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レザースタジオ サードの代表・三島進さんにインタビュー
福山の魅力が詰まった福山レザーや、ランドセルのリメイクなど、革への愛があふれる製品を生み出すレザースタジオ サード。
運営する株式会社 サードの代表・三島進(みしま すすむ)さんに話を聞きました。
全国の革コンクールで5年連続入選を経て、独立へ
開業の経緯を知りたい。
三島(敬称略)
まずは、子ども時代のころの話からさせてください。
実家は福山で革製品の工房をしていました。
「クラフト工房 カーフ」という会社です。
そのため、私も子どものころから家業を手伝っていました。
家での革の仕事が、部活動みたいなものでしたね(笑)
ですから、私は現在42歳(2023年取材時点)ですが、革に関する仕事歴は30年以上になります。
しかしその後、音楽に興味をもってバンド活動を始めました。
そして「音楽で一旗当ててやる!」と意気込み、東京へ行くために、学校を卒業したら東京でできる仕事を探します。
見つけた仕事が、寿司店。
昔ながらのカウンターがある寿司店でした。
革とは関係のない仕事とは、意外だ。
三島
寿司店での仕事は接客の楽しさなど、さまざまな勉強ができて楽しかったです。
しかし肝心の食の分野自体に興味がもてなかったため、退職。
福山へ帰郷して、家業を手伝うことになったのです。
そして、日本革工芸展という革に関するコンクールで5年連続入選という実績を積みました。
この実績を得たことで、革工房として独立開業することを決意したんです。
父の会社は、BtoB(対企業)がメインでした。
私はBtoC(対個人)の仕事をしたかったのが、独立の理由です。
かつて働いた寿司店で、接客の楽しさを知ったのが大きかったと思います。
開業したのは2007年(平成19年)。
父の会社で働いて、8年ほど経ったころでした。
店舗のヒントは寿司店
サードのこだわりは?
三島
まず店づくりでヒントにしたのが、寿司店です。
カウンターのある寿司店は、寿司を調理する工程がカウンターから見えますよね。
サードでは寿司店と同じように、カウンターに座ってコーヒーでも飲みながらスタッフと会話をしつつ、自分の注文した製品をつくっているところをカウンター越しに眺められます。
これがサードのコンセプトです。
かつて寿司店で働いた経験が、ここでも活きてきましたね。
ちなみに屋号の「サード(Third)」は、私が第三子なのが理由です。
目標は自店の観光スポット化。しかし……
開業後、力を入れていることは?
三島
開業して数年経ち、新たな目標ができました。
それは「サードの観光地化」。
サードという店舗自体を、福山の観光スポットにするというものです。
遠方から、福山にあるサードという店に来てもらいたいという思いがありました。
東京など大都市に支店を出したり移転したりするのではなく、大都市のかたに、あえて福山のサードへ足を運んでもらえるようにしたかったんです。
しかし、愕然とする出来事がありました。
旅行雑誌に福山市自体が載っていなかったんです。
人口が約46万人、広島県第二の規模の都市なのに!
残念ながら、世間では福山市は観光地として認識されていないと気づきました。
全国的には広島市・尾道市と倉敷市・岡山市のあいだに、福山市があることは知られていなかったんです。
ここ数年でこそ鞆の浦や福山城が注目されていますが、それでもまだまだだと思います。
ですから、サード観光地化の前に福山市の観光地化をしなきゃダメだと感じました。
福山の伝統工芸「備後絣」の藍染め技術を取り入れた「福山レザー」を開発
サードの特徴的な製品である「福山レザー」を開発した経緯は?
三島
福山を観光地として世間に広めていくため、ものづくりの面でどのようなことができるのか、いろいろと考えました。
そこで思いついたのが、特産品となるものをつくることです。
地元ならではのものをつくるため、福山の伝統工芸に着目しました。
福山の代表的な伝統工芸として、琴、下駄(ゲタ)、畳表(備後表)、備後絣(びんごがすり)などがあります。
このなかで一番おもしろそうで、革製品との相乗効果がありそうだと注目したのが、備後絣です。
備後絣の藍染め技術を革に取り入れ、革を藍染めしようと思いました。
こうして開発したのが、天然藍で革を染めた製品、名付けて「福山レザー」です。
しかも、自社で手染めしています。
自社染めの藍染めレザーは、当社だけではないでしょうか。
福山レザーを使用し、どんな特産品をつくった?
