしたいです。どうしたらいいですか」という相談が徐々に増えました。

そのような相談に対して、知り合いの社長がいる会社を紹介していたんですが、きちんとマッチングをしていたわけではないので、あまりうまくいっていませんでした。

一方で、Sta-shで協賛をお願いすると、企業から「何のメリットがあるの?」と言われることがあります。
若者たちの活動を応援するメリットは、将来福山で就職を希望する若者へのPRになることです。
福山にはこういうことをしている会社があるのか、こんな大人がいるのか、と若者たちに伝えられる。
企業の協賛が、若者たちにとっても企業にとっても、ウィンウィンの関係になることが見えてきていました。

Sta-shで一緒に活動した先輩が福山に帰ってきて働いている姿を見るとか、そういう小さなきっかけが重なっていくと、福山で働きたいと思う人が増えていくんじゃないだろうかとも思いました。

そのような経緯から、就職支援のできる仕組みをつくることにしたのです。

ミライゴトのなかで、角田さん、隅田さん、塩飽さんはそれぞれどのような役割なのでしょうか?

角田

山陽不動産では、2014年からディオポルテという若手起業家の支援ビルを運営しています。
塩飽さんはその入居者たちでつくった組織の1期生なんです。
今や塩飽さんは、商工会の青年部の副会長なので、ミライゴトの関係で企業に声をかけてもらう役割も考えています。

隅田さんは学生さんから相談があったときの窓口です。

隅田(敬称略)

理事のなかでは一番若いんで、学生たちも僕には話しやすいんじゃないかなと思っています。

塩飽(敬称略)

私は、設営関係や当日の運営などの裏方です。
もともと私は角田さんと知り合いで、Sta-shが始まった当時から手が足りないと言われて手伝うようになりました。
企画は角田さん、私は設営関係、そういう分担ですね。
今回ミライゴトが走り始めたので、また少しお付き合いしていこうかなと思っています。

塩飽さん
塩飽さん

ミライゴトならではの特徴

ミライゴトならではの特徴を教えてください。

角田

Sta-shに参加している若者は個性が強く、従来型の就職活動には当てはまりにくい子が多いんです。
「俺はこんなことができるのに!」とエネルギーがすごい子もいるんです。
しかし、企業側からすると受け止めにくい面もあるので、私たちが間に入ることで良さがわかってもらえるようになるのではないかと思います。

若者もスポーツ選手も、自分ができること、得意なことが企業にとってどういうメリットになるかという変換がうまくできていないんです。だからミスマッチが起きます。
私たち自身が経営者なので、「企業に伝えるんだったらこういうふうに言ったほうがいいよ」「うちだったらこういう社員がほしいよ」とか企業が求めることをかみ砕いて若者に伝えられます

マッチングのなかでは、求職者の個性を企業にとってのメリットに変換することが大事。それをできるのが、私たちの強みですね。

また、スポーツ選手が現役を終え、就職を考えるときに「俺、何もできないから」「勉強サボってきたから」とよく言うんです。
でも、彼らは小学校からずっと競技をやってきて、小さな目標を掲げながらクリアして、仲間とコミュニケーションをとりながらチームで頑張っているんですよ。優秀なんです。
そういう人たちと企業とをつなげて、セカンドキャリアを応援できたらいいですよね。

ですから、人材紹介業を始めたといっても、月に〇件マッチングさせるとか数字的なものはまったく考えていません。
知っている人と企業とを、ていねいにつなぎたいと考えています。

たとえば、私たちの活動に2年間ずっと参加してリーダーシップをとってきた子がいます。
その子は高卒だというだけで就職活動がうまくいかず、アルバイトをしているんです。
こういう子が2年間にやってきたことを公平に見てもらえるような、マッチングができればと考えています。

隅田

高卒だと社会をよく知らないまま社会へ出るので、そこへのサポートもしていきたいですね。

隅田さん
隅田さん

ミライゴトは、どう展開していく?

