山野峡大田ワイナリー ~ サミットに認められたワイナリーは30本のぶどう栽培から始まった

山野峡ワイン

2023年5月、広島でG7サミットが開催されました。首脳たちの食事に提供された飲み物のリストが外務省から公開された途端、山野峡大田ワイナリー(以下、「大田ワイナリー」と記載)には、全国からワインの注文が舞い込み始めました。「富士の夢」と「北天の雫」の2本が、リストに入っていたのです。

サミットで提供されることを事前には知らされていなかった大田ワイナリーの大田祐介(おおた ゆうすけ)さんと大田恵子(おおた けいこ)さんは、「すごいねえ、うれしいねえ」と喜びあいました。

リストが公開された翌日には、さらに多くの注文が入ってきました。地域の運動会に参加していた恵子さんは、スマートフォンの通知を見て驚愕します。

「大変!いったんサイトでの販売を止めないと、地元で応援してくださる人にお売りするワインがなくなってしまう!」
運動会そっちのけで対応に追われるほどでした。

世界の首脳陣に提供できるワインだとのお墨付きを得た大田ワイナリーは、2010年に30本のぶどうの苗を植えたことから始まりました。

山野峡大田ワイナリーのデータ

大田ワイナリー外観
名前山野峡大田ワイナリー
住所福山市山野町山野862-5
電話番号084-974-2754
駐車場あり
営業時間日曜 午前8時~午後3時
定休日日曜以外は要問い合わせ
支払い方法
  • 現金
  • クレジットカード
  • Suicaなど交通系ICカード・iD・QUICPay・nanaco・WAON・PayPay・d払い・au PAY・楽天Edy
ホームページ山野峡大田ワイナリー

山野峡大田ワイナリーとは

山野峡大田ワイナリー。2025年夏に増築し、外壁も塗り替えた
山野峡大田ワイナリー。2025年夏に増築し、外壁も塗り替えた

福山市の最北端にある山野町は、人口約500人の過疎化が進む町です。一方、寒暖の差が大きいため、野菜もぶどうも良い味に育ちます。

2015年、「ふくやまワイン特区」の認定を受け、大田祐介さんは古民家の小さな蔵でワインを造り始めました。その後、2017年に現在のワイナリーの場所に移り、本格的に「山野峡大田ワイナリー」がスタートします。

山野峡ワインのエチケット(ラベル)は、山野に住むサルの顔と、ぶどう畑の隣にある郵便局をイメージした切手をデザインしたものです。裏面には、ワイナリーからの手紙も添えられています。

ワインのエチケットのサルの顔の色は、ぶどうの品種によって変えている(2024年11月撮影)
ワインのエチケットのサルの顔の色は、ぶどうの品種によって変えている(2024年11月撮影)

9種類のぶどうを栽培

大田ワイナリーでは現在9種類、約3,000本のぶどうを栽培しています。ワインの味の8割はぶどうで、残りの2割が醸造で決まるといわれています。「ワイン造りのほとんどは農業です」とワイン醸造責任者である峯松浩道(みねまつ ひろみち)さんは語りました。

大田ワイナリーが育てている9種類のぶどう。赤はキャンベルアーリー、富士の夢、マルスラン。白はシャルドネ、ピノグリ、北天の雫、ナイアガラ、ソービニヨンブラン、セミヨン。
大田ワイナリーが育てている9種類のぶどう。赤はキャンベルアーリー、富士の夢、マルスラン。白はシャルドネ、ピノグリ、北天の雫、ナイアガラ、ソービニヨンブラン、セミヨン。

ぶどう栽培には、1年を通してていねいな作業が必要です。冬の間には剪定(せんてい)や施肥、春には、余分な芽を取り除く「芽かき」や、枝の誘引。花が咲くと花の形を整える「花穂整形(かすいせいけい)」や、余分な実を取り除く「摘果」をおこないます。実が色づき始めると袋掛けや、防鳥ネットの設置が欠かせません。

峯松さんによると、ワインができるまでには、約3,000回も判断することがあるそうです。一つひとつの作業がワインの味に影響します。

甘いぶどうにするために実の一部を取り除く(2024年7月撮影)
甘いぶどうにするために実の一部を取り除く(2024年7月撮影)

糖度と酸度のバランスが最適になったタイミングでぶどうを収穫する8月から9月が、ワイナリーのもっとも忙しい季節です。ぶどう畑がワイナリーの徒歩圏内にあり、収穫したぶどうをすぐにタンクに入れて醸造を始められるのが、大田ワイナリーの強みのひとつ。ぶどうに含まれるブドウ糖は、酵母の働きでアルコールに変わります。

収穫作業中の峯松さん(2024年9月撮影)
収穫作業中の峯松さん(2024年9月撮影)

