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「Cafe Rondine(ロンディネ)」の奥谷茂夫さん・舞さんにインタビュー
コロナ禍のオープン……人のつながりに支えられて今がある
ロンディネさんは2020年にオープンして、最初は店頭でお弁当の販売をされていたんですよね。
舞(敬称略)
2020年4月末のオープンを目指して進めてきたのですが、緊急事態宣言に入ってしまって。
地域のかたがたに認知してもらいたくって、4月25日にプレオープンしてお弁当を販売し始めました。
カフェレストランとしてのグランドオープンは2020年6月5日となります。
茂夫(敬称略)
振り返ってみれば、このプレオープン期間はお店の方向性を考えられる貴重な時間になりました。
新しい環境で実際にやってみないとわからないことだらけだったので、すぐにオープンはできなかったものの結果的には良かったと思います。
「尾道やすらぎの宿 しーそー」内でカフェレストランを始めることになった経緯を教えてください。
茂夫
しーそーの宿主である森田さんと出会ったきっかけは人のつながりですね。
舞
尾道に移住してきてレストランができそうな物件がないか探していた時期に、本当にたくさんの人がつなげてくださって。
巡り巡って「しーそーさんが宿の夕食を作ってくれる人を探している。もしかしたら、昼間に食堂を貸してもらえるかも……」と聞いて、すぐに宿主の森田さんに会いに行きました。
そして1週間後には「まずやってみましょうか」という形で話が決まり。
2月末に出会って4月末にはお弁当販売がスタートしたので、すごいスピード感でした。
茂夫
初めてここから見た景色は忘れられません。本当にすばらしくて、直感的に「ここだ」と思いました。
オープン時にお弁当販売を快諾してくださったのも森田さんで。「だったらお弁当を広告代わりにしてみようかな」などアイデアが広がったりしたので、いろいろとやらせていただける環境がやりがいにつながっています。
準備や盛り付け、仕込みから配達に至るまでしーそーの皆さんや近所のお店のかたがたに助けてもらいながら今があります。感謝でいっぱいです。
2021年からはディナー営業も始められましたよね。予約は2022年の夏以降まで埋まっていると聞きました。
舞
ここは夜景もすばらしい場所なので、ぜひカフェのお客様にも見ていただきたくて月に1回、第3月曜日に1組のみという形でディナーを始めて、ありがたいことに多くの反響をいただきました。
1組だけという特別感もありますし、ランチタイムだと忙しくてあまりお話ができないこともあるので、お客様とコミュニケーションがとれる素敵な時間になっています。
ディナー営業は第3月曜日、1組(最大6名)のみ。
茂夫
ディナーは今後やってみたいと思っていたことのひとつでした。
食堂を貸していただいているしーそーさんは月曜のみ夕食の提供が休みで、宿主の森田さんにも「やってみたら?」と言っていただけたことで、実現しました。
ランチのように決まったメニューではないので、作りながらああでもないこうでもないと考える時間はものすごく楽しいです。
これまでの経験や考え方をまとめるような気持ちで臨んでいます。
舞
客観的に見ても、ディナーを作っているときのシェフはものすごく良い顔をしていると思います。
人がたくさん集まる場所になれたら。店名にこめられた想い
お店のコンセプトや店名の由来を教えてください。
茂夫
コンセプトとしては「料理」「景色」「雰囲気」、この3つをお客様にめいっぱい楽しんでほしいという想いがあります。
この丘からの景色は唯一無二だと思っているので、ここでしか作り出せない雰囲気、僕らだから提供できる料理、それらがすべてそろって「ロンディネ」なんだと思っています。
舞
店名は、まだ「生パスタをメインにしよう」と定まっていない早い段階から決めていました。
「Rondine」はイタリア語で「つばめ」という意味で、つばめってわざわざ人の多いところに巣を作るらしいんです。
人のたくさん集まる場所になるっていうのも素敵だと思いましたし幸せを運ぶモチーフも良いなって。
尾道や向島は、春になるとつばめがたくさん飛んでいるので、この土地にピッタリな店名だと思いました。
当初から生パスタをメインとしたレストランという構想はあったのでしょうか。
茂夫
いえ、最初から生パスタを考えていたわけではありませんでしたね。
今のようなメニューをメインに据えようと思ったのは、このロケーションを見たからです。
ここに来てお客様にどう過ごしていただきたいかを考えたとき、生パスタでやっていこうと思いました。
ロンディネさんの生パスタはもちもちで、ソースととてもよく合いますよね。
舞
生パスタ麺は広島市にある三田製麺所さんでお願いしていて、ロンディネオリジナルレシピで作っていただいています。
