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田丸屋 ~ 古民家と庭と海の幸 山の幸!ストーリーと驚きを提供する沼隈のワインバー

田丸屋 ~ 古民家と庭と海の幸 山の幸!ストーリーと驚きを提供する沼隈のワインバー

食べとこ / 2022.01.22

オーナー田中 靖啓(たなか やすひろ)さんインタビュー

田丸屋、ルヴァンヴェール、田中商店の3つの店を経営する田中靖啓さん。

店に対する思いを訊ねました。

田中靖啓さん

場所ではなくストーリーに客は惹かれる

福山の中心部から離れた沼隈でワインバーをやるのはなぜですか。

田中(敬称略)

僕は沼隈で生まれ育ちました。沼隈が好きだし、沼隈を盛り上げたい。

ここにはうまい魚もあるし、野菜もある。この場所には宝があるんです。

食材は基本的に地元のものを使いますが、ないものは別に取り寄せてもいい。

そこはシェフとスタッフに任せています。

ここまで30分ぐらいかけて車で来るお客さんがほとんどですが、ご夫婦だったら今日はご主人が運転して奥さんが飲むとか、友達同士でも運転代行サービスで帰るとか、決めているみたいですね。

だから、場所としての不便さはあるけれど、まあ、そこも面白いのかな。

庭から見た田丸屋
庭から見た店内(画像提供:田丸屋)

大事な人と時間を過ごすために、わざわざここまで来てくれて「一緒に田丸屋に行ったね、よかったよね、あの1時間のランチは最高だったね」と言ってもらえたらうれしいんです。

ストーリーや驚きでいろいろなプラスがあれば、単なる食事ではなく、心をリセットする時間になります

それは街中ではなく、この場所だからできるのかもしれません。

田丸屋店内

田丸屋を始めたきっかけは。

田中

ご縁あって隣人の持ち物だったこの古民家を、僕が買い取ることになったんです。

それで、この雰囲気を生かした店にしようと、改装を始めました。

昔からすごく立派な庭だったんですが、何年か放置されていたせいですっかり木が生い茂っていて、森になっていましてね。

造園屋さんと相談して、木を切ったり石や水鉢を置いたりして、この庭を復元しました。

5年経って自然に苔も生えてきてね、いい感じになったなあと思います。

昔の家にはこういう庭がありましたが、今の家にはありません。

それでも、年配の人だけではなく若い人でも、日本人のDNAがこの風景に強く反応します

庭を壊すことは簡単ですが、今からこの庭を作ろうと思ったら、もう作れないんですよ。

だからこそ、日本人の感性として残していきたい。

それも、ストーリーですよね。

僕が好きなのは、5月の庭。

葉が青々として、それが太陽の光に照らされてまぶしいんですよ。

5月の庭
5月の庭の美しさは一見の価値がある(画像提供:田丸屋)

逆境を乗り越えるために作ったルヴァンヴェール

今、飲食業は厳しい状況かと思いますが。

田中

そうですね。今は本当に大変だし、世の中の状況を見ながらやっています。

とはいえ、お客さんが来ない状況がつづくのはまずい、なんとかしなくちゃと、スタッフと一緒に考えて作ったのがこの2階です。

パンやお菓子が買えて、庭を眺めながらほっとひと息付ける場所、世の中がどうなっても、動揺せずに美味しいコーヒーを飲むための場所にしようってね。

ルヴァンヴェール店内

パンはうちの奥さんが、毎回新しい自家製酵母のタネを起こして焼いています。

お菓子を作っているのは、別の専属スタッフです。

イベントにも出店して、ルヴァンヴェールを知ってもらっています。

トリコテのイベント
雑貨店tricote+(トリコテ)のイベントにて
おやまのいろどり秋市
おやまのいろどり秋市にて

ピクニックセットが人気だそうですね。

ピクニックセット

田中

ピクニック用にレンタルしているセットですが、SNSでも拡散され、おかげさまですごく好評です。

1,200円(税込)のセットに含まれるのは、かごとクロス、マグカップ、ポットのコーヒーもしくは、ぶどうジュース

パンやお菓子は、ここで好きなものを買っていってもらってもいいですし、必要な人にはテーブルや椅子も貸し出しています。

気候のいいときには、3セット用意しているうち、週末なら2〜3セット、平日でも1セットは出ていますね。

ピクニックセット使用例
(画像提供:ルヴァンヴェール)

このセットを借りればすぐにおしゃれなピクニックができるんですね!

田中

これを持って、好きなところで好きなようにピクニックを楽しんでもらえるとうれしいです。

お客さんが自由にピクニックでこの町を楽しんでくれたらいい。

僕もスタッフも自由にお客さんに楽しんでもらいたいし、楽しんでいる人の周りに、また人が集まってくるんです。

もちろん、私たちが楽しいと思うことも大事にしています。

定休日が3日あるのは、そのためですか。

田中

そうです。休みをきちんと取って、リフレッシュすると、いい仕事ができる

休みの間にスタッフもカフェや居酒屋とか、市場や道の駅なんかに行っておいしいものを探してくるから、またいい循環ができるんです。

田丸屋のスタッフ
(画像提供:田丸屋)