4月から就職支援サービスが開始されましたが、反響などはどうでしょうか。

角田

Sta-shのOG・OBからの相談や、知り合いの企業からの問い合わせは多いです。若者たちのニーズはあるし、企業も困っている、ということはわかりました。
今後は参加企業を増やしていくのが課題ですが、すでに働き方改革ができているような、働く環境を整備して若者に活躍できる場を提供できる企業でなければ、マッチングが難しいと思います。

今は11月に開催するピッチマッチに参加する企業を、福山市にも協力してもらって選んでいるところです。
ピッチマッチへの参加で、企業にミライゴトの取り組みを知ってもらいたいんです。

また、福山にも若い人たちも活躍できる企業があることを全国の人たちに知ってもらうきっかけになれば、「そんな面白い仕事があるんだ」「じゃあ帰ってこようかな」と思う人が少しずつ増えるんじゃないでしょうか。

ピッチマッチには、AI開発者にも入ってもらう予定です。
求職者だけでなく、企業もどういう人を求めているのかが言語化できていないし、自分の会社でやってほしいことが何かもわかっていない。
多分お互いに何を伝えたらいいのかわかっていないんです。

AIを使うと、プレゼンテーションの声の発し方やトーンなどを分析してデータ化できるそうです。
データが蓄積すれば、どういう理由でどういう人をどういうふうに採用すればいいのか言語化できるのではないかと考えています。
また、STUilyやSta-shなど、学校外でやってきたことやコミュニケーション力や調整力などの能力を可視化して、公平に評価されるようにしたいんです。

Sta-shを卒業した若者たちの良さにしても、私たちは実際に見たからわかるんですが、私たちがいない場所でその若者たちの良さが認められないのをとても残念に思っています。
気持ちとしては、私が一人ひとりの就職活動へついていって、その子の良さを伝えたいくらいですが、そうもいきません。
AIのデータが「この子はこんなことを考えていて、こんなすごいことができるんですよ」と私に代わって企業に伝えてくれるようになればと期待しています。

角田さんと隅田さん

将来はミライゴトをどのように展開していく予定ですか?

角田

ミライゴトの取り組みを理解してくださる企業を増やしていくためには、3年くらいかけて定期的にイベントをすることが大切だと考えています。
その土台ができてから、サイト内で若者と企業をマッチングする仕組みをつくっていくつもりです。
そうじゃないと、ただのマッチングサイトになってしまうので。

若者の「この町を良くしたい」「何かやってみたい」という純粋な思いを応援してくれる企業が増えればうまくいくと思います。
応援した若者がいつの日か就職するときに「あの応援してくれた企業がいいな」と思ってもらえる企業であってほしいです。

若者たちはちゃんと企業を見ています。
Sta-shの1回目に参加した大学生が、いったんは実家のある広島市で就職したんですが「福山市に貢献する仕事がしたい」「Sta-shのときにお世話になった山陽不動産に就職したい」と連絡してきたんです。
そのとき当社では新規採用を募集していなかったんですけど、熱意に押されて面接して、最終的に営業として採用しました。
私たちは採用を意識していなくても、若者たちは山陽不動産を「自分たちを応援してくれている企業、働きたい企業」と見ていたんだなと感じました。

福山で育った若者が福山にまた帰ってくる循環の輪をつくる

STUilyやSta-shで育った若者たちは、いったんは福山から出ていくかもしれません。
しかし、そこからまた福山に帰りたがっている若者が増えているのも確かです。
一方で、現在は若者が福山に帰ってきやすい環境が十分に整っているとはいえません。
今回の取材によって、ミライゴトはその欠けたパーツを埋めるためにつくられたのだと感じました。
ミライゴトが軌道に乗ることで、角田さんたちが長年手がけてきたプロジェクトが、大きな循環の輪になるのです。

(画像提供:一般社団法人ミライゴト)
(画像提供:一般社団法人ミライゴト)

角田さんは言います。「地域で頑張っている若者たちを自分たちで手塩にかけて育てるのは、若者が東京へ行ってスキルを得て『やっぱりお世話になった福山で働きたい』となる心を育てたいからです。そして、福山に帰ってきたときに『あのときのあの子!』とつながるように、企業にも働きかけたい。3年かけて、そうした循環の輪の輪郭くらいが見えてくるといいなと考えています」

3年後、5年後、10年後、どのようなミライが福山で生まれるのでしょうか。今後の展開が楽しみです。

一般社団法人ミライゴトのデータ

(画像提供:一般社団法人ミライゴト)
団体名一般社団法人ミライゴト
業種キャリア創造支援事業
アントレプレナーシップ教育事業
スポーツ人材キャリア支援事業
地域活性化事業
代表者名角田千鶴
設立年2024年10月11日
住所広島県福山市東町3-10-15
電話番号
営業時間
休業日
ホームページ一般社団法人ミライゴト
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山根厚介

山根厚介

WebライターやWeb制作、家庭教師など複業で暮らしています。
現在は広島市に住んでいますが、以前福山と尾道に住んでいたことがあります。
歴史や文化などを中心に隠れた備後の魅力を伝えていければと思っています。

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