茂夫
小麦粉の分量から希望の厚みに至るまで、ディスカッションを重ねながら細かく調整してもらえて、より手練りに近い加減で製麺していただけて。
本当にありがたいパートナーです。
茂夫さんと舞さんが日々こだわっていることを教えてください。
茂夫
食材に関しては、まずは地元のものを探して、見つからなければほかの地域でおいしいものを探します。
「旬でおいしいもの」を軸にしているので、「尾道産」であることにあまり縛られすぎずに、自由にやわらかく考えるようにしています。
舞
私は、お客様が来店されたときに行なっているメニューの説明などに関して試行錯誤しています。
料理の名前だけを見てもきっとイメージしづらいものもあると思うので、テーブルへ説明しにいったりメニューに詳しく記載したり。
メニューには「昨年の人気ナンバー1」「昨年のメニューをブラッシュアップ」といった情報や合うワインなどについても記しているので、選ぶ際の参考になればいいなと思っています。
季節のパフェは舞さんたっての希望
ロンディネさんはパフェにもファンがたくさんいますよね。
舞
パフェとパスタで日を分けて食べに来てくださるお客様もいらっしゃいます。
でもここだけの話、シェフからは最初「パフェはやりたくない」って拒まれていました(笑)
私がパフェ好きだったのもあり、また「うちのお客様は絶対にパフェ好きだから!」って熱心にプレゼンテーションし続けた甲斐あって、満を持してメニューになったときはうれしかったですね。お客様も喜んでくださいました。
茂夫
パフェは実際、手仕事が多いので大変なんです。デザートならバニラコーヒーゼリーがあったので、最初は「パフェなんて注文してくれる人いる!?」ってものすごく半信半疑でした。
いや……でもやっぱり、特に女子ってパフェが好きなんですね……。
舞ちゃんのパフェ愛も相当すごくて、パフェのときだけInstagram用写真の撮影時間が長い気がします(笑)
尾道へ移住するまで
茂夫さんと舞さんのこれまでについてですが、尾道へ移住前のことを教えてください。
茂夫
僕は広島の生まれで、仕事はずっと飲食店ですね。
広島市にあるイタリアンレストランでのアルバイトがスタートで、だいぶハードな職場だったので飲食店の洗礼を受けてきましたね……。
その後、新潟や軽井沢、北海道といったリゾート先を中心に地域のさまざまな料理を学ぶうちに、縁あって東京のレストランに呼んでもらうことになりました。
茂夫
全国各地を転々としているときは、調理方法や工夫などさまざまなことを覚えることができました。そのなかで料理への考え方も醸成されていったと思います。
そして東京では「いつか自分の店をもちたい」という大きな夢をもった同僚が多かったので刺激的で、だいぶ感化されました。
東京のレストランで働いているときに舞ちゃんが派遣バイトで入ってきて、それが出会いとなりました。
舞
私は東京生まれです。飲食店はアルバイトで経験した程度で、移住前にはインテリアショップの店員でした。
インテリアが大好きで最終的には店長も務めました。日付が変わるまで働いてしんどい瞬間もありましたが、充実していて仕事に没頭していましたね。
しかも店長を経験したことで、お店の運営をはじめ、どうしたらよりお客様に喜んでもらえるかどうか、といったことを考えられるようになったと思っています。
結婚を機に7年働いたインテリアショップを退職した後、先輩からの紹介でアクセサリー作りの仕事をすることに。
もともとハンドメイドが好きだったので楽しかったですし、使う石のことについても知識が深まったことでアクセサリー作りがより楽しくなりました。
移住することになったきっかけはありますか?
舞
東京や神奈川で暮らしていたときは「ずっと首都圏で生活していくんだろうな」と思って疑いませんでした。
でも、東京での慌ただしい生活に少ーしだけ疲れていたところがありまして。
特に茂夫さんは3時間睡眠の日々。一睡もできないまま出勤していくこともあり、「このままじゃ長生きできないな。それは嫌だな」って漠然と感じていたんです。
移住についてはそれから徐々に話し合うようになりましたね。
茂夫
いろいろな候補地があって、実は北海道も良いななんて思っていました。
食べ物はおいしいしアクティビティはたくさんあるし、楽しそう!って。
舞
でもこれからずっと住めるのかな?と考えたときにイメージしづらくて。
実は茂夫さんのおばあさんが尾道の御調(みつぎ)に住んでいたので、結婚前から御調や尾道市街地にはよく遊びに行っていました。
尾道にはまだ今のようにお店がたくさんあるわけではなかったんですが、漠然と「尾道いいな」「住んでみたいな」と感じていたんです。
首都圏以外の選択肢を考えたときにその思いがよぎり、改めて尾道を訪れて決めました。
尾道に移住されてみていかがですか?
