笠岡諸島最大の島、北木島。
かつて採石で栄え、明治神宮の橋や靖国神社の大鳥居にも北木島の石が使われました。
展望台から見る迫力のある石切り場は、北木島でしか見られない絶景です。
石切跡のある山肌が荒々しくも、島自体はのどかな雰囲気。独特の景色を眺めながら、のんびりと島時間を味わえます。
2020年12月には、大きな壁画も登場!
北木島の概要、代表的な見どころを紹介します。
記載されている内容は、2021年2月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
笠岡諸島とは
笠岡諸島は、岡山県の南西端の笠岡市沖にある、大小31の島々です。そのうち有人島は、以下の7島。
大飛島・小飛島をあわせて飛島(ひしま)と呼ばれている
島々への橋はなく、笠岡市の港から船で行き来します。
のどかで落ち着いた雰囲気の島々です。
香川県の丸亀市・小豆島町・土庄町の島々とともに、「知ってる!? 悠久の時が流れる石の島 ~海を越え、日本の礎を築いた せとうち備讃諸島~」として日本遺産にも認定されています。
北木島とは
北木島(きたぎしま)は、笠岡諸島最大の島です。
お笑い芸人「千鳥」の大悟さんの出身地としても知られています。
人口(令和2年10月1日時点) | 約700人 |
---|---|
面積 | 7.48平方キロメートル |
周囲 | 19.1キロメートル |
特色 | 採石・石材加工 流し雛 |
島内の交通手段 | 徒歩/レンタサイクル/自家用車 |
笠岡諸島のなかでは、もっとも人口の多い島です。
品質の良い石が採れるため、「石の島」として知られています。
高低差のある採石跡が迫力のある景観を作り出しているのです。
北木島の石については、のちほど詳しく紹介しますね。
北木島へのアクセス
北木島へのアクセスは、以下の4つのルートがあります。
ルート | 出発港 | 到着港 |
---|---|---|
フェリー(金風呂丸/大福丸) | 伏越港 | 豊浦港・金風呂港 |
高速船 | 住吉港 | 北木島港(大浦港) |
普通船 | 住吉港・神島外浦港 | 楠港・北木島港(大浦港) |
海上タクシー | 海上タクシーによる | 海上タクシーによる |
▼詳しくは、以下の記事を見てください。
北木島の石
北木島は、花崗岩(かこうがん)の産出と加工で栄えました。
北木島で採れる石は日本有数の銘石と評されており、江戸時代から現代に至るまで、日本の歴史的建築・建造物に多く使われています。
北木島の石が使われているのは、たとえば以下の場所です。
- 徳川幕府が再築した大坂城の石垣
- 旧日本銀行本店
- 明治神宮
- 靖国神社
昭和40年代には石材加工場が約100か所もあり、かつては日本最大の石材産地でした。
一時は海外にも名を知られていたそうです。
2021年現在、島内の採石場は2か所に減少していますが、良質な花崗岩の「北木石(きたぎいし)」を産出しています。
採石場である「石切の渓谷(たに)」では、運が良ければ石工職人たちが働くようすを見られますよ。
島のいたるところに石があり、生活に根付いているようすが感じられます。
北木島の流し雛
流し雛(ながしびな)は、雛祭りのもとになったといわれる行事です。
「雛流し」ともいわれ、古くは『源氏物語』にも登場します。
家族の健康や安全を願い、木の葉などを人の形にした「形代(かたしろ)」に災厄を託して、川や海に流すのです。
北木島の流し雛は、江戸中期から続くとされ、笠岡市重要無形民俗文化財に登録されました。
旧暦3月3日の満潮時、帆を立てた小舟(うつろ舟)に紙雛を乗せて、海に流します。
行くときの注意点
北木島には港が4つあり、船によって到着港が異なります。
島内の港と港を結ぶ公共交通機関はないので、行き先と到着する港を事前に確認しておきましょう。
観光の起点として便利なのが、複合施設「K’s LABO」です。
カフェで食事ができ、レンタサイクル・マリンレジャー用品の貸し出しも行なっています。
営業日は火・木・土・日・祝日に限られるので、利用したい場合は営業日に合わせましょう。
石切の渓谷展望台の見学は、毎日正午~午後1時の1時間のみ。
見学を希望する場合は、この時間に合わせて全体のスケジュールを組んでください。
レンタサイクルは、「K’s LABO」または金風呂丸フェリー内で借りることができます。
台数に限りがあるので、予約がおすすめです。
代表的なスポット・北木島でできること
北木島の代表的なスポットを紹介します。
K’s LABO
豊浦港そばの「K’s LABO」は、観光に便利な複合施設です。
「K’s LABO」には、以下のものがあります。
- 石の歴史や文化を紹介するストーンミュージアム
- おみやげが買えるミュージアムショップ
- 海を眺められるカフェ
- レンタサイクル
- 各種マリンレジャーレンタル
休んで、食べて、買って、遊んで。観光の起点になる場所といえるでしょう。
