目次
オンニマーマレード 内田久美子さんにインタビュー
内田久美子さんは、平日は昼間の仕事をこなしながら、休日や夜にジャムやマーマレードを作っています。
マーマレード作りを始めたきっかけや、北欧への想いなどを聞きました。
マーマレード作りのきっかけは震災復興イベント
どのようなきっかけで、マーマレードやジャムを作り始めたのですか。
内田(敬称略)
あるとき、桃をたくさん買ったんですけど、味がなくて。ジャムにしたらおいしくできたんです。そんなときに、ちょうど柑橘をたっぷりいただいてね。それでマーマレードを作ってみたら、またこれがおいしかったんですよ。
同じ頃、有志が集まって東日本大震災の復興支援イベントをすることになり、私はマーマレードを出しました。それ以来、マーマレードを作り続けています。
微力でも震災復興の役に立っていると思うと、やる気がでるんです。大切なのは続けること。東日本大震災の翌年から始めた小さなイベントですが、コツコツ10年以上続けてきて、100万円を超える寄付ができました。
さまざまな要素が重なって、マーマレードを作ることになったのですね。
内田
そうですね。瀬戸内にはいろいろな柑橘があるので、これで作ったらどんな味になるんだろうと、どんどん広がってしまって。
最初は、何度も何度も失敗しましたよ。とんでもなく苦いマーマレードができたり、焦げつかせたり、どれだけ捨てたかわかりません。
けれども、そうやって何度も失敗したから、まともなものが作れるようになったのかなと思っています。
味の秘密はなんでしょうか。なにか特別な材料が?
内田
材料は基本的に果物と砂糖(北海道産のピートグラニュー糖)だけです。価格を抑えたいので、高価な材料も使いません。
コツは長時間コトコトと煮ないこと。高温・短時間でさっと煮ると、きれいな色とフレッシュ感が残ります。
皮の苦みを取るために何回か茹でこぼしをしたあと、果肉と砂糖を合わせて強火で短時間煮るんです。そして、皮に糖分が浸透するまで1日寝かせます。次の日にまた砂糖を追加して皮に染み込ませていくと、透明な感じに仕上がるんですよ。
皮の苦みもマーマレードのおいしさの一部なので、苦みを見極めながら作っています。
聞くと簡単そうですが、実際にやると難しいのだろうなと思います。ところで「ライムとカカオニブ」や「柿と生姜」といった組み合わせは、どうやってひらめくのですか。
内田
ライムとカカオニブのマーマレードは、人から教わったものです。私も「何これ?」と驚きました。
カカオニブは、チョコレートと同じようにカカオの甘い香りがあるけれど、甘さはないし溶けないので、柑橘と良く合うんですよ。
洋書も参考にしています。いちじくとバニラとか、メロンとラズベリーとか、本に載っている組み合わせがヒントになりますね。
色の美しさにも魅せられます。
内田
ライムやキウイなどのグリーンを残すには、銅鍋を使うんです。煮ると一度グリーンが抜けるのですが、煮詰めていると色が戻ってきます。
いちごも煮ると色が抜けて白っぽくなりますが、また戻って赤くなります。そういう化学変化が楽しいですね。
鮮やかな色にはそのような秘密があったのですね。ところで杏などの旬の短い果物のジャムは、旬の時季に作り置きするのでしょうか。
内田
いえ、杏のほか、いちご・いちじく・キウイ・トマトなども、一番おいしいときに収穫して冷凍保存しています。
福山は杏の産地として知られていますが、出回る期間が短く、生のままで多くの人に食べてもらうのは難しい果物です。ですから、ジャムがいいんですよ。
今回、ダルメイン世界マーマレードアワードの英国大会に出した「ネーブルと杏」のマーマレードのように、他の果物と合わせるのも好きですね。
フィンランドへの想い
「Onni(幸せ)」の名前や、シナモンロールなど、フィンランドとの関わりが深いのですね。
内田
以前に働いていた工務店の同僚と一緒に訪れて以来、フィンランドには何度も行っています。インテリアコーディネーターの資格を持っているので、最初はインテリアの勉強を兼ねて行きました。
家具や食器、ファブリックなど、フィンランドには私の好きなものが詰まっていて、行くと「口内炎が治る感じ」がするというか(笑)。自然に過ごせる、大好きな場所です。
フィンランドで印象に残っていることは何ですか。
内田
人やモノとの出会いもそうですし、素晴らしい建築を見るのも刺激になるし、すべてが印象的です。
ひとつ、最近の話でいうと、2023年の夏に初めてフィンランドを1人で旅したんですね。以前お世話になったフィンランド語の先生を訪ねたのですが、先生のお友達の家に呼んでいただいたんです。
そこで、ついに憧れのベリー摘みを経験できました!フィンランドでは森にたくさんのベリーが自生していて、だれでも自由に採れるんですよ。ブルーベリーとクラウドベリーを摘みました。
摘んだベリーでジャムも作らせてもらいました。夢が叶った、最高の旅でした。
旅の思い出に、その家のテーブルクロスと同じ柄のクロスを買ってきました。ペンティックというブランドのものです。
アカツメクサとシロツメクサですね。森の景色が目に浮かぶようです。食べ物についてはいかがですか。
内田
フィンランドのシナモンロールは、1個が顔くらいの大きさがあるんです。皆さんこのシナモンロールが大好きで。スパイスの味がしっかりしていておいしいんですよ。
けれども日本では売っていないので、自分で作るしかありません。シナモンが苦手な人も、これなら食べられる、大丈夫だ、と喜ばれます。
これからやりたいこと
2024年ダルメイン世界マーマレードアワードで金賞を取ったことで、これからオンニマーマレードの展開は変わっていくのでしょうか。
内田
そうですね。最高の賞を目指して、今よりももっとおいしいマーマレードを作ります。
そして、もう少し先のことになるでしょうけれども、カフェのような場所を作りたいと思っています。焼き立てのシナモンロールや、シフォンケーキ、スコーンを用意して、フィンランドの雰囲気やマーマレードのおいしさをゆっくりと楽しんでもらいたいですね。
マーマレードのおいしさを伝えたい
小さなきっかけの積み重ねから作り始めたマーマレードを、作り続け試行錯誤をし、本場英国が認める味に高めてきた内田さん。
豊かな森の恵みや、生活そのものを楽しむフィンランドのイメージと、オンニマーマレードのマーマレードやシナモンロールが重なって見えてきます。
一口食べると温かく幸せな気持ちになるマーマレードを、ぜひ味わってみてください。
オンニマーマレードのデータ
名前 | オンニマーマレード |
---|---|
住所 | 福山市山手町7丁目13番69号 |
電話番号 | |
駐車場 | なし |
営業時間 | 取扱店舗の営業時間による |
定休日 | |
支払い方法 | |
ホームページ | オンニマーマレード |