ワインの醸造家にできるのは、基本に忠実にワインを造ること、ただそれだけだと峯松さんは語ります。醸造が始まったら、醸造家にできることはほんの少ししかありません。ワインを造っている時間よりも、掃除をしている時間のほうが長いそうです。

「わいん農家」さんの協力

大田ワイナリーでは袋掛けや収穫などの繁忙期に、一般の人のお手伝いを募っています。手伝ってくれる人たちのことは「一緒にワインを造る仲間」として「わいん農家」さんと呼びます。

8月末のある日の収穫には、40人近くのわいん農家さんが集まりました。

収穫直前のキャンベルアーリー
収穫直前のキャンベルアーリー
わいん農家さんが手分けして収穫する
わいん農家さんが手分けして収穫する
一房ずつ手で摘み取り、未熟な粒や傷んだ粒を取り除いて整える。高品質のワインができる秘密のひとつ
一房ずつ手で摘み取り、未熟な粒や傷んだ粒を取り除いて整える。高品質のワインができる秘密のひとつ
収穫作業を大人も子どもも楽しんでいる
収穫作業を大人も子どもも楽しんでいる

2025年のぶどうは大豊作!わいん農家さんの活躍で、スムーズに収穫作業が進みます。

わいん農家さんに話を聞きました。
「自然の中で気持ちよく汗を流せて最高です」
「今日で2回目です。とにかく楽しくて」
「ずっと来てみたかったんです!ようやく来られました」

収穫後のぶどうは、すぐにワイナリーへ。
赤ワインは、ぶどうの果汁も皮もすべて使って造ります。取り除くのは、柄の部分だけです。

収穫したぶどうの房から柄の部分を取り除き、実を潰す。ぶどうに付いた天然の酵母のほかに、培養酵母も添加する(2024年9月撮影。ぶどうは富士の夢)
収穫したぶどうの房から柄の部分を取り除き、実を潰す。ぶどうに付いた天然の酵母のほかに、培養酵母も添加する(2024年9月撮影。ぶどうは富士の夢)
ワインになる前のぶどうジュースを味見できるのは、わいん農家さんの特権(2024年9月撮影)
ワインになる前のぶどうジュースを味見できるのは、わいん農家さんの特権(2024年9月撮影)

山野町を元気にしたい

大田ワイナリーが目指すのは、ワインで山野町を元気にすること。

毎週日曜日には、ワイナリー前で朝市を開催しています。山野の人たちが作った新鮮な野菜や加工品などを目当てに、多くの人が訪れます。

日曜朝市
日曜朝市
寒暖差の大きい山野で育つ野菜は味が濃い(2024年7月撮影)
寒暖差の大きい山野で育つ野菜は味が濃い(2024年7月撮影)
旬の野菜が並ぶ(2024年7月撮影)
旬の野菜が並ぶ(2024年7月撮影)
冷蔵コーナーのこんにゃくや加工品も人気(2024年7月撮影)
冷蔵コーナーのこんにゃくや加工品も人気(2024年7月撮影)

日曜日には、ワイナリー特製のカレーも登場!山野の女性たちが作るカレーは、何度食べてもホッと癒やされる味です。

ワイナリー特製カレーには、ワインでフランベした肉が入っている(2024年7月撮影)
ワイナリー特製カレーには、ワインでフランベした肉が入っている(2024年7月撮影)
以前はピンクに彩られていたカレーショップ。女性たちのエプロンと三角巾は、同じ山野町にある藍屋テロワールで染めた。後列左が藍屋テロワールの藤井健太さん(画像提供:山野峡大田ワイナリー。2022年6月撮影)
以前はピンクに彩られていたカレーショップ。女性たちのエプロンと三角巾は、同じ山野町にある藍屋テロワールで染めた。後列左が藍屋テロワールの藤井健太さん(画像提供:山野峡大田ワイナリー。2022年6月撮影)
2025年、ワイナリーの増築に併せてカレーショップも塗り直した
2025年、ワイナリーの増築に併せてカレーショップも塗り直した

同じ山野町にある藍屋テロワールと協力しながら、山野の活性化に向けた取り組みも進めています。2025年の夏は2社協同で、インターンシップの学生を募集しました。全国から来た7名の大学生や大学院生が、数週間山野町に滞在し、山野の未来を一緒に見つめます。

大田ワイナリーの代表取締役である大田祐介さん、醸造責任者の峯松浩道さん、調整役の大田恵子さんの3人に、これまでのお話を聞きました。

山野峡大田ワイナリーのデータ

大田ワイナリー外観
名前山野峡大田ワイナリー
住所福山市山野町山野862-5
電話番号084-974-2754
駐車場あり
営業時間日曜 午前8時~午後3時
定休日日曜以外は要問い合わせ
支払い方法
  • 現金
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  • Suicaなど交通系ICカード・iD・QUICPay・nanaco・WAON・PayPay・d払い・au PAY・楽天Edy
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