ぶどうを通して見つけた、みんなが喜ぶサービス業のあり方

沼隈ぶどうを全国に送っているそうですが、どんな方法で販路を広げたのですか。

田中

口コミとダイレクトメール(DM)だけですね。

たとえばAさんが、うちのぶどうを知り合いのBさんに送るとしますよね。

Bさんがそのぶどうを食べて「美味しいなあ、これ、CさんやDさんにも食べさせたいなあ。箱に入ってるこのチラシの番号に電話したらいいのかな」ってうちに連絡してくるでしょ。

「Aさんから送ってもらったぶどうが美味しくてね、うちも送りたいんだけど」って言うから、CさんやDさんに送る、するとまたCさんから電話がある。

利用してくれたお客さんには「去年はありがとうございました。今年も始めます」とDMを送ります。それだけですよ。

こうやって今は全国に1,000人ぐらいのお客さんがいます。

20年以上の付き合いがある人も、県外に100人ぐらいですかね。

一度も会ったことはないですが、毎年電話が来て、「元気ですか」「元気ですよ」「またいつもどおり頼むね」というやり取りが続いています。

ぶどうは農産物で品質が一定しませんが、困ることはないのでしょうか。

田中

確かにぶどうの出来は天候に左右されます。

2021年のお盆は長雨だったので、ぶどうに虫がついたり傷が付いたりしました。

普通、そんなぶどうは安くしますよね。

でも、その年によって出来が違うのは当たり前なんです。

だったら、年によって変わるぶどうの出来を楽しんでもらおうと。

一応、お客さんには連絡して、「去年とちょっとようすが違うんだけど、どうしますか、要りますか要りませんか」と聞きます。

「まあでも送ってよ」「わかりました」と、いつもと同じ値段で送ります。

なぜかというと、農家がぶどうを作り続けるためには、できたぶどうをお金に換えないといけないからです。

今年は出来が悪いから、いつもは2,000円のぶどうを500円にしてくれとは言えない。

農家がぶどうを作り続けられるように、僕は2,000円で買って、それを理解してくれるお客さんに売るんです。

沼隈ぶどう
(画像提供:田中商店)

田中

100箱のぶどうのうち、色づきのいい秀品と呼べるものは5箱しかないというとき、この5箱は5,000円でもすぐ売れますが、これだけじゃ商売にならない。

残りの95箱が売れないと、農家は生きていけないんです

だから、今まで安く売っていた残りの95箱に付加価値をつけて、ちゃんとしたお値段で売れるようにしていきました。

秀品以外でも味はすごく美味しいことをお客さんに伝えると「じゃあ、頼む」と。

そのやり方をするようになってから、自分でもやりやすくなったし、お客さんも増えたし、パワーが出るんですよ。

ぶどうを仕入れたら全部中身をチェックして、揺れないように詰め物をして1つずつ詰めていきます。

粒の小さいぶどうばかり入っている箱があれば、大粒や中粒のぶどうを持ってきて、バランスよく配置し直すこともありますよ。

汁が出たり、変な匂いがしているものがあれば、カットしてまた詰め直します。

すごく手間がかかりますが、お客さんが箱を開けたときに喜んでくれる表情を想像して詰めるんです。

お客さんは美味しいぶどうを食べられてうれしい、農家は今まで安くしか売れなかったぶどうが高く売れるようになってうれしい、みんながWin-Win(ウィンウィン)になるのが、サービス業だと思っています。

みんなを幸せにするのがサービス業、なるほど。

田中

夏の暑い日にぶどう畑の手伝いに来てくれた僕の同級生が汗をビッショリかいていたときに、うちのスタッフが「たくさん汗をかいておられるので、濃いアイスコーヒーだとしんどいと思って、ちょっと薄めにいれました」とアイスコーヒーを持ってきたことがありました。

同級生は「人生で一番うまいアイスコーヒーをここで飲ませてもらった」と、何か月経っても僕に言うんですよ。

お客さんをよく観察して、この人は何をしてもらいたいのかな、何を欲しがっているのかな、だったら自分はどうすればいいのかな、と考えるのが僕たちの役目で、それに満足したお客さんがファンになってくれるんですよね。

それはAIにはできないことで、人間が読み取る力でしかできない

だから僕はアナログでいきたいんです。

ルヴァンヴェールのコーヒー

ストーリーと驚きに魅せられて、また行きたくなる店

田丸屋、ルヴァンヴェール、田中商店の3つに共通するのは、お客さんを魅了するストーリーと驚きを提供していることでした。

お店に入って料理が出てくるまでのワクワク感、コーヒーを飲んで庭を眺める時間、ぶどうの箱を開けたときの驚き、そしてそこに貫かれるストーリーに惹かれて、お客さんはこの店のファンになるのですね。

アナログでもいい、日本人の感性を残したい。

その言葉を聞いて、また最高の時間を過ごしに行きたくなりました。

田丸屋のデータ

名前田丸屋
住所福山市沼隈町中山南713-1
電話番号084-988-0639
駐車場あり
9台
営業時間【ランチ】
木・金:午前11時~午後2時
土・日:午後0時~午後3時
【ディナー】
木・金・土・日:午後6時~午後10時
(※詳細はSNSや電話で確認ください)
定休日月、火、水
支払い方法
  • 現金
  • PayPay
予約の可否
座席21席
・カウンター数:3
・座敷・テーブル席数:18
タバコ
トイレ
子育て
バリアフリー
ホームページ田丸屋
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山口 ちゆき

山口 ちゆき

Webライター。夫と息子2人の4人家族。毎日どんなごはんを食べようかと考えている食いしんぼうです。お菓子作りと読書が好き。

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田丸屋店内

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