舞
もう少しゆっくりと移住ライフが楽しめると思ったんですが、尾道って本当によく働くかたばかりでビックリしました!
茂夫
スローリーな生活は少なくとも送れていませんね(笑)
舞
でも、東京にいたころより精神的にはゆったり過ごせていると思います。海や景色、人のあたたかさに癒される日々です。
尾道って食もとてもおいしくて、接客の姿勢や雰囲気についても勉強にもなります。
SNSでのていねいな情報発信も人気の秘訣
ロンディネさんといえば、Instagramのこまめな更新が印象的です。
舞
プレオープンの頃からInstagramを毎日更新するようになり、徐々に認知が広がったと感じています。
書きたいことが多くていつも長文になっちゃうのが悩みです。
茂夫
Instagramの世界観はすべて舞ちゃんにお願いしているんですが、疲れているのに毎日毎日ていねいに発信してくれていて。
投稿前の文案を送ってくれるんですが、料理についての表現なんかで僕からダメ出ししちゃうことがあって、半ば泣きながらやっているときもあるかもしれません。
でも彼女が一生懸命やってくれているおかげで「Instagram見ました!」と言って来てくれるお客様が多く。舞ちゃんには本当に感謝しかないですね。
これからどんなお店にしていきたいですか?
茂夫
来てくれたお客様が、良い意味でぼーっとできるような落ち着いた店でありたいです。
舞
そうですね。食べたらすぐに帰らなきゃいけないような場所にだけはしたくなくて。せっかく来てくださったその時間をゆっくり過ごしてもらえるよう心がけています。
ただこの先という将来的な方向性に関しては、今一番リアルな悩みだったりするんです。
本当に「最終的に」という話ではありますが、いつかは間借りではなく自分たちのお店が持てたらいいな、とは思っています。
茂夫
料理だけでなく、ロンディネらしい雑貨を販売するコーナーも楽しんでもらいたい。これは本当にいつかの話ですが、そんな自分たちのお店がいつかできたらいいですね。
僕たちのことを知ってもらえたのは、しーそーさんの食堂を間借りさせていただけたからこそ。さらに広いキッチンがあったからこそできた料理もたくさんあります。
お世話になったかたがたへの恩を返しつつ、自分たちの方向性も少しずつですが模索していきたいなと思っています。
おわりに
シェフの茂夫さんは昨年(2021年)の夏からジムに通い始めたこともあり、いつかシックスパックを目指すトレーニング過程や食べ方を工夫する実体験を載せる「筋肉ブログ」を始めたいのだとか。
舞さんいわく、「日によってシェフがお客様にご挨拶できないこともあるので、親近感をもってもらいたいねというところから話は始まりましたが、本当に筋肉ブログが始まるかはまだわかりません(笑)」とのことなので未定情報ではありますが、それはそれで楽しみですよね。
「尾道は本当に人があたたかい」と何度も語ってくれた茂夫さんと舞さん。
取材をして納得。お二人のその人柄が人とのつながりを紡いでいっているんだと実感しました。
何度も訪れたくなるカフェレストラン、Cafe Rondine(ロンディネ)。
月替わりの生パスタや景色を楽しみに、ぜひ向島まで足を運んでみてください。
2022年1月9日現在は完全予約制になっているそうです。詳しくはSNSをチェックしてみてください。
Cafe Rondine(ロンディネ)のデータ
名前 | Cafe Rondine(ロンディネ) |
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住所 | 広島県尾道市向島町84-2 |
電話番号 | 080-4261-6457 |
駐車場 | あり 4台 |
営業時間 | ・午前11時30分〜午後3時30分 (最終は午後3時) ・完全予約制ディナーあり (第3月曜日のみ) |
定休日 | 月、木 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 可 事前予約制 |
座席 | 5席 |
タバコ | 禁煙(指定エリアのみ喫煙可能) |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | Cafe Rondine |