三島
福山市花のバラにちなみ、福山レザーのバラのキーホルダー「藍染薔薇キーホルダー」をつくりました。
福山レザーは藍染めなので、青いバラですよね。
青いバラの花言葉は「不可能」。
青い色のバラは、つくれなかったから。
でも技術が進化し、青いバラがつくられたのです。
それにちなんで、青いバラの花言葉が「奇跡」に変わりました。
不可能を可能にしたからです。
青いバラがつくられたように、福山市を観光地化するという「不可能」を可能にする「奇跡」をおこすという思いを、福山レザーの藍染薔薇キーホルダーに込めています。
おかげさまで藍染薔薇キーホルダーは発売後、大変好評でして。
テレビや新聞、雑紙などさまざまなメディア様から、50回以上の取材を受けたほどです。
キーホルダーのほかにも、財布、名刺入れ、バッグなど、さまざまな福山レザーの製品を製造しています。
福山レザーの製品を広め、福山市について、そしてサードについて少しずつ知ってもらえるようにしたいですね。
目標は小学生の将来なりたい職業に「革職人」が入るようにすること
今後やってみたいことや、展望があれば教えてほしい。
三島
私は、私たちのつくる革製品をカッコいいといってもらいたいし、それをつくるサードやスタッフもカッコいいと思ってもらいたいと思っています。
小学生の将来なりたい職業に「革職人」が入るくらい、革職人の仕事をカッコよく思ってもらいたいんです。
あるとき、他店で買った革のカバンの持ち手がちぎれたので「直してほしい」という依頼がありました。
それを見たとき、辛い思いをしたんです。
カバンの持ち手は地味な存在ですが、もっとも負荷がかかる重要な箇所。
にもかかわらず、本体が革なのに、持ち手は非常に弱い合成皮革だったからです。
私も革職人なので、カバンの製造業者の気持ちもわかります。
おそらく販売価格が決まっており、利益が出るようにコストを調整した結果でしょう。
でももっとも負荷がかかる重要な場所に、弱い素材をもってくるのは職人としてやってはいけないと私は考えています。
一生懸命にものづくりをしている職人の気持ち、さらにはものづくり自体の価値を低く見ているような状況を改善していきたいんです。
それがないと、革職人の魅力を広めていけないと思います。
これは革だけの世界だけでなく、職人・ものづくりと呼ばれる世界共通ではないでしょうか。
これを変えるために必要なのが知名度。
多くのかたがたに製品や職人のこと、店のことなどを知ってもらうことだと思うんです。
そのために新商品開発をおこなったり、積極的に発信活動をしたり、クラウドファンディングをしたりしています。
いまも、2023年3月末までクラウドファンディングを実施中ですので、興味があれば見ていただけると幸いです!
「将来、ものづくりがやりたいな!」という子が増えるよう、そして福山市が観光地として知名度が向上するようがんばります!
革製品の魅力と、革を通じた福山の魅力が感じられるレザースタジオ サード
革に対する深い愛情と「福山を観光地として盛り上げたい」という地元への情熱をもった、代表の三島進さん。
三島さんが開発した「福山レザー」は、福山の魅力と革の魅力が融合したものです。
福山レザーは、空のような清々しさを感じる絞り染め、海のような深さを想像する濃い染め、どちらも美しい青い革だと思います。
さらに経年変化による味わい深さが加わると、表情がどう変化していくのか楽しみですね。
福山レザーは自分で愛用するのはもちろん、贈り物としても最適ではないでしょうか。
サードはオーダーメードやランドセルのリメイク、革製品のリメイク・修繕などもしています。
ぜひサードを訪れて、長く愛用していく革製品の楽しみや魅力を感じてみませんか。
レザースタジオ サードのデータ
名前 | レザースタジオ サード |
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住所 | 広島県福山市多治米町6丁目3-17 |
電話番号 | 084-971-7356 |
駐車場 | あり |
営業時間 | 【平日】 午前10時〜18時 【土・日曜日、祝日】 午前10時〜19時 |
定休日 | 水 年末年始 |
支払い方法 |
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