MAYA MAXXさんの倉庫壁画
2021年2月11日から14日、笠岡諸島を舞台とした芸術音楽祭、石の島かさおかプロジェクト 第0回「シマヲカナデル」の開催が予定されていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、中継イベントに切り替えられることに。
本イベントは、2月13日午後1時からOHK岡山放送『なんしょん?』の特別版で、OHKスタジオと北木島会場を結ぶ中継イベントとして開催されました。
「シマヲカナデル」のプレイベントとして、画家・イラストレーター・絵本作家のMAYA MAXXさんが、倉庫壁画を制作。
MAYA MAXXさんは、絵画・絵本・デザインなど、ジャンルを超えた多彩な活動で知られます。
毎年開催している個展の他、小説家 吉本ばななさんの書籍装丁画や、映画『ハチミツとクローバー』絵画指導などでも活躍しているかたです。
船からも見える、大きな青い鳥。
赤い円は、北木島の特産品である石を表現しています。
キラキラした優しい目をした大きな鳥が訪問者を出迎えてくれて、明るい気持ちになれるスポットです。
石切の渓谷(たに)
石切の渓谷(たに)は、日本屈指の歴史を誇る採石場です。
高低差の大きい採石場で、最大高低差は約180メートルだそう。
展望台では、高さ約60メートルの場所から渓谷を眺められます。
石切の渓谷展望台の見学は、毎日正午~午後1時の1時間のみ。
迫力のある景色を楽しめます。
▼入場料は、以下のとおりです。
大人(中学生以上) | 1,000円 |
---|---|
小学生 | 500円 |
小学生未満 | 無料 |
北木島でできること
季節によって、以下のようなことが楽しめます。
- サイクリング
- 海水浴
- 山登り
- シーカヤック
- SUP(サップ)
- 釣り
- 牡蠣工場見学
のんびり歩くだけでも心地よい島です。
実際に北木島に行って歩いてみました
2020年の冬の日、北木島を歩きました。
写真多めでレポートします。
筆者は大福丸フェリーで向かいました。片道45分の船旅です。
フェリーの中には大漁旗。
近づいてきた北木島は、採石跡がしっかりと見え、石の島であることが感じられました。
荒々しくも、美しい山肌です。
港が近づくにつれ、MAYA MAXXさんの絵画が目に飛び込んできました。
遠くからランドマークを見つけたときって、わくわくしませんか?
船から厳島神社の鳥居が見えたときや、飛行機からエッフェル塔が見えたときのような、「来たんだな」という喜びを感じました。
到着後は、まず海を見ながらK’s LABOで一息。
石でできた恐竜のオブジェが出迎えてくれます。
コーヒーを飲んで、お土産をチェックしました。
そして、島を散策!
早速出会った青い壁の建物がレトロです。
ここは豊浦公会堂。夏目雅子さん主演 映画『瀬戸内少年野球団』のロケにも使われた歴史ある建物です。
旧豊浦幼稚園跡には、かわいい絵がいくつも残っていました。
現在は、NPO法人かさおか島づくり海社の事務局として利用されています。
彫刻家・牛尾啓三(うしお けいぞう)さんの作品『メビウスの輪』。
どうやって作っているのだろう?と不思議に感じる作品です。
島にくらす猫とも出会いました。
透き通る海と、石。
瀬戸内海の景色を見ながら、のんびり歩きます。
海風が心地よくて、視界が広く開放的。
ところどころに石のオブジェがあったり、石が積んであったりしました。
「北木のベニス」と呼ばれる船着き場では、石塀とボートがよい雰囲気。
イタリアのベニスもこんな雰囲気なのでしょうか。
車道から少し内側に入った位置にあるので、見逃さないように気をつけてくださいね。
石切の渓谷展望台へ。
筆者は営業時間外に訪れたので、展望台には登れませんでした。
しかし、下からショベルカー越しに一部を見るだけでも迫力!
高いところから見る景色はきっと美しいことでしょう。
訪問者の感想を見ると、「絶景に感動した」「足場が揺れるので怖い」という意見がありました。
「次回はぜったい営業時間(正午~午後1時)に訪れよう!」と決心。
島の各所に柑橘や木の実がなっていて、のどかな自然の恵みを感じられます。
どんぐりを拾ったり、植物の色にみとれたり。
道を教えてくれた島のかたは、自宅の木から小さな実をちぎってパクっと食べていて、自然が近くにあるのだなあと感じました。
のんびりと歩きながら、K’s LABOに戻ります。
島のかたにおすすめしていただいた「鯛骨ラーメン」をいただきました。
歩き疲れた身体にラーメンが沁みます。
帰りの船から見る夕空も、乙なものでした。
広い空、近くに感じる海、刻々と変わる風景。
移動時間も島旅の醍醐味で、好きな時間です。
北木島には、笠岡諸島全体の自立的発展、島民の生活安定と福祉向上を目的にサービスを提供している、NPO法人があります。
NPO法人かさおか島づくり海社 理事長の鳴本浩二(なるもと こうじ)さんに、話を聞きました。