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保命酒Bar「HOREI」佐藤俊介さんにインタビュー
そもそものきっかけは大学の授業だった、と佐藤俊介さんは話してくれました。
知られざる名産品
なぜ、保命酒を飲めるBarを開こうと思ったのですか。
佐藤(敬称略)
大学の授業で、鞆の課題解決に取り組んだのがきっかけです。この授業では、数か月かけて町の課題を解決する方法を探ります。僕たちのグループが注目したのが「保命酒」でした。
保命酒の歴史を知り、実際に飲んでみて、保命酒には多くの可能性があると感じました。しかし、学生にアンケートをしてみたところ、保命酒を知っている人は半数弱、飲んだことがある人は1割もいませんでした。
その理由はなんだろうと考えてみたんです。
その理由は?
佐藤
そもそも保命酒を知る機会がないことが理由です。福山の名産にもかかわらず、駅前で保命酒が飲める場所はほぼありません。福山駅の近くで4種類の保命酒を買えるお店もありません。4種類の保命酒がそろうのは鞆だけです。
福山市民にとっても、僕のように福山市外からきた大学生にとっても、保命酒を知るための場がないから、魅力が伝わらないのだと思いました。
なるほど。言われてみれば、保命酒をお土産にすることはあっても、自宅やお店で飲む機会はなかったですね。
佐藤
ないなら作ろう。そう思って、保命酒Barを企画したんです。グループのメンバーで試飲会をして、いろいろ調べながら保命酒カクテルのレシピや、味のグラフを作りました。
保命酒の歴史
佐藤
保命酒の製造が始まったのは今からおよそ350年前。大阪の漢方医だった中村吉兵衛(きちべえ)が保命酒の生みの親です。
保命酒は江戸時代に非常に珍重され、中村家だけが製造を許されました。幕府への献上品として用いられ、ペリーのもてなしにも保命酒が使われたといわれています。
明治時代に入ってからは、中村家以外にも保命酒の製造が許されるようになり、多くの業者が保命酒を造るようになりました。
保命酒製造の全盛期は昭和初期です。この頃には甘いお酒は少なかったので、多くの人が保命酒を楽しんでいました。
しかし、今は甘いお酒もたくさんあります。人々の健康状態も良くなってきて薬酒の需要も減りました。今、鞆で保命酒を製造するのは4社だけになったんです。
長い歴史があるものだから残していきたい、と思いますか。
佐藤
いいえ。伝統産業だから価値があるとか、伝統だから残すべきだ、というのではありません。
保命酒は、魅力的な存在だと思います。けれども、今、その魅力が伝わっていないんです。
だから、知ってもらいたい。飲んでもらいたい。現代に合わせたアプローチが必要です。
だから、保命酒Barなんですね。
佐藤
そうです。まずは、駅前で保命酒を飲める場を作り、現代に合った飲み方を提案したいんです。保命酒の歴史を伝え、保命酒を使った料理を提供して、今まで保命酒を知らなかった人に、保命酒を知ってもらいたいと思います。
4社の保命酒の違いを、もう少し教えてもらえますか。
佐藤
はい。鞆に3店舗を構えるのが入江豊三郎本店さんで、甘い味が特徴です。福山ブランドに選ばれた「甘酒」や「鞆の浦サイダー」など、保命酒を使った商品も多くあります。
岡本亀太郎本店さんの店内にある、龍に守られた保命酒の看板は中村家から受け継いだもの。「梅太郎」や「杏子姫」など、新しい味の保命酒も作られています。
鞆酒造さんの創業は明治12年。4社のうちもっとも古くから保命酒を作っています。太田家住宅の一部を改装した店舗や、自作の徳利(とっくり)も風情があります。
八田保命酒舗さんの保命酒は、香りにこだわりがありますね。柑橘系を含む16種類のハーブを使っているのが特徴で、海外でも人気です。
ありがとうございます。4社それぞれに特徴があるんですね!
佐藤
そうなんです。とても興味深いですよね。
HOREIが目指すもの
佐藤
僕が提案したいのは、保命酒全体の盛り上げです。鞆まで行かなくても、福山駅前に4つの保命酒の味を比べて楽しめる場所があれば、保命酒に興味を持つ人が増えるのではないでしょうか。
たしかに、飲み比べることで保命酒の魅力をさらに感じられますね。ところで、店名が「HOMEI」ではなく「HOREI」なのが気になっているのですが、どういう意味ですか。
佐藤
「ほれみいー」とか「ほれいいやろー」という言葉の響きが良いなと思って。かけ声みたいじゃないですか?そこから「ホレーイ」にしました。
ロゴも自分で作りました。文字の雰囲気は鞆の浦の波をイメージしています。最後の「I」を常夜灯の形にしたのは、けっこう好評です!
この常夜灯は目を引きますね。では、これからどういうことをしていきたいですか。
佐藤
福山にはまだ余白がある、と感じています。「福山には何もない」なんて言葉もよく聞きますが、何もないということは何でもできるということですよね。
福山は規模が大きすぎず小さすぎず、いろいろなことにチャレンジしやすい町、とてもおもしろい町だと思います。まだ学生なので、今のうちにいろいろなことを経験したい、失敗も含めていろいろなことをやってみたいですね。
保命酒の魅力を再発見しよう
「何もないということは何でもできる」という言葉がとても印象に残りました。
若い力が福山を動かし始めていると感じます。
HOREIに立ち寄って、気軽に保命酒を飲んでみませんか。そして、隣りに座った誰かと、保命酒や福山の魅力を語り合ってみませんか。
きっと、楽しい夜になることでしょう。
保命酒Bar HOREIのデータ
名前 | 保命酒Bar HOREI |
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住所 | 福山市伏見町3-16 TKK伏見ビル(昼から酒場 泡幸の場所) |
電話番号 | |
駐車場 | なし |
営業時間 | 金曜日 午後7時~午前0時 |
定休日 | 月、火、水、木、土、日 |
支払い方法 |
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予約の可否 | |
座席 | カウンター5席:テーブル数3 |
タバコ | 喫煙可能 |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | 保命酒Bar HOREI |